賃貸でも地震保険の加入は必要?災害に備えておくべきこと、発生後の動き方を解説

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公開日:2024年1月24日
更新日:2024年3月8日
賃貸でも地震保険の加入は必要?災害に備えておくべきこと、発生後の動き方を解説1

いつ・どこで起こるか分からない地震災害。その被害やリスクを最小限に抑えるために、賃貸オーナーにできる対策にはどんなものがあるでしょうか。地震保険をはじめとした備えと、災害発生後に賃貸オーナーがとるべき対応をまとめました。

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地震などの自然災害に備えて大家さんがしておくべきこと

災害に備えておくことは、入居者の命を守るためにも、自身の財産である物件を守るためにもとても重要です。賃貸経営において、オーナーは次のような備えをしておきましょう。

地震保険に加入しておく

賃貸でも地震保険の加入は必要?災害に備えておくべきこと、発生後の動き方を解説2

地震保険は、火災保険の補償外となる地震や火山噴火、津波による損害を補償する保険です。しかし実は、「地震保険」という単独の商品は存在しません。地震保険は火災保険に付帯しているため、地震保険に加入する場合は火災保険にもセットで加入する形になります。

アパートローンの借り入れには火災保険への加入が義務付けられていることもあり、ほぼすべての賃貸オーナーが火災保険には加入していることでしょう。

一方、地震保険には加入していない賃貸オーナーも意外と多くいるようで、損害保険料率算出機構のデータによると、2022年の全国付帯率は69.4%※でした。全世帯に対する加入率で見ると35%に止まり、まだまだ利用者の割合は伸び悩んでいます。

地震保険の元々の目的が生活再建の立て直しであり、建物の再建ではないため、地震保険の保険金額は火災保険の最大50%までが原則。このことが、地震保険の加入率が伸び悩む最大の要因の1つとなっています。

火災保険だけに加入していても、地震で起きた火事の損害は補償されません。「地震大国」と言われている日本でアパート・マンション経営をするのであれば、地震保険にも加入しておくことが賢明です。

家財については入居者にも保険に加入してもらう

賃貸でも地震保険の加入は必要?災害に備えておくべきこと、発生後の動き方を解説2

地震保険で補償される財産は、建物そのものと家財があります。賃貸オーナーが地震保険に加入する場合は、自身の財産である建物部分の契約となり、入居者の家財道具については入居者自身が保険契約をする必要があります。

賃貸契約時の条件として火災保険の加入が必須となっている賃貸アパートは多いですが、できれば火災保険の契約時に地震保険の必要性も説明し、こちらにも加入してもらうようにしましょう。賃貸契約の更新のタイミングでは、保険の更新も忘れずに行ってください。

定期的な消防設備点検と不具合の補修を徹底的に

賃貸でも地震保険の加入は必要?災害に備えておくべきこと、発生後の動き方を解説2

非常時に正常に作動するように、消火器・火災警報装置・誘導灯などの消防用設備の定期点検を必ず行うようにしましょう。

消防法では、これらの機器の点検を半年に1回、作動テストを含めた総合点検を1年に1回、点検結果の消防長または消防署長への報告を3年に1回行うことが義務付けられています。

もし点検を怠って火災が起きたときに正常に作動せず、死傷者等が出た場合は賃貸オーナーの責任を問われたり、火災保険が適用されなかったりする可能性もあります。定期的な点検と不具合の補修は徹底するようにしましょう。

災害に備えた備蓄は入居者満足にもつながる

賃貸でも地震保険の加入は必要?災害に備えておくべきこと、発生後の動き方を解説2

入居者用に非常用電源や簡易トイレ、水や食料を備えている賃貸オーナーもいます。これらは義務ではありませんが、入居者にとって大きな安心につながり、競合物件との差別化にもなるでしょう。

また、意外と持っていない人が多い非常用持ち出し袋や防災セットを入居者にプレゼントするのも、空室対策に有効です。

賃貸住宅の地震保険で補償される範囲

賃貸でも地震保険の加入は必要?災害に備えておくべきこと、発生後の動き方を解説2

地震保険の補償内容についてもう少し詳しく見てみましょう。対象は建物と家財で、その被害の大きさによって次のように保険金額が変わります。

全損 地震保険金額の100%
大半損 地震保険金額の60%
小半損 地震保険金額の30%
一部損 地震保険金額の5%

 

ただし保険金額には限度があり、建物は5,000万円、家財は1,000万円までとなっています。また、地震保険の保険金額は火災保険金額の30%~50%の範囲内と定められているため、地震保険の保険金だけで住宅を再建することは難しいことも頭に入れておきましょう。

