入居者・管理会社・入居者同士の管理トラブルQ&A
- 弁護士・司法書士
Q3:入居者の勤務先から、無断欠勤なので部屋を見て欲しいと依頼されたのですが、どうすべき?
A3:迷わず立ち入りを。警察に相談することも有効です。
入居者に健康上の異変の可能性があるとの情報が入った場合は、迷わずにすぐに賃借物件に立ち入って、入居者の状況を確認してください。人命救助の精神が第一優先です。私の経験からも、大家さんが入居者の異変に気づき救命したという事例はいくつもあります。
もっとも、「無断で入って、後から損害賠償請求をされても困る」という心配もあるでしょう。そこで緊急性にもよりますが、警察署に連絡し、警察官に物件に立ち入ってもらうことが適切な方法となりえます。訓練された警察官にお願いすることは、人命救助の面からも有効と言えるかもしれません。
なお、立ち入ったら、「夜逃げ」をした後だったなどと、入居者の健康上の問題とは別の新たな問題が発見される場合もあります。
Q4:入居者が破産してしまいました。どうすればいい?
A4:家主からの契約解除はできません。破産管財人に方針の確認を。
破産開始決定前の賃料債権等は、まずは敷金での充当を検討することになります。充当しきれなかった残債権は、破産手続きの中で配当を待つことになります。
なお、賃借人が破産した場合でも、自動的に契約は解除されません。破産管財人が、賃貸借契約を維持するか、契約を解除して退去するかを選択します。契約維持の場合、破産開始決定以後の賃料は、破産手続きに必要な支出として、他の債権に先立って支払ってもらえる債権となります。いずれにしても、破産管財人と連絡をとり、方針の確認が必要です。
全く別の話になりますが、入居者が逮捕されたということもあります。この場合は、被疑者(入居者)の弁護人と連絡をとり、方針を確認することが有効となります。
Q5:管理会社に不満があるので管理替えをしたいのですが、契約解除はできますか?
A5:解約できる可能性が高いですが、違約金を請求されることもあります。
民法上、大家さんはいつでも契約の解除ができると考えられます。信頼関係が損なわれた相手に管理業務を続けてもらっても無意味だからです。契約書で解約の制限が規定されていることもありますが、このような法の趣旨を参考に、具体的に解約時期を解釈していくことになるでしょう。管理会社に生じた損害の賠償を求められることもあるため、解約条項には特に注意して確認をすることが大切です。
管理替えの際に最も重要なのは、入居者に迷惑をかけないということです。賃料の振込先の変更、諸連絡先の変更など、入居者の混乱を招く可能性を生じますが、大家さん都合による変更のため、特に十分な配慮が求められます。そのためにも、引継ぎ期間を十分に確保し、万全の対応をしましょう。
※この記事内のデータ、数値などに関しては2015年9月7日時点の情報です。
イラスト/すぎやまえみこ