改正された「住宅セーフティネット法」が2025年10月より施行。65歳以下の部屋探しの現状と今後の予測

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公開日:2025年9月16日
更新日:2025年9月16日
改正された「住宅セーフティネット法」が2025年10月より施行。65歳以下の部屋探しの現状と今後の予測1

高齢者の部屋探しは、収入や健康面への不安から入居を断られるケースも多く、課題が深刻化しています。2025年10月には「住宅セーフティネット法」が改正され、入居支援や登録住宅の拡充が進む予定です。(株)R65が実施した「高齢者の住宅難民問題に関する実態調査(2025年)」の結果をもとに、制度改正の背景と今後の課題を読み解きます。

高齢者の部屋探し、直近1年で6割が「苦労した」と回答

同調査では、65歳以降の部屋探しにおいて、「とても苦労した」(15.6%)、「やや苦労した」(27.2%)を合わせた42.8%が“苦労した”と回答。

改正された「住宅セーフティネット法」が2025年10月より施行。65歳以下の部屋探しの現状と今後の予測2

画像引用元:「高齢者の住宅難民問題に関する実態調査(2025年)」|(株)R65

さらに時期別で見ると、直近1年以内に探した人では「とても苦労した」(30.6%)、「やや苦労した」(30.6%)を合わせると61.2%となり、6年以上前(37.8%)に比べて23.4%も上昇。部屋探しに苦労する人の数は年々増加しているとの傾向が浮き彫りになりました。

年齢で入居拒否、3人に1人が経験。最多は1〜2年前

年齢を理由に不動産会社に入居を断られたことがあるか聞いたところ、「断られなかった」69.6%に対し、1回以上断られたと回答したのは30.4%。

改正された「住宅セーフティネット法」が2025年10月より施行。65歳以下の部屋探しの現状と今後の予測2

画像引用元:「高齢者の住宅難民問題に関する実態調査(2025年)」|(株)R65

時期別にみると、「1~2年前」(36.7%)が最も多く、さらに「5回以上断られた経験のある方」は22.4%となりました。現行の「住宅セーフティネット法」などにより、高齢者の賃貸住宅への入居環境は改善されていると思われますが、その実態は、苦労や入居拒否の割合は増加の傾向にあると言えるでしょう。

候補物件が少ない、費用が高い…高齢者の部屋探しの壁

先の質問で「部屋探しに苦労した」と回答した人を対象に、部屋探しから入居までに感じた具体的な苦労を調査したところ、「候補となる物件情報が少なかった」(52.8%)が最多の結果に。さらに「通常よりも経済的負担(初期費用など)が大きかった」(31.3%)が続きました。

改正された「住宅セーフティネット法」が2025年10月より施行。65歳以下の部屋探しの現状と今後の予測2

画像引用元:「高齢者の住宅難民問題に関する実態調査(2025年)」|(株)R65

理由としては、「高齢者は連帯保証人が立てづらい」ということも考えられます。住宅セーフティネット法の後押しがある一方で、実際には「そうした物件がまだ少ない」という現状から、「高齢者にとっての借りづらさ」が実感となって表れている可能性があります。さらには物価高騰による経済的負担の高まりから発生する家賃の高騰なども考えられます。

内見満足度は二極化。「非常に満足」と「非常に不満」が増加

内見の候補として不動産会社から提案された物件への満足度ですが、全体で「どちらとも言えない」(42.8%)が最も多い回答に。さらに「やや満足」(34.0%)、「非常に満足」(8.2%)を合わせると42.2%、反対に「やや不満」8.4%、「非常に不満」6.6%の合計は15.0%と、約2倍の差がつく結果となりました。

改正された「住宅セーフティネット法」が2025年10月より施行。65歳以下の部屋探しの現状と今後の予測2

画像引用元:「高齢者の住宅難民問題に関する実態調査(2025年)」|(株)R65

これを時期別にみると、直近1年未満は「非常に満足」(16.3%)、「非常に不満」(10.2%)と、ともに最多となるなど、物件提案への評価は二極化が進みつつあるともいえそうです。