なお、地震・噴火などが原因の火災で半焼以上の被害を受けた場合、火災保険金の5%相当の額が支給される「地震火災費用保険金」の特約が付いている例もあります。ただし、金額は見舞い金程度と少額なため、地震で被害を受けた建物への補償にはなりません。

地震による損害

地震保険に加入した場合、実際にどのような損害が補償対象となるのでしょうか。まず、地震による火災や山崩れ、建物の倒壊が補償されます。

しかし、地震の発生日から10日以上経過後に生じた損害については対象外となります。地震発生から11日目以降に建物が倒壊した場合、補償から外れてしまうのです。また、地震で門や塀などが壊れたとしても、建物そのものに被害がなければ対象外となります。

家財については、避難中などに入った盗難、いわゆる火事場どろぼうによる被害も対象に含まれないので注意しましょう。

噴火による損壊

地震保険は、火山噴火による損害も補償されます。噴石・溶岩流・火山灰などによって建物や家財が破損した場合などがそれにあたります。

噴火による火砕流などで火災が起きたとしても、補償は火災保険ではなく地震保険となります。地震で起きた火災と同じく、火災保険だけに加入している場合は補償されません。

地震・噴火が原因の津波による損害

津波による被害も、原因が地震・噴火であれば地震保険の補償対象です。ただし津波で自動車が流された場合は、自動車は家財にあたらないため、対象外となります。

賃貸住宅における保険請求の流れとポイント

賃貸でも地震保険の加入は必要?災害に備えておくべきこと、発生後の動き方を解説2

実際に地震が発生した場合、保険金の受け取りまでの流れとしては、人命に関わる安全確認が終わり次第、できるだけ早めに保険会社に連絡するようにしましょう。そこから保険金請求書類を受け取り、被害状況の立会い調査へと進みます。

被害状況は必ず写真を撮る

保険金請求時の証明資料になるので、被害を受けてから片付ける前に、損害状況は必ず写真で撮影しておきましょう。撮影するときはできるだけ4方向からの全景と、近景も複数枚撮っておきます。家財についても同様で、多方向から複数撮影しましょう。

壊れた家財は破棄しない

損害が出た家財は破棄せずに、家に残しておきましょう。保険金査定の際には、調査員が自宅に訪問して壊れた家財を確認します。その際は災害直後に撮影した写真や、可能であれば図面を用意しておくと良いでしょう。

保険証券を紛失してしまった場合は?

もし被災して保険証券を紛失してしまった場合も、保険金の請求は可能です。その旨を保険会社に伝えましょう。証券番号がわかると手続きがスムーズなため、手元にメモを残しておくのがおすすめです。

保険金査定の審査結果に満足できない場合は?

調査員による立ち合い調査のあと、1週間程度で保険金査定の結果連絡がきます。その際にもし、「明らかに壊れているのに損壊なしと判断された」などといった場合には、保険会社や代理店に再審査を依頼しましょう。

再調査の結果にも納得できない場合は、(一社)日本損害保険協会が運営する「そんぽADRセンター」に相談することもできます。専門の相談員が損害保険などに関する相談に対応してくれます。

そんぽADRセンター
ナビダイヤル 0570-022808
電話リレーサービス、IP電話からは東京:03-4332-5241/近畿:06-7634-2321

立会い調査~保険金の入金までは2週間ほど

もし保険金の額について問題がなければ、保険会社に請求書類を送付します。立会い調査から保険金の入金までは、損害状況により2週間ほどとされていますが、大規模災害の場合、さらに時間がかかることがあります。

賃貸住宅の地震保険でかかる保険料の相場

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地震保険の保険料は、保険対象である建物の構造、所在地により算出されます。保険期間は短期、1年および長期(2~5年)です。

財務省によれば、保険金額1,000万円/保険期間1年あたりの基本料率は以下の通りとなります。

鉄骨・コンクリート造、「耐火建築物」
「準耐火建築物」「省令準耐火建物」の木造
7,300~27,500円
木造 11,200~41,100円

 

新耐震基準以降に建てられたRC造マンションなどであれば、大きな地震が発生したとしても大半損となる可能性は低く、仮に大半損となった場合も支払われるのは5,000万円が上限です。

年々上昇する高額な保険料を支払っていくことに見合わないと考え、加入を見送るといったケースも想定されます。こういった要素も地震保険加入率の伸び悩みにつながっているのではないでしょうか。

賃貸住宅の地震保険でかかる料金を抑えるには

賃貸住宅にかかる地震保険料は、以下の方法で安くすることができます。

長期契約を結ぶ

2~5年の長期契約(長期保険保険料払込特約条項を付した契約)をすることで、保険料は以下の通りになります。契約期間が長ければ長いほど割引率が高くなります。

2年契約→1年契約の1.90年分
3年契約→1年契約の2.85年分
4年契約→1年契約の3.75年分
5年契約→1年契約の4.70年分

 

