賃貸契約のオンライン化はどれくらい普及した?更新・解約の経験者は前年より増加
2022年5月の宅建業法改正で認められた「不動産取引における電子契約」。具体的には、宅地建物取引士による押印義務が廃止され、重要事項説明書等の書類の電子化が可能になりました。それから約2年が経ち、オンラインによるやりとりはどれだけ普及したのでしょうか。アットホーム(株)が発表した調査結果から、賃貸契約に関する部分を抜粋してご紹介します。
賃貸契約を「対面(手渡し)」で行った人は約7割
賃貸契約については、69.6%の人が「対面(書面を手渡し)」で行っていました。契約時の書類のやり取りはまだまだ対面が主流のようです。
対面の場合は「疑問点をその場で確認できた」という好意的なコメントがある一方、「平日に休みをとる必要があった」という声も。
対面の次に多かった方法が「郵送」で13.5%。郵送に関しても「訪問する手間が省ける一方、郵送事故が起きるかもと少し不安になった」というコメントが挙がっていました。
オンラインで最も多かった方法は「メール」の10.7%。メールでのやりとりを希望する人は15.6%と、前年の9.6%より6ポイント増加しています。「メール」「LINE」「不動産会社のホームページ」を合わせたオンライン化を希望する声は前年より8.4ポイント増えました。
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更新・解約では対面を希望する人が少数派に
契約更新においては、経験・希望いずれも「郵送」が最も多くなっていますが、経験が前年54.0%→今回42.2%、希望が同46.8%→33.6%といずれも減少しています。
「メール」「LINE」「不動産会社のホームページ」を合わせたオンラインでの賃貸更新経験者は23.8%で、前年より7.9ポイント増加しました。
更新時期の通知のみという「自動更新」を経験した人が今回は6.1%いましたが、手間がないことを喜ぶ半面、確認用の書類などがないことに不安を感じるコメントも挙がっていました。自動更新の希望者は12.7%でした。
解約は45.4%が対面で行っていますが、「担当者と時間を合わせるのが大変だった」という声も。「メール」「LINE」「不動産会社のホームページ」を合わせたオンライン経験者は解約では25.1%。4人に1人はオンラインで解約していることになります。前年からは8.1ポイント増加しました。
また、解約におけるオンライン希望者も39.2%と前年より6.8ポイント増加。引っ越しなどで何かと忙しい解約については、ほぼ4割がオンラインを希望していることがわかりました。
電子サインについても希望者が昨年より増加
続いて書面への署名・捺印について、「電子サイン」を希望する割合を見てみましょう。賃貸契約については対面での署名・捺印を75.1%が経験、56.1%が希望しており、電子サインより対面が多数派です。対面での契約には「安心感があった」という声がありましたが、印鑑を忘れてしまい、二度手間になった人もいたようです。
賃貸更新については経験・希望ともに手描き署名・捺印した契約書を郵送で送る方法が主流であることから、電子サインでの署名は経験16.2%、希望28.2%と少数派。賃貸更新については対面希望者が前年より6.3ポイント増加しており、他とは違う傾向が見えました。
電子サインの希望者が最も多かったタイミングが賃貸の解約時で37.9%となっています。前年より6.4ポイント増加しており「新しい物件のことで手一杯になるので、自宅で夜中に署名・捺印できるのがありがたかった」というコメントが挙がっていました。
特にオンライン化してほしいのは「書類の返送」
最後にエンドユーザーのニーズについて、「大変だったこと」「面倒だったと感じたこと」とオンライン化してほしい手続きを質問しています。賃貸契約・更新・解約における「大変だったこと」トップ3は以下の通りでした。
1位 | 手続きのためだけに不動産会社に足を運ぶこと |
2位 | 打ち合わせや説明を受けるためだけに不動産会社に足を運ぶこと |
3位 | 営業時間内に不動産会社に連絡すること |
1位 | 書類に手書きで記入すること |
2位 | 契約に関する書類のやりとり |
3位 | 営業時間内に不動産会社に連絡すること |
1位 | 営業時間内に不動産会社に連絡すること |
2位 | 契約に関する書類のやりとり |
3位 | 書類に手書きで記入すること |
いずれも「営業時間内に不動産会社に連絡すること」がランクイン。お仕事や学校があるなかで連絡のタイミングを作ることにわずらわしさを感じている人が多いようです。
手続きの中でオンライン化してほしい部分については、更新における「書類の返送」が33.2%で全体を通して最も多く、解約における「署名・捺印」の33.0%が続きます。解約においてはトップ3がすべて3割を超えていることから、オンライン化を求める人が特に多い手続きといえます。
まとめ
今回の調査で、賃貸契約においてはオンラインによる書面のやり取りや電子サインが増えており、またそれを希望する人も増加傾向にあることがわかりました。
その反面で、対面でのやり取りがないことで不安を感じたり、不動産会社の担当者と顔見知りになったりすることで物件周辺の情報などを聞くことができて喜ぶ人も一定数存在していました。
多くのエンドユーザーが不動産会社の営業時間に合わせることを負担に感じていることから、営業時間外はメールやLINEで迅速に、しかし対面を希望する人にはしっかりと対応できる会社が求められています。
賃貸オーナーにとっては上記のような、相手や状況によって臨機応変に動ける不動産仲介会社を選ぶことが効果的な空室対策にもつながるでしょう。
オーナー自身が部屋探しをしている人と直接やりとりをすることはほぼありません。しかし、オンラインでのやり取りや求められている対応については、具体的にイメージしておきたいものです。
※この記事は2024年9月17日時点の情報をもとに作成しています
記事・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。
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