家賃は上がる、部屋は狭くなる…都心の収納不足を救う存在に?急成長するトランクルーム市場
人件費や燃料費の高騰、そして円安などを背景とした物価上昇により、セール時にまとめ買いをする家庭も増えています。その一方、都心部を中心に家賃は上昇を続け、その結果として収納スペースの縮小等の「住まいのコンパクト化」も顕著になり、この相反するトレンドを解消する「トランクルーム」の需要が高まっています。今回はその強みと可能性について探っていきます。
都心の賃貸は20年で20㎡居住面積が減少

キュラーズ調べ|グラフ引用元:「トランクルーム市場(屋内・屋外含む)に関する市場規模と成長予測に関する2025年度調査結果」より引用
物価高、食料品をはじめとする日用品の値上がりのニュースが連日のように報道されている中、人口の都心回帰や再開発による需要増、投資目的での購入拡大などを背景に、都市部を中心とした家賃も上昇を続けています。
一方で、同じ予算で借りられる部屋の広さは反比例的に縮小を続け、株式会社キュラーズの行った「トランクルーム市場(屋内・屋外含む)に関する市場規模と成長予測に関する2025年度調査結果」によると、賃貸住宅一戸あたりの平均床面積は20年で20㎡減少。それに伴い、1R・1Kといった「コンパクト物件」の比率が上昇しています。
6割以上の引っ越し検討者が「狭さ」に不満
そんな中、日本最大級の「トランクルーム」経営会社である(株)キュラーズは、①直近1年以内に引っ越しをした人(221人)/②向こう1年以内に引っ越しを予定している人(221人)を対象に、引っ越し事情やトランクルーム利用実態について調査を実施。2025年2月にその結果を公表しました。

キュラーズ調べ|グラフ引用元:「引っ越し事情やトランクルーム利用実態についての調査」より引用
それによると、引っ越しを行った人では44.3%で「住宅環境に不満(44.3%)」、引っ越しを予定している人では「住宅設備に不満(36.2%)」との回答が、それぞれにおいて最多となりました。
その中でも、今後引っ越しを予定しており「住宅設備に不満」を抱いている人に対し、具体的な不満の内容を聞いてみたところ、「部屋の狭さ」が66.2%で最多となり、次いで「収納の狭さ」が63.7%で僅差の2位となりました。引っ越しの動機として、部屋や収納の狭さ・使い勝手の良し悪しは、6割以上という多くの人にとって重要な指標になっている事が推察されます。
16年連続で成長を続ける「トランクルーム」
今回の調査によりますと、屋内・屋外を含むトランクルーム市場は、調査開始の2008年以来16年連続で成長を続けています。市場規模も現在約850億円に達しており、今後も堅調な拡大が見込まれています。予測では、2027年には市場規模が1,000億円を超える可能性があるとされています。

キュラーズ調べ|グラフ引用元:「トランクルーム市場(屋内・屋外含む)に関する市場規模と成長予測に関する2025年度調査結果」より引用
およそ10年という短期間で市場規模が2倍以上に成長する業界は国内でも珍しく、再生可能エネルギー市場やデジタルトランスフォーメーション(DX)市場など、決して多くない有望分野に限られます。こうした高い成長性を背景に、トランクルーム市場には国内外の企業や投資家から大きな期待と注目が集まっているのです。
利用の前後でこんなに違う!暮らしの満足度
さらに今回の調査では、トランクルームを利用する前後で暮らしの満足度が「上がった」と回答した人は72.7%にのぼりました。
満足度が向上した理由としては、「自宅がスッキリし広く感じるようになった(70.6%)」が最も多く、続いて「収納スペースが整理され、物の管理がしやすくなった(62.0%)」など、トランクルームの利用前よりも住環境が改善したと実感する声が目立ちます。
さらに、「必要以上に広い住まいを選ぶ必要がなくなり、居住費を抑えられた」と答えた人も14.9%おり、経済的なメリットも明らかとなっています。具体的な生活費の削減額としては「1万〜2万円未満」が24.2%で最多となっており、トランクルームの利用料金がかかる一方で、家賃や光熱費などの負担軽減によって、総合的に見ても生活費の削減につながっていることが示されました。
トランクルームとの提携が賃貸需要を高める
都市部を中心に居住面積の縮小が進み、収納不足が多くの世帯で「悩みのタネ」となる中、トランクルームとの提携が賃貸物件の需要を高める新たな提案として注目されています。
全国のトランクルームの延べ室数は統計史上最多となる62万,6418室を記録し、市場はこの10年で約2倍に成長しました。特に屋内型トランクルームの約4割が東京23区に集中しており、都心部では住まいと生活インフラの一部として外部収納を組み合わせた暮らし方が広がっています。
賃貸住宅において収納力は入居を左右する重要なポイントですが、室内にスペースを追加するには構造的な制約があります。そのため、外部のトランクルームをセットで提供・提案することで、入居者は家賃を抑えながら実質的な生活空間を広げることができます。
この取り組みは都心部に多い1R・1Kなどの「コンパクト物件」の主な借り手である単身者はもちろん、持ち物を効率的に管理したいファミリー層や法人にも支持が高まっています。トランクルームとの提携は物件の魅力を高め、賃貸需要を底上げする効果的な手段になりえます。
年末のまとめ買い、引越し時期に利用者急増
近年の食品価格や家賃の上昇により家計負担は増える一方です。そのため、セール時の“まとめ買い”を行う家庭も増えてきています。
しかし都市部においては住宅の「コンパクト化」が進み、収納スペースは常に不足しやすい状況にあります。特にブラックフライデーやクリスマス、初売りなど買い物の機会が重なる年末年始は、モノが増えやすく、限られた住空間の使い方が各世帯でも頭の痛い問題となっています。
一方、直近1年以内に引っ越しをした人の調査では、約4割(39.8%)が引っ越し時にトランクルームを活用しており、そのうちの5人に1人は利用を継続しています。

キュラーズ調べ|グラフ引用元:「引っ越し事情やトランクルーム利用実態についての調査」より引用
「不要な荷物を保管でき、新居に持ち込む物を選別できた(70.7%)」といった点が評価され、年末年始の“まとめ買い”シーズンに加え、春の引っ越しシーズンにトランクルームの利用が集中する傾向も明らかになりました。
まとめ
今や生活インフラの一部として認知されているトランクルームの現状と、「引っ越しをした・予定している」人の動機や悩み、そして賃貸住宅とトランクルームのこれからの関係などを見てきました。
10年で約2倍の市場規模にまで成長したトランクルーム市場と、減少傾向が続く賃貸住宅の平均床面積の関係は、今後も物件価格や賃料の上昇が予想される世の中において、ますます深いものになっていくでしょう。特に都心部では、住まいの中に不足している収納スペースを代替する「アナザークローゼット」としてのトランクルームは、有効な解決策になり得ます。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2025年11月12日時点のものです。
取材・文/御坂 真琴
ライタープロフィール
御坂 真琴(みさか・まこと)
情報誌制作会社に25年勤務。新築、土地活用、リフォームなど、住宅分野に関わるプリプレス工程の制作進行から誌面制作のディレクター・ライターを経てフリーランスに。ハウスメーカーから地場の工務店、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、販売促進ツールなどの制作を手がける。

