住み替え理由は「広さ」と「家賃」。立ち退きも影響

部屋探しを始めた理由(複数回答)の内、全体の1位が「適切な広さの間取りに住み替えるため」(36.2%)。また「家賃の低い物件に住み替えるため」(23.6%)は2位にランキングされる結果となり、物価の高騰や家賃の上昇がじわじわと影響してきた現状が見てとれます。

改正された「住宅セーフティネット法」が2025年10月より施行。65歳以下の部屋探しの現状と今後の予測2

画像引用元:「高齢者の住宅難民問題に関する実態調査(2025年)」|(株)R65

時期別において有意の差はとくに見られませんでしたが、気になる「大家や不動産会社から立ち退きを促されたため」(8.2%)に関しては、3〜5年前から増え始め、1〜2年前が16.4%で最多。1年未満は6.2%となっており、住宅セーフティネット法の後押しがあったことが想像できます。

「住宅セーフティネット法」の改正で何が変わる?

2025年10月1日施行予定の改正「住宅セーフティネット法」では、住宅確保要配慮者(高齢者・障害者・低所得者等)が住まいを見つけやすく、そして安心して暮らせるよう、現行の制度が強化・拡充されます。

改正された「住宅セーフティネット法」が2025年10月より施行。65歳以下の部屋探しの現状と今後の予測2

画像引用元:国土交通省「改正法 概要資料(4枚)」より引用

例えば、賃貸住宅のオーナーが強く危惧していたであろう「残置物の処理対応」や「家賃債務保証」などに対して、居住支援法人の連携強化や認定保証業者制度を創設することで、貸主の不安や負担を軽減。さらに借主においても安否確認やICT活用、福祉サービスへの接続機能を持つ「居住サポート住宅」を新設し、住宅と生活の両面において支援の強化を図ります。

このように今回の改正では「貸主側の不安を軽減する仕組み」(残置物の処理対応・家賃債務保証など)と、「借主側の入居・生活支援の拡充」を大きな軸とし、単に住まいの提供だけでなく、住み続けられること・暮らす環境を支えることが重視されています。現行制度の課題を解決することで、制度自体の実効性がグッと上がることが期待されています。

まとめ

現行の「住宅セーフティネット法」をはじめ、さまざまな制度整備や支援が行われているにも関わらず、高齢者の賃貸住宅への入居環境は、改善するどころか悪化している感じさえあるのが現状です。

1971年から1974年の第二次ベビーブームの間に生まれた「団塊ジュニア世代」が65歳以上となる2040年以降、「持ち家率の低下」と合わせ、賃貸住宅の借主の多くを高齢者が占める未来はほぼ確実にやってきます。

改正された「住宅セーフティネット法」が2025年10月より施行。65歳以下の部屋探しの現状と今後の予測2

今回取り上げた「高齢者の住宅問題」は賃貸オーナーにとっても避けては通れない問題です。「高齢者だから」と入居に難色を示すだけで、何の対策も講じなければ、多くの空室を抱えてしまうリスクが高まります。

そのためにも今回改正される「住宅セーフティネット法」を上手に活用し、来るべき時代への準備を怠るべきではありません。今回の改正は、住宅確保要配慮者を受け入れる際のオーナー側に生じるリスクを軽減できる支援策が多く、十分検討に値します。

さらに居住支援法人による安否確認、福祉サービスへの接続が強化されることで、入居後の不安や負担の軽減も期待されています。加えて、国や自治体によるリフォーム費用補助等により経済的な負担を抑えつつ、物件価値の向上や空室対策にもつなげられます。

賃貸オーナーにとっても、今後増えていくであろう新たな需要層を取り込む千載一遇のチャンスにもなり得るのではないでしょうか。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2025年9月16日時点のものです。

取材・文/御坂 真琴

ライタープロフィール
御坂 真琴(みさか・まこと)
情報誌制作会社に25年勤務。新築、土地活用、リフォームなど、住宅分野に関わるプリプレス工程の制作進行から誌面制作のディレクター・ライターを経てフリーランスに。ハウスメーカーから地場の工務店、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、販売促進ツールなどの制作を手がける。

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