【最新】不動産市況アナリスト・幸田昌則氏が解説!不動産は「質」が 問われる時代を迎える
- 市況・マーケット
2024年2月22日、株式市場で日経平均株価が34年ぶりに史上最高値を更新しました。この動きは「失われた30年」と言われた日本経済から脱却する契機となるのか、注目されます。不動産市場は、すでにこれまでの異次元の金融緩和によって、都市圏の地価や新築マンションを中心に最高値に。今後の市況を不動産市況アナリストの幸田氏が展望します。
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福岡県出身。三大都市圏の住宅情報誌の創刊責任者を歴任。1989年11月に発表した「関西圏から不動産価格が大幅に下落する」は、バブル崩壊前の業界に波紋を呼び、予測の正確さを実証した。著書に「アフターコロナ時代の不動産の公式」(日本経済新聞出版)他、多数。3月に「不動産バブル 静かな崩壊」(日本経済新聞出版)を上梓。
企業・個人ともに二極化が進行
昨年から、大企業を中心に、賃上げの動きが強まっており、今春も、自動車メーカーなどでは大幅な賃上げが決定している。
また中小企業でも、人材確保のために賃上げに踏み切るところが増加している。しかし大半の企業では、原材料価格の上昇もあって業績は厳しく、二極化が見られる。
個人間でも、株価高騰の恩恵を受けている富裕層と、インフレの逆風を受けている低所得者層とに、所得・資産の二極化が一段と進行。その影響は、住宅・不動産市場にも及んでいる。
住宅需要の減速が鮮明に
欧米と同様に、日本でもインフレの進行が止まらず、物価の上昇が続いている。ウクライナ紛争は先が見えず、円安も続いている中、インフレの収束は難しく、長期化が予想される。
インフレは、住宅を供給する側(分譲会社・ハウスメーカーなど)と購入する側、それぞれに大きな影響をもたらしている。
供給側は、建築資材の高騰、人手不足によって、住宅価格が上昇して売れ行きが悪化、引き渡しの遅延も生じ、利益確保は容易ではなくなっている。今後「資金繰り」という言葉を聞くことが復活する可能性も出てくるだろう。
一方で購入希望者は、物価の値上がりで家計が圧迫され、家賃や住宅ローンの支払い能力が弱まっている。将来の生活不安から、住宅購入には慎重になっている。
また最近では金融機関の融資姿勢が厳しく、減額融資や融資不可のケースが増加している。図表①は、日銀が「現在の暮らし向き」について調査したものだが、悪化が顕著になっている。インフレの影響は、富裕層の家計には軽微だが、住宅購入の主要な顧客である若年層の家計には大きい。
いずれにせよ、住宅市場は緩やかに縮小し、割高な価格の物件は価格調整が始まる。これまでの需要拡大、価格上昇という局面が変化していくことになる。
投資・節税の需要は底堅く推移
住宅需要の減速とは一線を画して、不動産による投資・節税の需要は、大幅な金利の上昇や株価の暴落などがなければ、堅調な動きが続くものと思われる。
今年3月19日、日銀はマイナス金利政策の解除を決めた。これまでの「金利が無い時代」から、「金利が有る時代」への転換が想定される。ただ、金利が想定以上の大幅な引き上げでなければ、不動産投資への影響は軽微であると考えられる。
さて、不動産による投資・節税の底堅さの根拠については、2点を挙げてみたい。
①超低金利、金余りという環境が続く
②富裕層の拡大、法人の不動産への関心
現在、日本の個人・企業共に、潤沢な資金を持っている人(企業)が増加していて、その資金を株式・不動産の取得に向けている。超低金利下であれば、尚更、投資への関心は高まる。
また全国の年収1億円以上の人数の推移(図表②)を見ると、多少の増減はあるが、増加傾向は確かである。所得の増加に伴って、不動産・株式・現金も増やしている。
図表③は、東京都と関西の各府県別に示した年収1億円以上の人数だが、年収数億円以上といったスーパーリッチと称される所得が高い人も少なくない。
このような高所得者・資産家が、不動産の取得に強い関心を持って「買い増し」をしている。
また、単に「投資をして儲けたい」「収益(家賃)をより多く稼ぎたい」との動機からの購入ではなく、すでに必要なものはすべて手に入れているので「資産を増やすゲームをしたい」といったマインドの富裕層・経営者が増え、投資市場を活性化させている。
さらに、投資と並んで節税したいとの目的で節税効果のある実物資産の不動産を取得する人は多く富裕層に加え、企業も不動産取得に積極的である。個人の相続税対策を目的とした需要も、高齢化社会が進む中では、当分の間、続くことは間違いないものと思われる。
国名 | 最高税率 | 基礎控除 | 子などの控除 |
日本 | 55% | 3,000万円 | 600万円/人 |
アメリカ | 40% | 約17億円 | |
ドイツ | 30% | 8,150万円 | 6,520万円 |
イギリス | 40% | 6,175万円 | |
フランス | 45% | ― | 1,630万円/人 |
出典:各国データより※ドイツの基礎控除については配偶者に適用 ※1米ドル:150円、1ユーロ:163円、1ポンド:190円で計算
図表④は、相続税に関する国際比較だが、日本は各国に比べて厳しい。こうした厳しい条件下では、相続税対策の需要が拡大することはあっても、縮小することはない。特に、大都市の中心部に自宅を所有する人の悩みは深い。
不動産は「質」が問われる
今年は、インフレと金融情勢が変化する影響もあり、不動産全体としては、価格の調整が本格化していく可能性が高い。ただし立地条件などに「希少性」のある不動産については、高値圏での取引が続きそうだ。
なお、これから先、住宅・収益物件・土地など、全般的に「売り物件」が増加していくことから、購入者の選択肢が広がっていくことは必至であり、そうなれば「質」が問われることになる。
賃貸オフィス・貸店舗・賃貸住宅などの賃貸市場でも、立地・設備・広さ・賃料などが、今まで以上に重要視されるだろう。
※この記事は2024年3月20日時点の情報をもとに制作しています。
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