「2025年税制改正」の概要と賃貸オーナーが気を付けたいポイントを税理士が解説

2025年の税制改正は「103万円の壁」問題が話題となりましたが、この問題自体は個人事業主が主体の賃貸オーナーに対してはそれほど大きな影響を与えるものではありません。その他の改正点もこれまでと大きく変わることは少ないですが、今回の改正のポイントを税理士の野上さんに解説してもらいます。

複数の税理士法人で相続・不動産譲渡・事業承継に関わる案件を多数手がけたのち、2012年に税理士法人アンサーズ会計事務所を設立。
所得税の最低課税額に変更。2年限定の上乗せ措置も

まずは「103万円の壁」問題について解説しましょう。
これまで、配偶者や子ども等を税務上の扶養として計上するための収入の上限は、基礎控除の48万円と給与所得控除(最低限)の55万円をあわせた103万円でした。それが今回の改正で、基礎控除を58万円に、給与所得控除を65万円に引き上げ、123万円となりました。配偶者や子ども等の働き控えの解消につながるかもしれません。
なお、個人の所得税課税額は基礎控除に2年限定の上乗せ措置が取られています。年収200万円以下の場合、基礎控除がさらに37万円増え95万円となり、850万円まで段階的な加算があります。
基礎控除額の引き上げ
【基礎控除】48万円 → 58万円 へ
【給与所得控除】最低額55万円 → 65万円 へ
現行 | 改正後 | |
基礎控除(※) | 48万円 | 58万円 |
給与所得控除(最低額) | 55万円 | 65万円 |
計(扶養に入れる限度) | 103万円 | 123万円 |
※2年間の特例措置として、年収850万円以下の場合には37万円~5万円まで段階的な基礎控除の加算がある
9歳以上23歳未満の親族は扶養控除を受けられる収入の上限引き上げ
一方、19歳以上23歳未満の親族については、扶養控除を受けられる収入の上限が引き上がります。
特定扶養親族特別控除の創設
19歳以上23歳未満の親族の所得が85万円を超えても123万円までは段階的に縮小した控除を受けることができる
親族の合計所得金額 | 現行 | 改正後 |
48万円以下 | 63万円 | 63万円 |
85万円以下 | 0円 | |
85~90万円 || || |
61万円 || || |
|
115~120万円 | 6万円 | |
120~123万円 | 3万円 |
扶養の範囲に入る人がいる場合、これまでは特定扶養親族として親が所得から63万円の控除を受けましたが、その親族の所得が48万円を超えてしまうと、控除は一切受けられなくなっていました。
今回の改正では「特定親族特別控除」が創設され、親族の所得の上限を85万円に引き上げ、上限までは同額の控除を受けられるようになりました。さらに、上限の85万円を超えても段階的に縮小した控除を受けることができます。
2025年1月から収受日付印の押捺が廃止。引き続き「電子化」が重要なポイントに

国税庁では国税に関する手続きや業務のDX化を進めており、2025年1月から、申告書等の控えに収受日付印の押捺を行わないこととなりました。これにより税金の支払いの記録が残らなくなってしまうので、手書きで確定申告をしている人は注意が必要です。
電子申告をした場合には、送受信の履歴が残るので提出の証明になります。これを機に電子申告への切り替えを検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
その他資産税に関わることでは、住宅ローン控除の延長や、結婚・子育て資金一括贈与の非課税措置の2年間延長などが挙げられますが、大きな変更点はありません。ただし毎年制度改正は行われます。
どのような改正があっても安心して賃貸経営を行うことができるように、目先の節税対策にとらわれず、計画的で地道な方法で経営していくことを心がけてください。
※この記事内のデータ、数値などに関しては2025年6月1日時点の情報です。
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