ラーメン構造とは

そもそも「ラーメン」とは？

ラーメン構造の語源は、「Rahmen（ラーメン）」というドイツ語で「額縁」「枠」という意味です。垂直方向に立てた柱と、柱をつなぐ水平方向の梁で枠組みをつくって四角形の空間を構成することから、この名前で呼ばれるようになりました。

柱と梁の剛接合で形成

ラーメン構造では、柱と梁の接合部と溶接などで一体化させて強靭な枠を作ります。この接合方法を「剛接合」と呼びます。剛接合によって接合部の角度が固定され、回転しない状態となるため、斜め方向に補強するブレース（筋交い）などを入れなくても構造体の変形を防ぐことができます。

剛接合以外の固定方法に「ピン接合」があります。柱と梁などの部材同士をピンでとめるやり方で、剛接合よりもコストが安く済みます。しかし、耐震性を確保するために筋交いや耐力壁を入れる必要があり、開放的な大空間を作ることが難しくなります。

耐震性は高い？

鋼接合によって柱と梁が一体化したラーメン構造の建物は、地震に対して一定の耐震性を確保しているといえます。ただし、もう一つのメジャーな構造である「壁式構造」よりは横揺れに弱く、耐震性は劣ります。壁式構造については後の項で詳しく解説します。

防音性は？

柱と梁で建物を支えるラーメン構造では、壁を薄くすることもできます。そのため、使う壁材によっては、壁そのものが構造体である壁式構造よりも劣ることが多いといわれます。防音性を高めるならば、壁に防音効果のある壁材を採用するようにしましょう。

木造でもラーメン構造は採用できる

低層から高層建築物まで幅広く採用されているラーメン構造。鉄筋コンクリート（RC）造や鉄骨（S）造のマンションやビルなどによく用いられるため、木造のイメージは馴染みが薄いかもしれません。

しかし、構造用集成材の性能向上によって強度の確保と構造計算が可能になり、木造もラーメン構造で建てられるようになりました。代表的なものに（株）NCNが開発した「SE構法」があり、ラーメン構造の特徴である間取りの自由度と耐震性を両立する工法として注目を集めています。

ラーメン構造のメリットとデメリット

それでは、もう少し具体的にラーメン構造のメリット・デメリットを見ていきましょう。

メリット

柱と梁を構造体とするラーメン構造は、建物の強度を上げるための壁を建物内部に作る必要がありません。そのため、壁の位置に左右されない自由な間取りを造ることができます。

吹き抜けや間口の広いビルトインガレージ、オーバーハングなど、構造的に不安定になりやすいプランも耐震性を確保しながら実現できます。

将来リノベーションで間取りを変えたくなったときに、居室の内壁は自由に移動できることもラーメン構造のメリットです。そのため、大空間を仕切って個室を造ったり、逆に個室の壁を取り払って空間をつなげたりすることも比較的容易にできます。

壁に頼らずに建物の強度を保つラーメン構造では、広い空間や大きな窓を造ることができます。これまで木造では実現が難しかった開放的な大空間も、ラーメン構造であればかなえられます。

デメリット

ラーメン構造では、強度を保つために、建物を支える柱や梁を大きくする必要があります。それらが部屋に飛び出してしまうことがラーメン構造のデメリットです。部屋の角や天井側に出っ張りがあることで圧迫感を感じたり、家具やエアコンのレイアウトがしづらくなったりすることがあるでしょう。

ラーメン構造は、壁式構造やブレース構造などと比較すると柱や梁の部材が大きくなりがちです。そのため材料費や建築コストが高くなりやすいというデメリットがあります。

デメリットを解消する「逆梁工法」「逆梁アウトフレーム工法」

ラーメン構造のデメリットに「柱や梁が室内に飛び出す」ことがありますが、室内に柱や梁を出さない方法もあります。それが「逆梁工法」、「逆梁アウトフレーム工法」で、主にマンションで採用されています。

通常のラーメン構造では天井部分に梁が出っ張ってしまいますが、「逆梁工法」では上階の床側に出す形で床を配置します。下の階では天井がすっきりフラットに、上階では飛び出した梁の上に床をつくって二重床にしたり、収納や配管スペースにして隠したりします。

「逆梁アウトフレーム工法」は建物の四隅の柱を屋外にずらす方法です。室内には出っ張りがなくなり、屋外に出た梁はバルコニーの壁となります。バルコニー側の出っ張りがなくなるため、窓を天井までのハイサッシにすることもできます。

