断熱等級とは?2025年から賃貸住宅でも断熱等級4の適合が義務化

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公開日:2024年6月12日
更新日:2024年6月12日
断熱等級とは?2025年から賃貸住宅でも断熱等級4の適合が義務化1

2050年までのカーボンニュートラルの実現に向けて、2022年に「建築物省エネ法」が改正、省エネ住宅の義務化が決まりました。賃貸住宅も例外ではなく、2025年には断熱等級4の適合が義務化されます。主にコスト面で賃貸経営に大きな影響があると思われる省エネ基準の指標や、断熱等級についてまとめました。

断熱等級とは

断熱等級は「断熱等性能等級」が正式名称で、国土交通省が制定した「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」において設けられた基準です。

断熱=熱の伝わりにくさを示す数値で、断熱等級1~7の数字が大きいほど断熱性が高いことを表します。断熱性能が高いと家が魔法瓶のように熱を遮断し、夏は外の暑さが、冬は寒さが家の中に伝わりにくくなります。

断熱性は「外皮性能」「外皮基準」という言葉で表されることもあります。外皮とは、住宅の内外の境界になる部分、つまり窓や壁、床などのことです。

断熱性能を上げる必要性は?

断熱等級とは?2025年から賃貸住宅でも断熱等級4の適合が義務化2

断熱等級が高いほど断熱性能が高い=外の寒さ・暑さが伝わりにくいため、夏も冬も少しの冷暖房で室内が快適に保たれます。これは、住む人の健康や光熱費の節約につながります。

さらに、エネルギー消費の3割を占めると言われている建築物分野のなかでも、家庭でのエネルギー消費を抑えるために、住宅の断熱性アップは国策としてもとても重要なのです。

それぞれの断熱等級を満たすには、建物の建築時にふさわしい性能の断熱材や開口部(窓やドアなど)の建材を選ぶ必要があります。

2025年から賃貸住宅でも断熱等級4の適合が義務化

2022年6月に公布された「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」により、2025年4月1日から原則すべての住宅や非住宅の省エネ基準への適合が義務化されます。

これまでは個人の住宅や延床面積300㎡未満のアパートなどは適用外でした。しかし、2025年4月以降は用途や規模に関係なく、すべての新築建築物に適合義務が課せられます。もちろん賃貸住宅も例外ではありません。

断熱等級とは?2025年から賃貸住宅でも断熱等級4の適合が義務化2

出典:令和4年度改正建築物省エネ法の概要|国土交通省

現在の省エネ基準は、2016(平成28)年に定められた水準で、「断熱等級4」に適合することを指しており、あわせて一次エネルギー消費性能についての基準も設けられています。一次エネルギー消費性能とは、住宅が1年間に消費する冷暖房や給湯などのエネルギー消費をどれだけ少なくできるかを示した指標です。

省エネ基準は段階的に引き上げられ、1992(平成4)年までは等級3が、1980(昭和55)年までは等級2と同等の性能が省エネ基準でした。

また、2022年までは断熱等級は4が最高値でしたが、同年に等級5〜7が設けられ、等級4は実質、省エネ基準の最低等級となりました。2030年には省エネ基準の水準がさらに引き上げられ、断熱等級5が最低等級になる予定です。

住宅性能表示制度とは
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出典:令和4年度改正建築物省エネ法の概要|国土交通省

住宅性能表示制度は、2000(平成12)年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」にもとづき、運用が始まった制度です。

住宅の安全性や省エネ性について、国土交通大臣が定めた日本住宅性能表示基準に則って評価し、住宅性能評価書として交付します。

2024年4月からは「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」がスタート。建物の販売・賃貸時に、省エネ性能の表示が求められることになりました。

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断熱性能を表すUA値・ηAC値とは?

