2025年繁忙期の家賃動向は多くのエリアで前年同月超え。直近10年の最高値を記録したエリアも多数

統計局の人口移動報告※によると2025年3月の移動者数は都道府県間、市町村間ともに増えており、人の動きが活発化しています。人の移動に必ず発生するのが「住み替え」。家賃が「上昇している」とよく耳にしますが、実際にはどのくらい上昇しているのでしょうか。2025年3月の募集家賃動向をチェックしてみましょう。
【全体概況】上昇率トップは京都市のファミリー向きアパート
アットホーム株式会社が公開している「全国主要都市の賃貸マンション・アパート募集家賃動向」では、同社不動産ネットワークでの募集家賃を13の都市で集計しています。
対象都市は東京23区、東京都下、神奈川県、埼玉県、千葉県、札幌市、仙台市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、広島市、福岡市の13エリア。
物件は広さに応じて以下の4区分に分類されています。
・30㎡以下:シングル向き
・30㎡~50㎡以下:カップル向き
・50㎡~70㎡以下:ファミリー向き
・70㎡超:大型ファミリー向き
まず、前年同月比の家賃上昇率トップ3は、それぞれ次のようなエリアでした。
マンション|平均募集家賃 前年同月比上昇率トップ3 ※( )内は上昇率
順位 | 30㎡以下 シングル向き | 30㎡~50㎡以下 カップル向き |
1位 | 福岡市(+10.0%) | 東京23区(+10.3%) |
2位 | 東京23区(+6.6%) | 大阪市(+7.7%) |
3位 | 大阪市(+5.8%) | 福岡市(+6.9%) |
順位 | 50㎡~70㎡以下 ファミリー向き | 70㎡超 大型ファミリー向き |
1位 | 福岡市(+9.0%) | 埼玉県(+5.6%) |
2位 | 東京23区(+8.7%) | 大阪市(+5.3%) |
3位 | 札幌市(+8.6%) | 札幌市(+4.1%) |
アパート|平均募集家賃 前年同月比上昇率トップ3 ※( )内は上昇率
順位 | 30㎡以下 シングル向き | 30㎡~50㎡以下 カップル向き |
1位 | 京都市(+8.9%) | 東京23区(+6.9%) |
2位 | 千葉県(+4.4%) | 京都市(+5.6%) |
3位 | 大阪市(+3.2%) | 福岡市(+5.3%) |
順位 | 50㎡~70㎡以下 ファミリー向き |
1位 | 京都市(+15.6%) |
2位 | 福岡市(+12.1%) |
3位 | 東京23区(+9.4%) |
マンションでは、東京都下・神奈川県・埼玉県・千葉県・札幌市・大阪市・神戸市・福岡市の8エリアが全面積帯で前年同月を上回りました。
アパートは、ファミリー向きが仙台市を除く12エリアで前年同月を上回り、東京都下・神奈川県・埼玉県・名古屋市・神戸市・福岡市の6エリアは2015年1月以降最高値を更新しました。
上昇率が最も大きかったのが50㎡~70㎡以下(ファミリー向き)の京都市のアパートで、平均家賃は11万4,018万円です。京都市のアパートはすべての面積帯でトップ3に入っていました。
【東京23区】2015年~最高値を更新し続ける面積帯が多数

エリア別に見てみましょう。平均家賃は以下の通りです。
東京23区 マンション平均家賃 | |
30㎡以下(シングル向き) | 9万9,083円 ★2015年1月以降最高値 |
30㎡~50㎡以下(カップル向き) | 16万3,554円 ★2015年1月以降最高値 |
50㎡~70㎡以下(ファミリー向き) | 23万9,492円 ★2015年1月以降最高値 |
70㎡超(大型ファミリー向き) | 37万3,202円 |
東京23区 アパート平均家賃 | |
30㎡以下(シングル向き) | 6万7,126円 |
30㎡~50㎡以下(カップル向き) | 11万3,803円 ★2015年1月以降最高値 |
50㎡~70㎡以下(ファミリー向き) | 15万9,606円 |
マンション平均家賃は前年同月比・前月比ともに大型ファミリー向き以外は上昇しました。マンションのシングル向き・カップル向き・ファミリー向きは2015年1月以降最高値で、シングル向きは10カ月連続、カップル向きは28カ月連続、ファミリー向きは9カ月連続の更新となりました。
アパートの平均家賃は全面積帯で前年同月を上回りました。カップル向きは6カ月連続で2015年1月以降最高値を更新しています。
【東京都下】マンション・アパートともに前年同月を上回る