ラーメン構造以外の構造と特徴

では、ラーメン構造以外の構造について解説していきます。それぞれの構造にメリット・デメリットがあるため、ラーメン構造とも比較検討しながら、建物の規模や目的に適した構造を選ぶようにしましょう。

壁式構造

壁式構造とはその名の通り、柱ではなく壁と床で空間を構成する構造です。柱と梁といった枠組みで建物を支えるラーメン構造に対し、壁式構造は面で建物を支えます。

面で構成された壁式構造のメリットは、室内に凹凸が出ずすっきりとした室内空間がかなうことです。また、ラーメン構造と比べると地震に強く、壁そのものが構造体であるため、断熱性・防音性ともに高いことがメリットとして挙げられます。

壁式構造においては、建物を支える壁を取り払うことはできません。そのため大掛かりな間取り変更や設計の自由度はラーメン構造よりも低めです。また、構造体が大きい分重量が重く、高層の建物には向いていません。

建物の売買広告やポータルサイトでは、鉄骨造やRC造などの区別は明記されていますが、ラーメン構造か壁式構造かまでは記載されていないことが多いもの。そんな時に構造を見分ける簡単な方法として、間取図を確認することがあります。間取図の四隅に四角く塗りつぶされた柱があればラーメン構造です。

また、壁式構造のデメリットにもあった重量の重さから、壁式構造は5階建てまでのマンションでよく採用されます。そのため6階以上の建物はほぼラーメン構造です。

ブレース構造

ブレース構造は、軽量鉄骨の低層の賃貸マンションなどに採用されることの多い構造です。ブレースとは金属製の筋交いのことで、柱と梁の対角線上に斜めに設置します。左右両方の柱から、たすき掛けのようにX型に設置されます。

ブレース構造のメリットは、斜めに入れたブレースにより水平方向の力に強いことです。地震や強風で変形しづらいため、自動車や鉄道など建物以外にも採用されています。また、ボルトを締めるだけで接合できることから取り付けが比較的簡単で、工期を短縮できるのもメリットです。

ブレースが斜めに入るため、ブレースが入った部分の壁を撤去して大空間をつくるリノベーションなどは難しくなります。また、窓や開口部にはブレースを設けることができず、ラーメン構造よりは間取りの自由度が低いことがデメリットです。

トラス構造

トラス構造とは、三角形につなぎ合わせた部材で空間を構成する構造です。四角形は力を加えると平行四辺形に変形させることができますが、三角形は各辺の長さを保ったまま角度を変えることができません。この特性から、地震などでかかる応力に対して強く安定しているのがトラス構造の特徴です。

身近なところでは段ボールの断面がよく見るとトラス構造です。三角形の構造によって、中空になっていても丈夫さを保っています。

三角形のトラス構造は、四角形よりも細い部材で、強度を担保しつつ軽量化できる点がメリットです。そのため超大型建築などをつくることが可能で、東京タワーなどの塔、大型の橋などは近付くと、鉄骨が三角形に組まれていることがわかります。また、曲線も構成できるため、スタジアムのドーム型の屋根などトラス構造でつくられます。

トラス構造は他の構造よりも複雑なつくりで、組み立てに時間と費用がかかることがデメリットです。それぞれの部材を交錯させて組み立てるため接合部も複雑で、施工に高い技術が必要となります。

また、高さを出すことで各部材にかかる力を分散させる仕組みであることから、高さに制限のある一般の住宅などへの採用は難しくなります。

地震に一番強い構造は？

建物の形状や工法、地盤によっても耐震性は変わるため、一概にどれが一番と断言することはできません。

同じRC造で壁式構造とラーメン構造を比較すると、一般的には壁式構造の方が耐震性は高くなります。しかし、だからといってラーメン構造は耐震性が低いということはなく、実際に多くの高層マンションや高層ビルでも採用されています。

どんな工法・構造でもしっかり構造計算がされ、耐震基準を満たす建物であれば安心です。さらに、1〜3までに分けられた耐震等級を高くするためには、建物自体を軽くすること、耐力壁や金物を増やすこと、それらを各階にバランス良く配置することなどが挙げられます。

まとめ

ラーメン構造の特徴や他の構造との違い、ラーメン構造で建築した賃貸住宅の事例をご紹介しました。ラーメン構造は間取りの自由度が高く、建築後も時代やニーズに合わせてリノベーションがしやすいのがメリットです。大空間・大開口を実現しやすいので、1階に店舗などのテナントを入れるような建物にも適しています。

土地活用を検討している方は、活用の目的や将来の展望、かけられるコストなどに応じて、どの工法・構造がふさわしいかを検討しましょう。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2024年2月19日時点のものです。

取材・文／石垣 光子

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