断熱性能は「建物からの熱の逃げやすさ」と「建物への日射熱の入りやすさ」の2つの点から建物の断熱性を測る指標です。

「建物からの熱の逃げやすさ」は外皮平均熱貫流率(UA値)、「建物への日射熱の入りやすさ」は冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)で表します。どちらも数値が小さいほど性能が高いことを示します。

UA値

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出典:建築物省エネ法に基づく省エネ性能表示制度事業者向け概要資料|国土交通省

UA値は「ユーエー値」と読み、建物からの熱の逃げる大きさを示す指標です。屋根や天井・外壁・窓・床から逃げる熱の合計を外皮(住宅の内外の境界になる部分)全体の面積で割ったもので、外皮平均熱貫流率といいます。

ηAC値

断熱等級とは?2025年から賃貸住宅でも断熱等級4の適合が義務化2

出典:建築物省エネ法に基づく省エネ性能表示制度事業者向け概要資料|国土交通省

ηAC値は「イータエーシー値」と読みます。冷房期の平均日射熱取得率ともいい、屋根や天井・外壁・窓から入ってくる日射熱の合計を外皮全体の面積で割ったものです。

断熱等級の種類と特徴

断熱性能はUA値とηAC値で示され、性能表示ラベルでは低い方の基準を表示します。例えばUA値の等級が5、ηAC値の等級が4の場合、等級4となります。

断熱等級とは?2025年から賃貸住宅でも断熱等級4の適合が義務化2

また、日本の国土は南北に細長く、地域によって気候条件が大きく変わることから、全国を8つの地域にわけて、地域ごとにUA値とηAC値の等級の基準値を定めています。

地域区分は市町村別に細かく定められており、詳しくは国土交通省のホームページに掲載されています。東京23区や大阪市は6地域にあたります。

断熱等級の各概要まとめ

断熱等級とは?2025年から賃貸住宅でも断熱等級4の適合が義務化2

出典:建築物省エネ法に基づく省エネ性能表示制度事業者向け概要資料|国土交通省

断熱等級3

断熱等級3は1992(平成4)年に定められた省エネ基準と同等で、東京23区ではUA値1.54 W/(㎡・K)、ηAC 値3.8が該当します。一定レベルの省エネ性能を持つとされますが、2025年4月からは省エネ基準に不適合となります。

断熱等級4

断熱等級4は1999(平成11)年に制定された「次世代省エネ基準」と呼ばれる水準です。壁や天井だけでなく、開口部(窓や玄関ドア)などにも断熱が必要です。東京23区ではUA値0.87 W/(㎡・K)、ηAC 値2.8が相当します。

断熱等級5

断熱等級5は2022(令和4)年4月に定められた基準で、断熱等性能等級より上位の「ZEH(ゼッチ)基準」相当にあたります。ZEHは「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略で、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した住宅を指します。

断熱等級6

断熱等級6は2022(令和4)年10月に定められました。「HEAT20」G2と同等とされ、等級4よりも冷暖房にかかる一次エネルギー消費量を30%削減できるレベルの断熱性能です。

「HEAT20」とは「(一社)20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」の略で、同団体が設けた建築物の省エネルギー性能と室温を指標とした性能水準です。ZEH水準よりも厳しい、G1・G2・G3の3段階の水準を定めています。

断熱等級7

断熱等級7は、等級6と同じ2022(令和4)年10月に定められ、「HEAT20」G3と同等となります。等級4よりも冷暖房にかかる一次エネルギー消費量を40%削減できるレベルの断熱性能です。

省エネルギー対策等級、一次エネルギー消費量等級との違い

断熱等級とは?2025年から賃貸住宅でも断熱等級4の適合が義務化2

建物の省エネ性能を表す基準として、断熱等級の他に「省エネルギー対策等級」や「一次エネルギー消費量等級」という言葉を目にすることがあります。

「省エネルギー対策等級」は品確法で規定された住宅性能表示制度の評価基準で、エネルギー消費量をいかに減らせるかを等級で表したものです。その評価基準として「断熱性能等級」と「一次エネルギー消費量等級」があり、これらを合わせて評価したものを指します。

