どうなる?金利、消費増税、インバウンド…今後の景気動向と賃貸経営に与える影響

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各種の経済指標を見る限り、景気の回復基調は続いている。一方で、2019年の消費税率の引き上げや2020年東京五輪など、今後の数年間に、景気のターニングポイントを迎える可能性が濃くなっています。今後それからがどんな影響を与えるのか?オラガ総研株式会社の代表取締役/不動産事業プロデューサー 牧野 知弘(まきの ともひろ)氏に話を聞いた。

オラガ総研株式会社 代表取締役 不動産事業プロデューサー

牧野 知弘(まきの ともひろ)氏


東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループ、三井不動産、日本コマーシャル投資法人を経て2015 年オラガ総研設立。


著書に「2020 年マンション大崩壊」(文春新書)「マイホーム価値革命」(NHK出版新書)等。


実際のインパクトは消費増税と金利動向

実態経済に影響を与えるイベントを挙げると、まずは2019年10月の実施がほぼ本決まりになった消費税率の引き上げだろう。増税前後の「駆け込み需要と反動減」の波を平準化するための対策も検討されているが、どれも過去の刷り直しでインパクトは薄く、影響は無視できない。

とはいえ、2014年の3%アップ時と比べて、2%アップの今回は景気へのマイナス作用は小さいというのが大方の見方だ(下図参照)。

もちろん、オーナーにとっては、賃貸経営に関わるあらゆる商品サービスがコスト増になることは間違いないだけに、増税前後の変化をキャッシュフロー計算にしっかり組み入れておきたい。

消費税以上にアパート経営や投資に大きく影響するのは金利の動きだ。これまで日銀が取ってきた低金利政策が、この先も長く続けられるかというと、かなり難しいだろう。しかも、日本の金融市場は完全にワールドワイドな動きとリンクしているため、従来の経済指標だけでは動きを読めない。

米国のFRB(※1)は既に段階的に政策金利を引き上げている。日本でも、いつ起きてもおかしくない金利上昇に備えて、オーナーは2つのことを意識すべきだろう。

1つは、現在の借入金が変動金利なら、大きく上昇する前に固定金利に切り替えること。2つ目は、投資や建築をする場合に、借入比率を極力抑えることだ。

※1 連邦準備制度理事会(米国の中央銀行制度)

家賃を上げていけるか“街力”を見極める

東京五輪後に建築費が下がるという観測もあるが、あまり期待はできない。建設資材の価格は世界的な需給バランスに左右され、国内の東京ローカルの動きだけでは決まらないからだ。深刻な人手不足が解消する見込みも当面ないだけに、人件費が下がる可能性も低い。税制や金利を含め、コストアップにつながる要素が重なるなかで、今後は家賃設定を高めていけるかが賃貸経営を大きく左右する。

人口減少と住宅ストックの増加が並行する以上、家賃を上げられるエリアと下がって行くエリア、地価が上がるエリアと下がるエリアに二極化し、その傾向はさらに激しくなる。「東京23区なら成功する」といった単純な方程式は通用しない。所有の土地が同じ地図内でも、どちらのメッシュに入るのかで成否が分かれるわけだ。

エリアの将来性は、利便性の高さだけでなく、街の中にどんな機能が揃っているか、つまり“街力”が重要になるだろう。それを見極めるには、住まい方や働き方の構造的変化への視点も求められる。

たとえば、都心のオフィスに通い、毎日朝から夕方まで同じデスクで仕事をする人はすでに減り始めている。大企業でも、社員が決まったデスクを持たないフリーアドレス制が一般化し、社外や在宅で仕事をするテレワークが進む。

会社などの所属の異なる人がオフィスや会議室をシェアして仕事をする「コワーキング」のスペースも急速に広がっている。

こうした新しいスタイルが広まれば、勤務先への交通利便性は現在ほど重視されなくなるかもしれない。自宅近くにコワーキングがあり、保育所や公園やカフェなどが揃い、快適に過ごせる街なら、郊外でもクローズアップされる可能性はある。

オーナー同士の工夫で街の魅力を高めてサバイバル

今後の資産運用を考えたとき、賃貸住宅だけでなく民泊も有望な手法といえる。民泊新法(※2)ができ、自治体の上乗せ条例などの規制もあり、一時的に民泊サイトへの登録件数は減った。しかし、それは生みの苦しみでもある。

訪日外国人旅行者の滞在日数はどんどん伸びており、長期滞在しにくい既存のホテルや旅館より、民泊の需要は着実に増えて行く。旅に対しても、観光資源が揃った著名な観光地だけでなく、日本の田舎の雰囲気を味わいたいなどニーズが変化。農村体験などで草の根交流が広がり、SNS で拡散され訪問客が増える例も多い。

これからは“ソフトウェア”、工夫が問われる時代だ。地域ぐるみで街の魅力を高めて発信していけるところに人が集まって来る。賃貸住宅では、隣にアパートができるとライバル視してしまいがちだが、民泊を求める旅行者向けに共通のサービスを一緒に考えられれば、共栄共存していける。

どのエリアのどんな物件が資産運用に向いているか。新たな投資や資産の組み換えをする時も、既存の枠にとらわれない発想が問われるだろう。物件を見る目、街を見る目を養い、不動産リテラシーを高めることが益々重要になってくる。

※2 住宅宿泊事業法

気になるトピック、ここに注目!

消費税率引き上げ(予定)

消費増税前後に起きる「駆け込み需要と反動減」を緩和する平準化対策は、エコポイント復活など新味はない。過去2 回の増税と比較すると景気に与える影響は小さい見込み。ただし、投資や土地活用に関わる減税措置はないため、実施するなら増税前がベター。

金利動向

過去5 年間続いた日銀の金融緩和政策による超低金利が、向こう5 年間も続く可能性は低い。金利上昇リスクは以前より高まっている。日本の金融市場は国際経済とリンクしているため金利動向は予測しにくい。借り入れを抑え、変動金利より固定金利にシフトすべき。

建築費

2020 年東京五輪後も、人手不足が続き人件費は下がらない。建設資材についても、足下では鉄鋼の需給が世界的にひっ迫して価格は上昇気味。五輪がらみの建設ブームが終わっても建築費が下がる可能性は低い。

地価

大局的には、都心はあまり下がらず郊外が下がるという二極化が進行。「生産緑地の2022 年問題」も郊外の地価下落圧力につながる。23区内でもエリアによって選別され、物件ごとに判断することが重要に。

インバウンド・民泊

訪日外国人観光客は2018 年通年で3100 万人を超えると予測され、需要の高まる民泊は資産運用先として有望。ホテルや旅館にできない独自サービスを地域ぐるみで提供してエリアの魅力を高めれば、賃貸運用では空室の多いエリアにも可能性が。

空室・空き家率

住宅ストックは増え人口は減るため、全体として空き家は増える。ただし「住みたい街」のランキングは時代とともに変わり、かつて憧れていた人気沿線やエリアが廃れることも。新しい働き方やライフスタイルを踏まえ、街と物件を選べば空室リスクも下げられる。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2018年12月12日時点のものです。

取材・文/木村 元紀

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