キーワードは「母親」「恋人より友人」「安定志向」。ここ30年で若者の価値観はどう変わった?

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公開日:2025年5月21日
更新日:2025年5月22日
キーワードは「母親」「恋人より友人」「安定志向」。ここ30年で若者の価値観はどう変わった?1

19~22歳の未婚男女を対象に、博報堂生活総合研究所が「若者調査」を実施しました。19~22歳といえば、初めて一人暮らしを始める、賃貸住宅のメインターゲットである年代。選ばれる賃貸住宅であるためにも大家さんなら把握しておくべきデータです。30年前(1994年)に行った同様の調査と比較し、この30年で若者の価値観はどう変わったかを見ていきましょう。

尊敬する人は「母親」が「父親」を逆転。共通の趣味も

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30年前(1994年)調査時に若者であった“団塊ジュニア世代”は、今回調査対象である今の若者たちの親世代(現在49~52歳)にあたります。

この30年で、まず大きく変わったのが親子の関係。「母親と共通の趣味がある」と答えた若者は、1994年現在では29.9%でしたが、2024年は50.7%と過半数に転じました。「父親と共通の趣味がある」割合も増えてはいますが母親ほどではなく、1994年33.6%→2024年41.5%となっています。

特に男性で「母親と共通の趣味がある」の割合が、1994年19.5%→2024年41.6%と倍増しています。

さらに「尊敬する点が一番多い相手」は、1994年は父親46.4%・母親28.4%でしたが、2024年は父親33.8%・母親43.0%と逆転しました。「自分の価値観や考え方に一番影響を与えている相手」も1994年は父親・母親がほぼ同数でしたが、2024年は父親20.0%/母親41.2%と倍以上の差がついています。

家族との付き合い方については「親に殴られたことがある」が1994年69.9%に対し、2024年は34.7%と半減。その一方で、「自分はマザコンだと思うことがある」が12.5%から26.7%に倍増しました。

30年で恋愛離れが加速!そばにいてほしい人は「同性」

人間関係については、「デートをする相手」が1994年は「いない」45.2%から、2024年は67.3%に大幅増加。「今一番欲しいもの」のランキングでも、1994年は5位だった「恋人」が2024年は10位にランクダウンしました。

欲しいもの1位は1994年も2024年も「お金」。しかし、2位以下が1994年は「ツキ・運」「能力」「幸せ」だったのに対し、2024年は「時間」「自由」「安定した暮らし」と顔ぶれが変わります。

「自分にとって居心地のいい組み合わせ」「落ち込んだ時に一番そばにいてほしい相手」も1994年は「異性」と答えた人の方が多かったところが、2024年は「同性」が上回りました。

異性・同性に限らず友人との付き合いに関しては「自分の考えと合わない人と一緒にいることは避ける」「相手と意見が違っても反論はしない方だ」「人付き合いは面倒くさいと思うことが多い」などが1994年よりも2024年の若者に増加。居心地の良い距離感を保つ傾向が見られます。

恋愛離れと「友人重視」志向。居心地重視の時代へ

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「恋人」より「同性の友人」との関係を重視し、落ち着いた一人時間や気兼ねない空間を求めている傾向があります。このことから、ワンルームでも防音性や収納力、趣味に使える小スペースの確保などが満足度に直結しやすいポイントです。

「ベンチャーより大企業」が過半数。学歴主義が顕著に

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仕事に関して「ベンチャービジネス」か「大企業」かを選んでもらったところ、1994年はベンチャー6割、大企業4割でしたが、2024年には逆転。2024年の若者は63%が大企業を望んでおり、リスク回避志向が表れています。

この30年で大きくポイントを減らした仕事に対する価値観には、他に以下のようなものが見られました。

・会社の規則や上司の意見が間違っていると思ったら、自分の意見をはっきり言いたい
・額に汗して労働することは美しいと思う
・仕事は責任が重くても、すべて任される方がいいと思う
・本音でいえば、やはり『男は仕事、女は家庭』だと思っている

「学歴で将来差がつくのは仕方がない」と思う若者も72.7%と7割を超え、1994年の46.3%から大幅に増えています。

「安定志向」と「自由時間志向」が共存。効率的な生活動線も求められる

1994年はベンチャー志向が主流だったのに対し、今の若者は「大企業」「安定した暮らし」を求めています。一方で「今一番欲しいもの」には「時間」「自由」も上位にランクイン。

このような「効率化」と「省力化」ニーズを背景に、宅配ボックス、Wi-Fi完備、コンビニ・駅への距離など、“時間を奪わない”環境が選ばれる傾向にあります。

地球環境のために「高くても買う」若者は大きく減少

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「環境を考えた商品であれば価格が高くても買う」と答えた若者は、1994年の51.9%から2024年は大きく減少し、29.5%に。同様に「環境を守るためなら、今より不便な生活でもガマンできる」の割合も58.6%→36.5%と減少しています。

しかし、ボランティア活動への参加経験は23.1%→43.8%、参加意向も49.5%→59.5%と増加しており、必ずしも利己的な価値観と決めつけることはできません。

環境意識は減少?されど「エコ」の見せ方がカギ

「環境のためなら高くても買う」は減少していますが、ボランティア参加など「共助・支援」意識はむしろ高まっています。

「環境に良いから」よりも「光熱費が下がるから」「断熱性が高くて快適だから」といった実利ベースでのエコ訴求が有効です。また、太陽光発電つき賃貸なども、“応援消費”の一環として選ばれる可能性があります。

居心地重視の「インドア派」増加。“内装”で差がつく時代

関心がある情報ジャンル・情報カテゴリとして、1994年から大きく減少したのが「スポーツ観戦」「車」「腕時計」。一方で「食べ物」「飲食店」「化粧品」「動画コンテンツ」「ゲームソフト」などに対しては2024年の若者の方が関心は高まっています。

住生活に関する意識については「家族一人ひとりの部屋がある」「家でひとところに集まって家族とよくおしゃべりをする」が1994年より2024年の方が増加しています。

暮らし方に対しては、「無駄を楽しんで暮らす」が増加した一方で、「生活の中に刺激が欲しい」「ワンランク上の生活を目指している」が減少しました。

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「夜は外出するより家にいる方だ」が58.8%→71.2%と増加。「家の中よりも、野外で遊ぶ方が好きだ」が70.5%→46.0%と減少していることからも、インドア派が増えているのは間違いなさそうです。

「外より家がいい」「ひとりの時間を楽しむ」が当たり前になり、室内の居心地=生活の満足度を決定づけます。明るさ・断熱・壁色・床材の質感など、内装の“質感”が空室対策の一手になるかもしれません。

まとめ|若者の価値観は“静かで自分らしい暮らし”へ

30年前の若者は就職氷河期にあたる時代。とはいえ物心ついてからのバブル景気の雰囲気も体感しており、全体的には安定より挑戦、インドアよりアウトドアといった傾向が見られます。

かつての「夢や刺激」から、「自分らしく・疲れない・無理しない」暮らしへと若者の価値観は移行しています。これは一見、堅実志向に見えますが、逆にいえば丁寧で快適な住まいへの投資をいとわない層ともいえます。

もちろん調査結果だけがすべてではありません。しかし、「価値観は時代によって変わるもの」という視点を持ち続け、それを経営に生かすためにも、このようなデータは定期的にチェックすることをおすすめします。価値観を読み解き、物件改善やPRに活かすことで、空室対策にもつながるでしょう。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2025年5月21日時点のものです。

取材・文/石垣 光子

ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。

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