武蔵野市・吉祥寺駅前
東京都下 マンション平均家賃 | |
30㎡以下(シングル向き) | 5万9,819円 |
30㎡~50㎡以下(カップル向き) | 9万4,644円 ★2015年1月以降最高値 |
50㎡~70㎡以下(ファミリー向き) | 12万9,649円 ★2015年1月以降最高値 |
70㎡超(大型ファミリー向き) | 19万0,632円 |
東京都下 アパート平均家賃 | |
30㎡以下(シングル向き) | 5万3,849円 |
30㎡~50㎡以下(カップル向き) | 8万3,639円 ★2015年1月以降最高値 |
50㎡~70㎡以下(ファミリー向き) | 10万9,443円 ★2015年1月以降最高値 |
23区以外の東京都下の平均家賃もマンション・アパートともに全面積帯で前年同月を上回りました。
マンションのカップル向き・大型ファミリー向きは2015年1月以降最高値で、カップル向きは3カ月連続、大型ファミリー向きは2カ月連続の更新です。
アパートのカップル向き・ファミリー向きは2015年1月以降最高値で、ファミリー向きは4カ月連続の更新となりました。
【神奈川県】カップル・ファミリー向きマンションが最高値に

横浜市空撮
神奈川県 マンション平均家賃 | |
30㎡以下(シングル向き) | 7万0,386円 |
30㎡~50㎡以下(カップル向き) | 10万2,379円 ★2015年1月以降最高値 |
50㎡~70㎡以下(ファミリー向き) | 13万5,557円 ★2015年1月以降最高値 |
70㎡超(大型ファミリー向き) | 20万7,894円 |
神奈川県 アパート平均家賃 | |
30㎡以下(シングル向き) | 5万6,221円 |
30㎡~50㎡以下(カップル向き) | 7万9,973円 |
50㎡~70㎡以下(ファミリー向き) | 10万1,620円 ★2015年1月以降最高値 |
神奈川の平均家賃もマンション・アパートともに全面積帯で前年同月を上回りました。
マンションのカップル向きは4カ月連続、ファミリー向きは2カ月連続の更新で2015年1月以降最高値となりました。神奈川県のマンションは、すべての面積帯で東京都下より高い家賃水準です。
アパートはファミリー向きが2カ月連続で上昇し、2015年1月以降最高値を更新しました。
【埼玉県】カップル・ファミリー向きアパートが最高値を更新

さいたま新都心駅
埼玉県 マンション平均家賃 | |
30㎡以下(シングル向き) | 6万4,135円 |
30㎡~50㎡以下(カップル向き) | 8万6,094円 ★2015年1月以降最高値 |
50㎡~70㎡以下(ファミリー向き) | 11万6,066円 ★2015年1月以降最高値 |
70㎡超(大型ファミリー向き) | 16万3,245円 ★2015年1月以降最高値 |
埼玉県 アパート平均家賃 | |
30㎡以下(シングル向き) | 5万3,915円 |
30㎡~50㎡以下(カップル向き) | 7万2,483円 ★2015年1月以降最高値 |
50㎡~70㎡以下(ファミリー向き) | 8万9,019円 ★2015年1月以降最高値 |
埼玉県の平均家賃もマンション・アパートともに全面積帯で前年同月を上回りました。マンションのカップル向き・ファミリー向き・大型ファミリー向きとアパートのカップル向き・ファミリー向きが2015年1月以降最高値です。
【千葉県】前年同月を上回るものの、アパートの前月比は下落

千葉市の街並み
千葉県 マンション平均家賃 | |
30㎡以下(シングル向き) | 6万7,021円 ★2015年1月以降最高値 |
30㎡~50㎡以下(カップル向き) | 9万0,380円 ★2015年1月以降最高値 |
50㎡~70㎡以下(ファミリー向き) | 11万5,869円 |
70㎡超(大型ファミリー向き) | 15万8,445円 |
千葉県 アパート平均家賃 | |
30㎡以下(シングル向き) | 5万3,710円 |
30㎡~50㎡以下(カップル向き) | 7万0,027円 |
50㎡~70㎡以下(ファミリー向き) | 9万0,867円 |
マンション・アパートともに全面積帯の平均家賃が前年同月を上回りました。マンションのシングル向き・カップル向きは2015年1月以降最高値で、カップル向きは4カ月連続の更新となっています。
【全国】大阪・神戸・福岡の全面積帯で前年同月を上回る

