賃貸住宅は防災で選ばれる時代に!?不動産のプロが教える大家さんが知っておきたい災害対策
賃貸住宅の部屋探しにおいて、地震が起こった時のことを想定して物件情報をチェックしている人が増えています。入居者の防災意識が高まり、賃貸住宅でも今や災害対策は欠かせません。大家さんはどのような対策をすればいいのでしょうか。賃貸住宅の防災管理に詳しい荻野さんにお話を伺いました。
(株)イチイ代表取締役。(公財)日本賃貸住宅管理協会 副会長。大規模災害に備え、賃貸住宅管理業者が対応すべきことを集約した「多角的視点で学ぶ防災マニュアル」(日管協)を編纂。
入居者の住まい選びで“防災力”がポイントに
災害大国と言われる日本。特に近年は地震に限らず、大雨による水害など、様々な自然災害が頻発していることもあり、入居者の意識にも大きな変化が見えます。
(株)いえらぶGROUPがエンドユーザー・不動産会社を対象に行った「ハザードマップに関する調査2024」によると、「昨年より防災意識が高まった」というユーザーは約85%に。
また、同調査内で「昨年よりハザードマップに関する問い合わせや質問が増えましたか?」という不動産会社への問いに対し、売買仲介の81.7%、賃貸仲介の76.4%で問い合わせが増加したと回答。
その他の調査でも、魅力を感じるコンセプト賃貸住宅のトップに「防災賃貸住宅」が躍り出るなど※、入居者を獲得するためには、物件の防災力アップが必要になってきています。
【登録はすべて無料】オーナーズ・スタイルでは様々なメディアで情報を発信中!
お役立ち情報を 週2回無料で配信中! |
約100ページの情報誌を 年4回無料でお届け! |
||
オーナーズ・スタイル お役立ちメルマガ
|
賃貸経営情報誌 オーナーズ・スタイル
|
共用部の状況は要確認。立地の水害リスクも確認を
では、災害に備えて大家さんはどう対策すべきなのでしょうか。
「まずは耐震性を確認してください。特に1981年以前に建てられた旧耐震基準の木造住宅は倒壊リスクが高く、2016年の熊本地震や今年1月の能登半島地震でも被害が甚大でした。該当する場合は耐震補強を検討しましょう」と荻野さんは語ります。
消火器や火災報知器の設置・点検をはじめ、避難経路となる共用部に私物を置かないことも大切です。
外部設備の倒壊防止対策も忘れずに。特に気をつけたいのが、2011年の東日本大震災や熊本地震でも多発した貯湯式温水器の倒壊です。アンカーボルトを用いて脚部を基礎に固定しておきましょう。
また、ブロック塀も要注意。耐震化されていなければ、大地震の際、重大な事故を起こす凶器となりかねないので、基礎や劣化状態などは要確認です。
水害対策は立地に目を向けましょう。
「まず、どれくらい水害に遭いやすい場所なのかを知ることが重要。ハザードマップで物件所在地の水害リスクを確認し、必要な対策を取りましょう」(荻野さん)
自然災害は不可抗力ですが、賃貸物件が倒壊・損壊してしまえば、賃貸経営が継続できなくなるおそれがあります。地震保険への加入や、保険内容の確認をしておきましょう。
賃貸住宅でやっておくべき災害対策チェックリスト
□ 耐震基準を満たしている
□ 必要な改修が行われている
□ 消火器や火災報知器の設置確認・動作点検
□ 避難経路の確保
□ 非常用発電機や非常灯の設置
□ 受水槽・温水器の設置状態
←固定していないと漏水の恐れが!
屋外の受水槽や温水器が倒壊して漏水すると被害は甚大。アンカーボルトでコンクリート基礎に固定しておきましょう。
□ ハザードマップで物件の立地を確認
□ 防水工事の実施や排水設備の点検
□ 地震保険への加入
□ 保険内容の確認・更新
対策を怠ってしまった場合に起こりうるリスク
避難経路や防災設備の整備が不十分な場合、地震や火災時に入居者が負傷するリスクが発生。また、避難経路が確保されていない場合、入居者が迅速に避難できず、命の危険にさらされる可能性も高まります。
耐震補強が不十分な建物は地震で大きな損傷を受けて賃貸経営を継続できなくなる可能性も。入居者の所有物や建物内の設備が被害を受けたときには、補償や修理費を負担しなければいけなくなる場合もあります。
災害対策の不備が原因で入居者や第三者が損害を受けた場合、賠償請求を受ける可能性があります。必要な災害対策を実施していないと、保険会社からの保険金支払いが制限される場合もあるので要注意です。
災害対策が不十分で、入居者が安全に住める環境が整っていない物件は、賃貸需要が減少し、空室率が高まるおそれも。それにより市場価値が低下しかねず、売却する場合にも悪い影響を及ぼしてしまう可能性もあります。
地震火災の原因で多いのが「通電火災」。停電からの復旧時に発生する火災です。揺れを感知すると電気を自動で遮断する「感震ブレーカー」で防ぐことができます。補助金が出る自治体もあるので確認してみてください。
賃貸住宅で備えておくと便利!防災アイテムリスト
□ 消火器
□ 火災報知器・煙感知器
□ 非常灯・懐中電灯
□ 非常用バッテリー・モバイル充電器
□ 応急手当用品
□ 防災ラジオ
□ 非常食、飲料水
□ 簡易トイレ・トイレバッグ
□ アルミシート
□ 避難用バッグ(重要書類、現金、衣類、個人用薬品などをまとめるもの)
□ 多機能工具(マルチツール)
共助し合える環境づくりを緊急連絡先の確認も大切
災害対策は入居者の意識付けも重要なポイントとなります。できれば入居者向けに防災訓練を実施できればベストですが、それが難しい場合でも災害時にコミュニティとして共助しあえる最低限の環境づくりはしておきたいところ。
緊急時は安否確認等の問い合わせも殺到します。今年1月に発生した能登半島地震では、大手管理会社のコールセンターが問い合わせでパンクしたといいます。こうした事態に大家さんがすべて対応するのは難しいため、例えば入居者とのグループLINEを作り、緊急時の安否確認に使用するなどの対策を、前もって取っておくことをおすすめします。
また、契約時の重要事項説明の際には水害ハザードマップの説明とともに、災害時の避難場所も知らせておきましょう。
加えて、契約更新時には緊急連絡先の再確認を必ず行ってください。先述した大家さんが用意しておくべき防災アイテムも参考にして、いざというときにも安心の賃貸物件にしておきましょう。
※この記事内の情報は2024年9月5日時点のものです。
取材・文/藤谷 スミカ
ライタープロフィール
藤谷 スミカ(ふじたに・すみか)
同志社大学文学部英文学科卒。広告制作プロダクション、情報誌出版社を経て、フリーランスのコピーライターとして30余年。ハウスメーカーの実例取材記事、注文住宅、リフォーム、土地活用に関する情報誌の記事、企業PR誌の著名人インタビュー記事、対談記事、企業単行本の執筆等を手がける。
【登録はすべて無料】オーナーズ・スタイルでは様々なメディアで情報を発信中!
お役立ち情報を 週2回無料で配信中! |
約100ページの情報誌を 年4回無料でお届け! |
||
オーナーズ・スタイル お役立ちメルマガ
|
賃貸経営情報誌 オーナーズ・スタイル
|