その節税、本当に必要?目的から考える「良い節税」とは。税理士がわかりやすく解説します

相続/節税/保険
その他
この記事が気になる

【この記事が気になるとは】
会員様限定のサービスです。 会員の方は、「ログインする」そうでない方は、
会員登録して再度アクセスしてください。

ログインする ⁄  会員登録する
閉じる
公開日:2025年9月1日
更新日:2025年9月24日
その節税、本当に必要?目的から考える「良い節税」とは。税理士がわかりやすく解説します1

節税は賃貸オーナーにとって重要なテーマですが、目先の税金だけにとらわれると、かえって損をすることも。大切なのは、自分の経営目標に合った「良い節税」を見極めることです。税理士が実例を交えながら、節税の本質と正しい判断軸をわかりやすく解説します。

解説いただきました
その節税、本当に必要?目的から考える「良い節税」とは。税理士がわかりやすく解説します2

税理士法人アンサーズ会計事務所 代表税理士
野上 浩二郎

慶應義塾大学卒業後、大手税理士法人にて相続・事業承継・不動産に関わる税務等を中心とした業務に従事。相続・事業承継の豊富な実績を経て、2012年に税理士法人アンサーズ会計事務所を設立。資産家や中小企業オーナーの相続・承継の課題解決に尽力している。著書に「専門家のための事業承継の実務」(翔泳社)、「事業承継の失敗事例33」共著(東峰書房)等。

「節税」に惑わされないために

皆さんこんにちは。税理士の野上です。この税務講座で、大家さんに役立つ情報を提供していきたいと思います。税理士として日々、賃貸オーナーとお話ししている中で、やはり多くの方が関心を持たれているのが「節税」です。

「税金はできるだけ少ない方がいい……」、これは誰しも思うことでしょうし、そのお気持ちはよくわかります。しかし、実際には「節税」という言葉に引っ張られ過ぎて、かえって損をしているケースも少なくありません。

今回は、「良い節税」と「悪い節税」という視点から、考え方のヒントをお伝えしていきます。

自分のゴールを明確にすることの重要性

その節税、本当に必要?目的から考える「良い節税」とは。税理士がわかりやすく解説します2

賃貸オーナーの方々と接していてよく感じるのは、「節税」という言葉に非常に敏感だということです。節税への関心が高いだけに、「このスキームなら『節税』できますよ」と言われると、内容を十分に理解しないまま話に乗ってしまったり、将来的に問題となるような手法の高リスクな商品に手を出してしまったりするケースも見られます。

「節税」を追いかける前に、まずオーナーにやっていただきたい重要なことは、「自分はこの事業をどうしていきたいのか?」というゴール(目標)を明確にすることです。

事業を拡大して法人化を目指したい方もいれば、今の規模を維持しながら安定した収入を得たいという方、収益性を高めて子どもに引き継ぎたいという方もいます。この目標が定まっていないまま節税を追いかけると、方向性を誤る危険があるのです。事業が軌道に乗って利益が出てくると税金が増えますが、これは「儲かっている証拠」です。

「できるだけ税金を減らしたい」というお気持ちはわかりますが、そのために売上をあえて減らしたり、無理に経費を使おうとしたりするのは本末転倒です。

税率が100%を超えることはありません。利益を出せば出すほど、最終的には手元に残るお金は増えていくはずです。それなのに、節税を意識するあまり、「利益を出すのが悪いこと」と思ってしまう方もいます。節税にとらわれず、本来の目的を見失わないようにしてください。

目的に合った「節税」とは

では、「良い節税」とはどのようなものでしょうか?一言で言うならば「自分の目的に沿っている節税」です。

例えば、事業拡大を目指している方であれば、収益性の高い物件の新規購入や、空室対策のためのリフォーム、事務作業の効率化のためのIT設備導入などは、将来的な収益向上につながる前向きな経費です。結果として利益が圧縮され、節税にもつながります。

一方で、避けたいのは「節税のために高級車を購入した」といったケースです。車が趣味でどうしても乗りたい、といった明確な理由があるならともかく、「経費にできるから」という理由だけで購入してしまうのは、単なる無駄遣いに過ぎません。

節税目的の支出でも、それが「自分にとって意味のある出費」かどうかを判断することが重要です。

「節税」と「損得」は別物

ここで、あらためておさえておきたい点があります。それは、「節税=得すること」ではないということです。

例えば10万円の支出をして3万円の税金が減ったとしても、実際には7万円の持ち出しです。節税のために、本来1万円で買えるものを1万5000円で買っても「得」ではありません。

節税とは「いかに賢くお金を使って、結果として手元に多く残すか」という発想が基本です。目先の税金にとらわれて無駄な支出を増やしては、意味がないどころかマイナスになってしまいます。

不動産投資の本質を忘れずに

その節税、本当に必要?目的から考える「良い節税」とは。税理士がわかりやすく解説します2

そして、忘れてはならないのは、不動産賃貸業は「投資」であるということです。利益を出すことが目的のはずなのに、「節税のために赤字にしたい」と考えるのは、本末転倒です。

例えば、中古物件を購入する際、建物が割高であれば減価償却費を多く計上できるため節税にはつながります。しかし、その物件が投資対象として優良かどうか、は全く別の問題です。

節税効果だけを見て投資判断をすると、「節税はできたけれど儲からなかった」という結果になりかねません。必ず「投資として成り立つか」を考えることが基本です。

税目ごとの相互関係に注意

税金には様々な種類があります。所得税、法人税、消費税、相続税……。それぞれの税金は独立しているように見えて、実は密接に関係しています。

例えば、所得税を下げようとして消費税が増えてしまった、法人税を減らすための対策が将来の相続税負担を増やす結果になった、というように、一つの税金だけを見て判断すると思わぬ形で「別の税負担」が増えることがあります。

また、税金だけでなく、将来に備えて財産の分けやすさにも目を向ける必要があります。節税対策をしたことで不動産の持分が複雑になり、結果的に遺産分割が難しくなってしまうケースもあります。

節税は、あくまで「目的を達成するための手段」にすぎません。目の前の税額を減らすことだけにフォーカスせず、「その対策が自分のゴールに合っているか」を常に意識していただけると良いと思います。ご自身の目標やライフスタイルに合った選択ができるよう、税務に関する知識を深めていきましょう。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2025年9月1日時点のものです。

イラスト/さかちさと

この記事をシェアする

関連する企業レポート

関連するセミナー・イベント

関連する記事