札幌市
北海道札幌市では、マンションの平均家賃が全面積帯で前年同月を上回りました。中でもカップル向きが6カ月連続で2015年1月以降最高値を更新、平均家賃は6万2,563円です。アパートの前年同比はシングル向きが下落し、カップル向き・ファミリー向きが上昇しています。
宮城県仙台市ではマンションの前年同月比がシングル向き・カップル向きが上昇。カップル向きは2015年1月以降最高値を更新しており、平均家賃は7万4,669円です。アパートの平均家賃の前年同月比はシングル向きのみが上昇しました。
愛知県名古屋市のマンション平均家賃は大型ファミリー向きのみが下落。カップル向き・ファミリー向きは2015年1月以降最高値で、平均家賃はそれぞれ8万1,912円、10万1,461円。アパートはファミリー向きが平均家賃8万3,859円となり3カ月連続で2015年1月以降最高値を更新しています。

京都市全景
京都府京都市のマンション平均家賃も大型ファミリー向きのみが下落。ファミリー向きマンションの平均家賃は12万2,769円で、3カ月連続で2015年1月以降最高値を更新しました。アパートは全面積帯で前年同月を上回っています。
大阪府大阪市はマンション・アパートともに全面積帯で前年同月を上回りました。シングル向き・カップル向きのマンションが2015年1月以降最高値となりました。シングル向き(平均家賃6万7,153円)は8カ月連続、カップル向き(同10万5,659円)は4カ月連続の更新です。
兵庫県神戸市もマンション・アパートともに全面積帯で前年同月を上回りました。シングル向きマンションが平均家賃6万0,921円で、6カ月連続で2015年1月以降最高値を更新。アパートのカップル向き・ファミリー向きも同様で、カップル向き(平均家賃7万1,953円)は2カ月連続、ファミリー向き(同8万9,980円)は4カ月連続の更新となっています。

広島市
広島県広島市の平均家賃はマンションの全面積帯で前年同月を下回りました。アパートの前年同月比はカップル向きのみが下落。シングル向きはマンション(平均家賃4万7,092円)、アパート(同4万8,901円)ともに4カ月連続の下落となります。
福岡県福岡市ではマンション・アパートともに全面積帯で前年同月を上回りました。マンションではシングル向き(平均家賃5万7,865円)が7カ月連続、カップル向き(同8万4,860円)が9カ月連続で2015年1月以降最高値となりました。アパートも全面積帯で2015年1月以降最高値に。平均家賃はシングル向き4万3,424円、カップル向き6万8,629円、ファミリー向き9万4,183円です。
大家さんが家賃動向で知っておくべきポイント

首都圏を中心に家賃が上昇傾向にあるとはいえ、光熱費・食費など生活費全般も上がっています。家賃の引き上げは「更新の2〜3カ月前に通知」し、入居者に検討の余地を与えることが大切です。トラブル回避のためにも、交渉の余地を残す柔軟な姿勢が重要です。
マンションと比べて、アパートの家賃は早い時期にピークを迎える傾向があります。1月・2月に集中して入居が決まることが多く、繁忙期を見越した価格戦略が必要です。
賃料動向は面積帯によっても変わります。例えば、東京23区ではカップル・ファミリー向けの需要が高まり続けています。自身の物件のターゲット層を再確認し、その層の家賃トレンドと照らし合わせて設定しましょう。
まとめ
今回の調査で、東京23区を中心に首都圏の家賃は高騰しており、過去10年来の最高値を記録しているエリア・面積帯も多くあることがわかりました。広島県広島市に下落傾向がみられるものの、全国的に家賃相場は間違いなく「上がっている」と言えるでしょう。
前月比で見たときにはマンションよりアパートの方が下がる傾向があり、アパートは家賃のピークが1月、2月にきているエリアが多めでした。このことから、家賃の安いアパートから決まっている可能性が考えられます。
相場に合わせて、自身が経営する物件の家賃値上げを検討している賃貸オーナーも多いかもしれません。しかし、家賃だけでなく光熱費・食費など生活費全般が上がっている昨今。入居者の生活が苦しい状況での無理な家賃値上げは、退去やトラブルにつながりかねません。
家賃値上げ時期には法的な決まりはありません。しかし、できれば更新の2~3カ月前には入居者に伝えて、充分な検討時間をもってもらうようにしましょう。また、一方的に値上げを告げるのではなく、入居者それぞれの事情を考慮し、場合によっては交渉に応じる姿勢をみせることも大切です。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2025年5月27日時点のものです。
取材・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。
年4回無料で賃貸経営情報誌「オーナーズ・スタイル」をお届け!
