【2025年の収益不動産売買を展望】国内外からの投資意欲は依然として衰えず。不動産価格は高止まり、売り買いともに活発な年に
- 市況・マーケット
サラリーマンから富裕層、インバウンドまで巻き込む多様なプレイヤーがひしめく収益不動産市場。アパートを中心に価格は右肩上がりから踊り場へ。利回りは収支ギリギリの水準で持ちこたえる。2025年も価格は高水準を維持、売りも買いも活発で、チャンスをうかがう年に。健美家 代表取締役社長の倉内 敬一氏に解説いただきます。
1998年リクルート入社。住宅情報(現SUUMO)事業に携わる。不動産販売会社を経て、2008年健美家(株)入社、2012年代表取締役社長に就任。「健美家」は、物件情報や投資家コラム等を提供する、不動産投資の専門サイト。
この記事のPoint
● 販売価格は区分・一棟マンションで上昇。アパートは横ばい傾向
● 金利の先高観はあるが、まだまだ低水準。この時期を活かす
● 収益不動産市場は活性化。「買い時」であり「売り時」でもある
マンションは区分・一棟ともに上昇が続く
収益不動産の価格の動きは、物件種別によって異なります。もっとも動きが激しいのが区分マンションです。実需と投資を問わず区分マンションは、これまで約10年の間、上がり続けてきました。特に、この2年ほどは居住用マンションが急激に上昇し、つられるように投資用の区分マンションも40%以上アップしています。
投資用の区分マンションはワンルームが中心です。価格帯が低く売買事例も多いことから、購入者は不動産投資の入門として始めるサラリーマン投資家や、キャッシュで取得する富裕層まで多岐にわたります。
円安傾向を追い風にした海外からのインバウンド需要も少なくありません。価格上昇と反比例して、区分マンションの利回りは、首都圏・関西圏で6%台、東海圏では9%台まで下がっています。
しかし、台湾やシンガポールなどでは1%台にあるため、利回り水準の高い「日本のマンションは買い」というニーズが集まっています。こうした幅広い需要が、区分マンションの価格を押し上げています。
マンションでも、一棟マンションの価格は1~2億円と高額なため、国内のベテラン投資家や富裕層、土地オーナーの相続がらみの需要が中心になります。価格は緩やかながらも上昇しています。一方で、利回りは首都圏で6%台まで低下しました。
【登録無料】メルマガで週2回お役立ち情報を配信中!
アパートは横ばい。今後も高値安定が続く
一棟アパートの価格は、ゆるやかに上昇していましたが、2年ほど前から横ばいに転じました。価格帯は、マンションの区分と一棟物件の中間で、取引件数も少なくありません。利回りは首都圏で7%台、関西圏8%台、東海圏で9%台と、区分・一棟マンションより高いです。
ただ、個人投資家が融資を受けて取得するケースが多いことが、価格上昇の歯止めになっ
ているかもしれません。アパート向けローンの金利は2~3%で、これに管理運営費や空室リスクなどを考慮すると、利回りが下がって収支が厳しくなるからです。
さて2025年以降の展望ですが、マンション価格は区分・一棟物件いずれも、2024年第3四半期に右肩上がりから踊り場を迎えつつあります。アパートは前述の通り、すでに横ばいです。こうした状況になると「いつ値下がりするのか」という疑問が出て来るかもしれません。
しかし、現状の利回り水準を維持する限り、価格が下落に転じる可能性は低いと見ています。国内外の需要は堅調だからです。かつてのリーマンショックのような世界的金融ショックでもなければ、高値安定が続くでしょう。
融資環境は良好。「金利のある世界」に備える
現在の融資環境も不動産市場を下支えしています。2018年頃、シェアハウス向け不正融資事件の発覚を機に審査が強化された時期もありましたが、今では正常化し、貸し渋りもありません。
以前は、自己資金を3割以上入れないと審査が通りにくい時期もありましたが、現在は1~2割が一般的。金融機関の中で地方銀行・信用金庫などは収益不動産への融資に前向きです。
融資環境が厳しいかどうかは、個人属性や経営状態次第です。財務状況が良い投資家や資金力のある富裕層は、融資が受けやすいといえます。
今後は「金利のある世界」に移ります。ローンの変動金利もやや上昇しました。とはいえ、世界の平均よりまだまだ低い水準です。ここ20年で金利が一番高かったのは3~4%。金利は現状だけでなく4%まで上がっても返済負担に耐えられるか、収支計算でしっかりと検証することが大切です。
「買い時」と同時に「売り時」2025年は市場が活発化
これから購入を検討している場合は、あまり短期的な動きに左右されないことが大切です。中長期的に見れば、不動産価格も金利も上がったり下がったりします。
ここ数年の日本の不動産のメリットは金利の低さ。不動産購入を考えているなら、低金利を活かさない手はありません。物件を選ぶ際には、賃貸需要があるエリアをピンポイントで見極めることが重要です。
郊外でも、需要が安定した場所はあります。物件探しの相談先は、普段から付き合いのある不動産会社だけに限定するのは得策ではありません。
市場に公開されない物件情報を持つ不動産会社など、得意分野の異なる複数の会社と接しながら経験を積むと良いでしょう。相続対策なのか、節税対策なのか、目的を明確に相談し、最適な提案をしてくれる会社がおすすめです。
手持ちの物件を売却する際も同様です。一棟収益不動産は個別性が高く、会社によって査定に差が出ます。有利に売却できる提案力のある会社を選びましょう。
これから超高齢化社会が到来して相続案件の増加が見込まれます。相続登記の義務化により、保有不動産の売却も増えそうです。国内外からの投資意欲が衰えない2025年は、不動産市場が活性化するという意味で、買い時であり、売り時でもあるチャンスの年になるのではないでしょうか。
※この記事は2024年11月26日時点の情報をもとに制作しています。