無理なく「適正な家賃」に近づけるために。家賃アップの実務ポイント
デフレからインフレへ。あらゆる物価が値上げの季節を迎える中、ひとり家賃だけが置いていかれて良いのでしょうか。本記事では、これまで抑えられていた家賃を、このタイミングで「適正水準」に引き上げるための実務ポイントをご紹介いたします。
株式会社ハウスメイトパートナーズ
グループ経営本部企画部長
塚田昌紀さん
企画部アシスタントマネージャー
田中健太さん
市場に照らして「適正家賃」へ引き上げるべき時代に
「2000年以来、初めて家賃が上昇していくフェーズを迎えています。以前も23区内や再開発地区などスポット的に上昇するエリアはありましたが、全体的には、いかに家賃下落を抑えるかに腐心していました。これほど広範囲に家賃が上がっているのは初めての経験です。3年ほど前から明らかな傾向で、家賃を上げられる環境になったというレベルを過ぎて、今や上げなければいけないという認識です。」(塚田さん)
2022年以降、世界的なインフレが進行し、維持管理費や原状回復リフォームのコストがすでに上がり続け、賃貸オーナーの収益を圧迫しています。築年が経っていれば大規模修繕の資金も準備しなければなりません。
家賃は現在の収支を左右するだけでなく、収益還元価格で判断される売却価格にも影響します。投資家は積極的な値上げを求め、市場を引っ張っていきます。地主系オーナーで保有し続けるとしても、地価上昇で路線価が上がり、想定される相続税も増えているため、家賃を上げなければ納税資金も準備できません。資産防衛の観点でも収支を改善する必要に迫られています。
「もはや家賃を上げなければ賃貸経営が成り立たない時代を迎えているといえます」(田中さん)。
既存入居者は更新時に淡々と。新規入居者はスピード第一で
もちろん、世間がインフレだからといって、すべての地域・物件で値上げできるわけではありません。「物件を保有するエリアが賃貸需要のあるホットなマーケットか、建物や設備仕様が時代のニーズに合っているかを精査する必要があります。今なら強気で値上げができるという発想は危険。周辺相場に照らして“適正家賃”に引き上げるという考え方をすべきでしょう。根拠のない値上げは、いつの時代もNGです。」(塚田さん)
「家賃アップ」ロードマップ
上図にスムーズに家賃値上げを行う流れを示しました。大きく既存入居者と新規入居者に分かれます。両者に共通する事前準備が、マーケットの把握です。細かい手続きは図を参照していただくとして、重要ポイントを解説しましょう。
まず既存入居者に対しては、「値上げを打診すると退居されてしまうのでは?」という懸念を持つオーナーも少なくありません。しかし、「最近の入居者はインフレ傾向であることを十分に認識しているため、折衝が長びくケースはまれでしょう。更新のタイミングに合わせて、強気でも下手に出るでもなく、穏便に進める姿勢で取り組んでください」(塚田さん)。
また、新規募集時はスピードが命です。「空室期間を最小限に抑えるため、退室したら次に募集する家賃をどうするか、事前に調査して想定しておきます。退室予告が来たら最短2日で新家賃を決めて即募集に入る。出だしが早ければ、はじめは高めに家賃設定をし、市場の反応を見ながら下げていくこともできます」とアドバイスしています。
家賃値上げが厳しい場合の裏技
家賃値上げが厳しい場合は、共用部の維持管理費にあたる共益費のアップから挑戦してみましょう。公共料金や諸物価の高騰を理由に説明すれば、比較的認められやすくなります。空室が多く、それも難しい場合は、改修でバリューアップして収益向上を図れるか検討します。家賃水準が高まっている今、投資しやすい環境であることは間違いありません。
今こそ、賃貸経営を続けるために一歩踏み出す時期ではないでしょうか。


