インフレ経済の進行がどう影響する?2022年後半以降の不動産市況|幸田昌則氏が解説

その他
  • 市況・マーケット
公開日:2022年6月8日
更新日:2022年9月26日
インフレ経済の進行がどう影響する?2022年後半以降の不動産市況|幸田昌則氏が解説1

コロナ禍が続く中で、ロシアのウクライナ侵攻という新たな事態が加わり、日本経済にも大きな影響が出てきました。この2つの要因が契機となり、原油をはじめとして各種の商品価格が急騰し、日本でもインフレ経済への動きが鮮明となっています。今後、この波が不動産市況にも変化をもたらすことは必至だと言えます。

寄稿いただきました
インフレ経済の進行がどう影響する?2022年後半以降の不動産市況|幸田昌則氏が解説2

不動産市況アナリスト
幸田 昌則氏

福岡県出身。三大都市圏の住宅情報誌の創刊責任者を歴任。1989年11月に発表した「関西圏から不動産価格が大幅に下落する」は、バブル崩壊前の業界に波紋を呼び、予測の正確さを実証した。著書に「アフターコロナ時代の不動産の公式」(日本経済新聞出版)他、多数。

不動産はコロナ特需に一服感。インフレ経済への動きも

インフレ経済の進行がどう影響する?2022年後半以降の不動産市況|幸田昌則氏が解説2

今春の住宅需要期は、前年同期に比べ、住宅取引件数の減少が顕著でした。また地域差はあるものの、賃貸住宅市況も例年の賑わいはなかったようです。特に学生を主要な顧客とする地域では、オンラインでの授業形態が増えたことで需要が減少しました。

超低金利が続く中、コロナ禍による働き方・暮らし方の変化が住宅への関心をさらに高め、この2年間は住宅需要の増大による品不足、価格の急騰が常態化していました。

しかし、この間に個人所得の上昇は見られず、住宅価格の高騰に購買力が追いつけない状況になっています。特に東京圏の新築マンションは、パワーカップルや富裕層でなければ買えない水準にまで値上がりしました。

そこにウクライナでの戦争が始まり、欧米ではインフレが一段と進行、我が国でも月を追うごとに商品価格が上昇。最近では品不足と円安で、インフレの進行が著しい状況です。図表1で示されているように、急激な値上がりが続き、住宅の新規供給が難しくなっています。給湯器等の住設機器などが入手できず、デベロッパーや工務店の経営にも影響が出ています。

インフレ経済の進行がどう影響する?2022年後半以降の不動産市況|幸田昌則氏が解説2

また、中古住宅市場でも、売り物件が少なく、販売数の減少に拍車をかけました。ここに来て、少しずつ売り物件が増加に転じ始めていますが、価格はまだ高い水準で推移。市場全体で見れば、住宅も収益物件も、高額帯に売れ残りが多く、価格を「新価格」と語り、値下げしているものも出ています。

いずれにせよ、昨年までの大活況は見られなくなっています。住宅市場は転換期を迎えたのです。

「公示価格」は全国平均で2年ぶり上昇も、目立つ地域格差

インフレ経済の進行がどう影響する?2022年後半以降の不動産市況|幸田昌則氏が解説2

3月に公示価格が発表されました。この結果について、整理をしてみたいと思います。

(1)全国平均では、全用途・住宅地・商業地で2年ぶりに上昇しましたが、「地域格差」が拡大。駅近など「利便性」に優れた地域と、不便な地域の格差が拡大しています。目立ったものとしては、都市の再開発、新駅が出来た地域での上昇がありました。近年、地方都市でも駅前の再開発事業が増加傾向にあり、人口減少に向けた対応が急務になっています。

(2)コロナ禍前までインバウンドやオリンピックの需要で急騰した、各地の商業地価の下落幅は大きかった。大阪市のミナミなどで反落しました。

(3)コロナ禍で戸建て住宅の需要が高まり、住宅地、特に東京周辺や郊外で価格が上昇しました(図表2)。テレワークの普及で広さを求める動きが見られ、戸建て住宅の需要が急拡大。住宅事業用地の高騰もありました。

インフレ経済の進行がどう影響する?2022年後半以降の不動産市況|幸田昌則氏が解説2

(4)全国で、工業用地の価格上昇が目立ちました。外出自粛でインターネットショッピングの利用が拡大し、物流施設の需要も増加。それに対応した立地の用地を求める動きと、業績好調の企業が規模拡大を目指して、工場・倉庫用地の取得に積極的になっていて、各地の工業地価の上昇が顕著でした。

(5)人口減少が進んでいる地方圏では、長期にわたる下落が継続。人口が流入する都市とは対照的で、格差の拡大が続いています。

2022年後半はどうなる?今後の地価を予測

インフレ経済の進行がどう影響する?2022年後半以降の不動産市況|幸田昌則氏が解説2

この2年、コロナ禍による住宅特需が発生したが、今年は、ウクライナ侵攻があり、経済は長期にわたるデフレからインフレ経済へと過渡期を迎えつつあります。景気の二極化はさらに進行し、個人間の所得と資産の格差拡大も進行していくことが容易に想定されます。また、テレワークに代表される社会のデジタル化も必至となるでしょう。これらの経済・社会の構造的変化が、不動産価格に影響を与えていくことはいうまでもありません。

(1)大都市中心部、一等地の高騰が激しかった「地点」の価格調整が本格化。
アベノミクス政策と黒田日銀による金融緩和、超低金利政策による不動産バブルの象徴だったとも言える大都市圏一等地の商業地価の暴騰は、すでに2年前をピークに調整が進んでいますが(図表3)、今後もしばらくは、調整が続くことが予想されます。欧米のように金利上昇となれば、調整幅が大きくなる可能性もあります。

インフレ経済の進行がどう影響する?2022年後半以降の不動産市況|幸田昌則氏が解説2

(2)当分の間、大都市および周辺の住宅地価は強含みで推移。
個人、デベロッパーなどの土地需要は根強く、全国的に品不足の状態が続いて、価格についても高値圏で推移しています。ただ、個人の所得を考えると、さらなる高値は期待できなません。希少性の高い一握りの住宅地は、富裕層が想定以上の価格で取得する例もあり得るが、その数は少ないでしょう。

(3)地域・地点の価格格差は進行していく。
人口減少や人口の大都市集中、格差社会等の市場環境を考えると、土地だけではなく、住宅・店舗・オフィスなど、すべての不動産での格差拡大が続くことになるでしょう。利便性を希求する人がますます多くなっていくことは、諸般の状況から見て当然の帰結と言えます(図表4)。

インフレ経済の進行がどう影響する?2022年後半以降の不動産市況|幸田昌則氏が解説2

最後に、今後の地価動向に多大な影響を与えるのは、金融情勢であり、特に、金利です。欧米に続き日本でも金利が上昇すれば、建築コストの高騰もあることから、地価の調整幅が大きくなる可能性も否定できません。

コロナ禍やウクライナ問題、そしてインフレなど、先行きが見えない現在、足元の日々の市場動向に十分な注意を払う時に来ています。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2022年6月8日時点のものです。

あわせて読みたいオススメ記事

この記事をシェアする

関連する企業レポート

関連するセミナー・イベント

関連する記事