【特別対談】京都市居住支援協議会 会長 平松謙一氏『京都市が高齢者の入居を支援します』

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公開日:2020年4月8日
更新日:2020年4月27日
【特別対談】京都市居住支援協議会 会長 平松謙一氏『京都市が高齢者の入居を支援します』1

京都市居住支援協議会 会長 平松謙一氏(右)/オーナーズ・スタイル総括編集長 上田英貴(左)

高齢者の住み替え問題について、独自の制度を打ち出している京都市。空室に悩むオーナーもぜひ注目したいその内容とは。京都市居住支援協議会の平松謙一会長にお話をうかがった。

【特別対談】京都市居住支援協議会 会長 平松謙一氏『京都市が高齢者の入居を支援します』2

平松 謙一

1968年兵庫生まれ。1991年に京都市役所入庁後、交通局・文化市民局・行財政局などを経て、2019年4月より現職。

【特別対談】京都市居住支援協議会 会長 平松謙一氏『京都市が高齢者の入居を支援します』2

株式会社オーナーズ・スタイル総括編集長 上田 英貴

明治大学法学部卒業後(株)、リクルートに20年勤務(主にSUUMO)。2006年オーナーズ・スタイル社を設立。大家歴27年。

約5000戸の住宅が「すこやか賃貸住宅」に登録

上田 日本は高齢化が進む一方で、高齢者の賃貸住宅への入居は厳しいのが現実です。オーナーが受け入れに躊躇する場面も少なくありません。そんななか、京都市では高齢者とオーナーのために、独自の施策を行っているとうかがいました。どういった内容ですか?

平松 高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、不動産団体・福祉団体・京都市の三者が連携して行っている取り組みで、「京都市居住支援協議会」通称「すこやか住宅ネット」が行う「すこやか賃貸住宅登録制度」というものです。高齢者の入居を拒まない賃貸住宅を「すこやか賃貸住宅」として、そして高齢者の住まい探しをサポートしてくる仲介会社を「すこやか賃貸住宅協力店」として登録してもらい、入居を促進しています。

上田 現在の登録数はどのくらいですか?

平松 2012年にこの協議会を立ち上げ、「すこやか賃貸住宅」は約5000戸、「すこやか賃貸住宅協力店」は132件の登録があります。これらの情報は、インターネットで公開していて、みなさん自由に見ることができますし、お電話で入居のお問い合わせをいただくこともできます。

上田 国土交通省のセーフティネット法が改正されたのが2017年ですから、国に先駆けてということになりますね。

平松 京都市の予想では、2025年には、高齢者人口は43万人。高齢化率は30%を超え、市民の5人に1人が75歳以上の後期高齢者になるというデータ(※1)もでています。京都には昔から地域の人が共同体を組織し、助け合いながら文化を構築する〝町衆文化〟がありますし、今でも自治体や町内会の活動は活発です。「高齢者の方が困らないようにどうにかしなくては」という意識はあったのかもしれません。「すこやか賃貸住宅」は、「高齢者の入居を拒まない」ということであれば登録ができるため、多くの物件のご登録をいただいています。国のセーフティネット法に基づく制度への登録もこれから進めていきたいところです。

社会福祉法人の協力を得て定期的な見守りを実施

上田 京都市の制度では入居者とオーナー、双方の不安を解消する取り組みもあるそうですね。

平松 はい。高齢者の入居で、オーナー様が心配されるのは健康面だと思います。そこで、入居者への見守りをオーナー様のご負担無く、行っています。原則65歳以上の一人暮らしの方の転居にあわせて、定期的な見守りサービスを受けることができます(※2)。

上田 見守りの具体的な内容を教えてください。

平松 「京都市高齢者すまい・生活支援事業」という取り組みで、社会福祉法人のスタッフが週に1回、物件に訪問して、健康状態などを確認します。介護などが必要な状況になった場合は、適したサービスを紹介します。現在、京都市の一部地域で、およそ90人の方が利用されています。

上田 行政や社会福祉法人のサポートが受けられるというのは、入居される方にとっても安心できますが、オーナーや物件の管理会社の安心にもつながります。

平松 このことが高齢者の住宅確保につながって欲しいと思っています。京都市の「すこやか賃貸住宅」も、国のセーフティネット制度も、必要な人にどうやって住宅を確保するかという問題に尽きます。登録数を増やすことだけでなく、今後はマッチングをさらに促進することで高齢者の住宅確保がスムーズになるでしょう。

上田 空室を高齢者の方にお貸しするというのは地域貢献・社会貢献にもなります。空室で悩むオーナーはもちろん、そうでないオーナーにも検討してほしいですね。

平松 京都市、不動産団体、そして福祉団体が協力をして、オーナー様をサポートさせていただきます。ぜひご相談ください。

「京都市すこやか賃貸住宅」に登録されている物件の特徴とは?

  1. 単身者が入居するから広さが30㎡未満が多い
  2. 築年数を重視しない入居者が多いので、築古物件の割合が高い
  3. 家賃は年金などから支払うケースが多いので4万円台が多い

「京都市高齢者すまい生活支援事業」とは?

65歳以上の単身者。見守りの支援を必要とし、住み替えを希望している人。現在支援を受けている人は女性が60%とやや多め。また、オーナー負担ゼロで入居する高齢者の見守りを定期的に実施。さらに生活相談にも対応し、各不動産会社からもサービスの提案も。

対象地域
  1. 京都市北区・上京区・東山区・山科区・南区・右京区・伏見区(一部学区のみ対象)※順次エリア拡大中

※1…京都市都市計画局住宅室住宅政策課「京都市における高齢者人口の推移」(資料)より抜粋
※2…入居者負担の見守りサービス。市民税非課税の人は無料。市民税課税の人は月1500 円

※この記事内のデータ、数値などに関しては2020年2月20日時点の情報です。

取材・文/瓜生 朋美(文と編集の杜) 撮影/山本 さとる

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