高齢化の進む現代の相続に|残された配偶者を守る相続法改正のポイント

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公開日:2019年9月4日
更新日:2019年11月13日
高齢化の進む現代の相続に|残された配偶者を守る相続法改正のポイント1

約40年ぶりに大きく改正された相続法には、配偶者の保護を目的とした権利がいくつか新設されました。久保原弁護士による連載の第18回は特別編として、相続法の配偶者に関する改正ポイントについて解説していただきました。

高齢化の進む現代の相続に|残された配偶者を守る相続法改正のポイント2

九帆堂法律事務所 弁護士 久保原 和也

2007年、京都大学大学院法学研究科修了。同年、司法試験合格。2008 年、九帆堂法律事務所設立。最高裁で勝訴した更新料裁判の大家さん側弁護団の首都圏担当。更新料裁判では、首都圏で唯一の弁護団所属弁護士としてさまざまな情報を発信。

時代とともに変わる相続|今回の改正の主な目的とは

相続法は社会情勢の変化に対応するため、約40年ぶりに大改正されました。年金以外に収入がない高齢者夫婦が増える中で、夫婦の一方が亡くなったために、残された配偶者が従前の暮らしを維持できなくなるといった事態は避けなければなりません。今回の改正は、まさにそうした相続をめぐる重要課題に対応したもので、残された配偶者の保護を図っています。

【ポイント1】配偶者長期居住権の新設(2020年4月1日施行)

まず、残された配偶者の住まいの確保が重要な課題です。相続財産のなかで建物所有権が大きな割合を占める場合、配偶者の法定相続分は2分の1ですから、建物所有権を相続すると他の預貯金債権等の財産を相続できず、逆に法定相続分を超える場合には代償金を支払うこともありました。

改正前は代償金等を負担しつつ自ら自宅を相続するか、自宅を子どもに相続させて好意で貸してもらう等の対応をしていました。

しかし、親子関係が良好な家族ばかりとも限らず、残された配偶者の居住問題は不安定でした。

この状況を打開する1つの方策が今回の改正で新設された「配偶者長期居住権」です。新たに「居住権」という概念を作り、それを相続することで、所有権を相続しなくても残された配偶者が居住し続けられるようにしようという制度です。具体的には、仮に子が所有権を相続したとしても、配偶者には別に終身の居住権を認めます。

所有権よりも価値が低い「居住権」の概念を導入することにより、法定相続分に余りを生じさせながら、居住し続けることができます。他の財産を相続しやすくし,生活の安定に資すると期待されています。図1で改正前後を比較していますので、参考にしてみてください。

長期配偶者居住権は、配偶者が相続開始時に被相続人の建物に居住していた場合に遺産分割協議・審判で配偶者に付与することができます。今回の改正により、残された配偶者が自宅に住み続けられるように分割する選択肢が加わりました。存続期間は原則終身ですが、期間を定めることもできます。居住権の価値の算定方法は専門家に相談すると良いでしょう。

図1 配偶者長期居住権の施行前後での相続分の違い

【事例】
相続人が妻及び子、遺産が自宅(2,000万円)及び預貯金(3,000万円)だった場合
妻と子の相続分=1:1(妻 2,500万円 子 2,500万円)

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