建物の性能や建築年による割引を活用する

割引制度として「建築年割引」と「耐震等級割引」、「免震建築物割引」、「耐震診断割引」が設けられており、建築年または耐震性能により、以下のように10%~50%の割引が適用されます。ただし併用はできません。

免震建築物割引 保険料の割引率50%
耐震等級割引/耐震等級3 割引率50%
耐震等級割引/耐震等級2 割引率30%
耐震診断割引/耐震等級1 割引率10%
建築年割引(昭和56年6/1以降に新築) 割引率10%

 

災害発生後に賃貸オーナーがするべき対応

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実際に災害が発生したとき、賃貸オーナーはどのような立場で、どう動くべきなのでしょうか。災害後に起こりうるトラブルに備えるべきポイントをご紹介します。

入居者とのトラブルを回避するポイント

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まず発生直後の行動として、入居者に対してすぐにとるべき行動は「入居者の安否確認」、次に「入居者への室内の状況確認」です。

災害が発生した場合でも、入居者に断りなく室内を確認することはできません。入居者に室内の壁の傷やひび割れ、水漏れ、設備の破損などが無いかを確認するようにしましょう。

地震などの自然災害は賃貸オーナーの過失ではないため、一時的に住めなくなってしまった場合の仮住まいなどの費用を負担する必要はありません。ただし法的義務とは別に(退去を予防する意味も含め)一定のお見舞い金を出すケースはあります。

災害で入居者の家財が壊れた場合はどうでしょうか。理論上は「安全な建物を提供する義務を怠った」として損害賠償を請求される可能性はあります。しかし、法令に則った建築や修繕、点検などをきちんと行っている場合は、賃貸オーナーにそこまで大きな責任は生じないと考えられます。

もし建物全体がなくなってしまった場合は、賃貸契約は終了します。公的な避難指示や警戒区域指定が出された場合にも、賃料の請求はできません。しかし、入居者の意思による自主的避難の場合は、賃料の請求は可能とされています。

建物トラブルに備えて注意すべきポイント

賃貸でも地震保険の加入は必要?災害に備えておくべきこと、発生後の動き方を解説2

建物についても、災害発生後すみやかに破損個所などを確認するようにしましょう。考えられるトラブルとして、例えば賃貸アパートのブロック塀が倒壊して通行人がケガをした場合、責任はどこにあるでしょうか。

これについては、所有者である賃貸オーナーが賠償することになります。しかし塀の高さや構造に欠陥があり、オーナーがそのことを知らなければ施工会社に損害額を求償できます。

賃貸でも地震保険の加入は必要?災害に備えておくべきこと、発生後の動き方を解説2

このほか、地震による隣家からの延焼で所有アパートが火災にあった場合、隣家に重大な過失がなければ、隣家にその責任を問うことはできず、賃貸オーナー自身が加入している火災保険を適用することになります。全焼の場合は、入居者に対しては賃貸借契約を終了することになります。

令和6年能登半島地震での主な支援の動き

賃貸でも地震保険の加入は必要?災害に備えておくべきこと、発生後の動き方を解説2

最後に、2024年元日に発生し、今なお捜索・復旧作業の続く「令和6年能登半島地震」について、国や民間企業による住宅関連の支援をまとめました。

住まいの確保につながる公的な支援

東京都、神奈川県などでは、令和6年能登半島地震によって住宅被害を受けられた方に対して当面6カ月の期間で公営住宅等の提供を開始。また、被災した石川県・富山県・新潟県でも、賃貸型応急住宅の提供も実施しています。

住まいの確保につながる民間の支援

民間企業では、APAMAN(株)が令和6年能登半島地震石川県・富山県内100部屋程度を無償で提供。大東建託(株)でも、自社のオーナー・入居者に対して、管理物件の無償提供を行っています。

また、石川県に本社を置く(株)クラスコは、被災された方を対象に自社管理物件の仲介手数料を無料にする他、対象物件では最大で6ヶ月分の家賃を住宅支援としてクラスコが負担することをリリースしています。

その他にも、(株)賃貸ステーションやハウスコム(株)が仲介手数料を無料化したり、65歳からのお部屋探しを専門で支援する(株)R65は石川県・富山県の物件掲載を無償化するなど、各所で支援の動きが広がっています。

まとめ

今回の地震によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された方々に、心よりお見舞い申し上げます。また、一日も早い被災地の復興を願っております。

入居者に安全な住宅を提供するためにも、賃貸オーナーはより一層、防災対策に取り組んでいくようにしましょう。

※この記事内のデータ、数値などに関して本記事は、2024年1月23日時点の情報をもとに制作しています。

取材・文/石垣 光子

ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。

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