賃貸入居者で災害に備えている人は少数派?不動産のプロが教える賃貸住宅で備えておくべきものとは

賃貸住宅の部屋探しにおいて、地震が起こった時のことを想定して物件情報をチェックしている人はどれくらいいるのでしょうか?アットホームが全国の加盟店に行った調査『不動産のプロが選ぶ!「賃貸住宅でも手軽にできる地震への備え」ランキング』から賃貸住宅における防災の実情を見てみましょう。
賃貸入居者の3割が地震への備え「特に何もしていない」
現在、賃貸物件に住んでいる人に「実施している地震への備え」を複数回答で聞いたところ、上位(10%以上)は次のような結果となりました。
飲料水・食料の備蓄 | 46.6% |
避難場所・経路の確認 | 25.6% |
地震を想定した家具の配置 | 16.8% |
枕元に懐中電灯を置く | 14.4% |
身近なもので家具を固定する※1 | 11.1% |
器具で家具を固定する※2 | 10.9% |
管理会社の連絡先をメモしておく | 10.3% |
※1:身近なもの=段ボールやすべり止めシートなど
※2:器具=突っ張りポールなど
水や食料の備蓄は半分近くの人が実施している一方で、「特に何もしていない」と回答した人が31.5%。賃貸住宅に住む人の3割は、地震への備えをしていないことが分かりました。
不動産のプロは「備蓄は最低でも1週間分以上」とアドバイス
それでは不動産会社からアドバイスのあった「賃貸住宅でも手軽にできる地震への備え」はどのようなものがあるのでしょうか?上位は以下の通りです。
1位 | 飲料水・食料の備蓄 | 70.8% |
2位 | 避難場所・経路の確認 | 53.6% |
2位 | 非常用持出袋の準備 | 53.6% |
4位 | 器具で家具を固定する | 46.1% |
5位 | 身近なもので家具を固定する | 37.8% |
6位 | 地震を想定した家具の配置 | 36.9% |
7位 | 家具の引き出しや扉を器具で固定する | 35.3% |
8位 | お風呂に水をためておく | 32.0% |
9位 | 避難用の靴を手近に準備しておく | 28.9% |
10位 | ご近所との情報連携 | 24.8% |

賃貸住宅の入居者が実施している備えと同じく、手軽にできる備え第1位は「飲料水・食料の備蓄」で、7割を超えました。不動産会社からは「水道が止まることを想定し、水をペットボトルかタンクに入れておくと良い」、「最低でも1週間分以上用意しておいてほしい」といったコメントも。
2位は「避難場所・経路の確認」と「非常用持出袋の準備」が同率。「避難場所・経路の確認」については「速やかに避難できるよう避難経路を日ごろから確認しておく」などのコメントが多数。
「非常用持出袋の準備」については、「外に近い場所に非常袋や水を蓄えておくといざという時に取り出しやすい」というコメントがありました。いざ避難する時に、取り出すのに時間がかかってしまう押入れやクローゼットではなく、玄関の収納スペース等にしまうのがおすすめだそうです。
お部屋探しの時にチェックすべき情報1位は「ハザードマップ」
それでは、賃貸住宅を探している人が地震に備えるためにチェックしておくべき物件情報はどういったものなのでしょうか?結果は以下のようになりました。
1位 | ハザードマップ(災害予測範囲、避難所など) | 59.4% |
2位 | 築年数 | 49.2% |
2位 | 建物構造(RC造、SRC造、木造など) | 46.1% |
4位 | 耐震構造/免震構造/制震構造 | 34.7% |
5位 | 近隣の避難場所 | 29.5% |
6位 | 避難経路 | 26.1% |
7位 | 過去の被災歴 | 21.9% |
8位 | 地盤情報 | 19.6% |
9位 | 外壁やフェンス(亀裂や劣化など) | 17.8% |
10位 | 階数 | 17.5% |

1位は「ハザードマップ(災害予測範囲、避難所など)」で6割近くになりました。不動産会社からは「ハザードマップで物件の場所を確認しながら住まいを探すのが良い」というコメントのほか「災害時、インターネットがつながりにくくなる可能性もあるため、ハザードマップを印刷等してすぐに確認できるようにしておく」というアドバイスがありました。
2位の「築年数」については、「旧耐震基準か新耐震基準かを確認する」というコメントが。1981(昭和56)年6月1日以降竣工の建物は、それ以前(旧耐震基準)に建てられた建物より厳しい耐震基準(新耐震基準)で建築されているためです。もちろん旧耐震基準の建物でも耐震補強等がしっかり施されていればその限りではありませんが、ひとつの目安として示されています。
3位・4位は構造についての項目がランクインしており、「免震構造または耐震構造限定で探されている方が増えてきている」との声がありました。
特に自主管理の大家さんは、これらの情報が一目でわかるようにまとめておくと入居者の参考になるので、ぜひこのランキングを参考にしてみてください。
入居者が地震に備えるためにあると安心な設備は?作動するかも要チェック
最後に、お部屋探しをするうえで、地震に備えるために物件に設置されていると安心な設備を聞いています。
1位 | 火災報知器 | 51.4% |
2位 | ガス漏れ検知・警報器 | 44.0% |
2位 | 消火設備 | 43.4% |
4位 | 避難誘導灯 | 35.3% |
5位 | 飛散防止ガラス | 29.8% |
6位 | 感震ブレーカー※ | 29.6% |
7位 | 避難器具(脱出シューターなど) | 25.4% |
8位 | 蓄電池 | 19.2% |
9位 | 防火扉 | 13.7% |
10位 | 貯水タンク | 12.5% |

1位の「火災報知器」は賃貸物件でも設置が義務化されています。火災報知器の設置後約10年が電池交換、もしくは本体交換の目安となります。いざという時にきちんと作動してくれるように、定期的に作動確認を行うようにしましょう。
2位の「ガス漏れ検知・警報器」は、3戸以上の集合住宅でプロパンガスを使用している場合は設置義務が定められています。都市ガスの場合、設置義務はありませんが、設置することでガス漏れの早期発見につながります。
3位「消火設備」について、代表的なものは消火器やスプリンクラーなどです。消化器には有効期限が記載されており、賃貸住宅の内見時に期限が切れていないかチェックする人も多いようです。期限が切れていると「管理が行き届いていない物件」と判断されてしまいます。
まとめ
賃貸住宅に入居している人の約3割は、特に地震への備えをしていないことがアンケートによって明らかになりました。しかし、「自己責任」ではなく、入居者の生命を守るための配慮も、大家さんに必要なものとなりつつあります。
防災意識の高い大家さんの中には、入居者分の水や食料も備蓄しておいたり、非常用持出袋を各部屋に備品として置いている方もいらっしゃいます。これらは義務ではありませんが、入居者にとっては大きな安心につながり、物件の差別化にもなります。
自主管理の大家さんも管理会社にお任せしている大家さんも、いま一度、もしもの時の準備は万全かどうか、自らの物件をチェックしてみてはいかがでしょうか。
※この記事内の情報は2023年9月27日時点のものです。
取材・文/石垣 光子