「一次エネルギー消費量等級」は、住宅が1年間に消費するエネルギー量を表す「BEI」という数値を等級ごとに分けたもの。BEIは「ビーイーアイ」と読み、「Building Energy Index(ビルディング・エナジー・インデックス)」の略です。BEIが小さいほどエネルギー消費量が少なくなり、等級は高くなっていきます。

断熱等級の確認方法と改善策

これから新築する建物には高い断熱性が求められることがわかりました。

ところで、いまお住まいの家や賃貸経営しているアパート、購入を検討している物件などの断熱性能はどのように調べれば良いのでしょうか。また、断熱性能を高める方法はあるのでしょうか。

今の断熱等級を知る方法

断熱等級とは?2025年から賃貸住宅でも断熱等級4の適合が義務化2

断熱等級は「設計住宅性能評価書」、または「建設住宅性能評価書」に記載されています。住宅性能表示制度を利用している物件の場合は、建築会社や不動産会社にこれらを見せてもらうことで等級が分かります。

また、築年数からある程度の断熱等級を推測することも可能。次世代省エネ基準が始まった1990年代以前は多くが等級3以下、1991年以前は等級2以下と考えられます。しかし、建築後に断熱リフォームなどで性能が上がっている可能性があるため、不動産会社に確認するようにしましょう。

新築と既存住宅でのアプローチの違い

法改正により省エネ基準適合義務の対象が拡大されましたが、新築か既存住宅のリフォームかによっても考え方が異なります。

断熱等級とは?2025年から賃貸住宅でも断熱等級4の適合が義務化2

出典:建築物省エネ法に基づく省エネ性能表示制度事業者向け概要資料|国土交通省

新築については、これまで延床面積300㎡以上の非住宅住宅についてのみ省エネ適合義務が課せられていましたが、2025年4月からはすべての新築住宅・新築非住宅が義務化の対象となります。

既存住宅は、増改築を行う部分にのみ基準適合を求めることとなります。具体的には、増改築部分の壁・屋根・窓などに断熱材等を施工することや、増築部分に省エネ性能の高い設備(空調・照明等)を設置することで基準への適合を求めるとしています。

断熱等級を上げるメリット・デメリット

断熱等級とは?2025年から賃貸住宅でも断熱等級4の適合が義務化2

断熱等級を上げるメリット

室内の温度を快適に保てる
断熱等級とは?2025年から賃貸住宅でも断熱等級4の適合が義務化2

外気の影響を受けにくいため、冬は暖かく・夏は涼しい快適な室内環境で過ごせます。また、住まい全体の温度を一定に保ちやすくなるため、部屋ごとの気温差が原因で起こるヒートショックのリスクが減ります。

光熱費が削減できる

エアコンを効率的に使えることで節電につながり、毎月の光熱費が抑えられます。暑さ・寒さが特に厳しい季節は、その効果を実感できるでしょう。

省エネ住宅で節約できる年間の光熱費については、東京で年間5万3,000円、札幌市で年間10万7,000円との試算を国交省が出しています。

間取りの幅が広がる

冷暖房が効きにくいという理由で避けられていた大空間や吹抜けなどのオープンな空間がつくりやすくなり、間取りの幅が広がります。

補助金やローン控除などの優遇を受けられる

断熱対策を含む省エネ住宅は、様々な国や自治体の補助金の対象となっています。

また、2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅は、住宅ローン減税を受けるためには省エネ性能が必須となりました。控除には、確定申告書とともに「建設住宅性能評価書」もしくは「住宅省エネルギー性能証明書」の提出が必要です。

長期優良住宅に認定される(断熱等級5以上)

長期優良住宅は、長く安心・快適に暮らせる家として耐震性や省エネルギー性などの基準をクリアした住宅に与えられる認定で、断熱等級は等級5以上が必要とされています。

長期優良住宅に認定されると住宅ローン減税の他、不動産取得税や登録免許税、固定資産税などに優遇があります。また、住宅ローンの金利や地震保険も安くなります。

断熱等級を上げるデメリット

断熱等級とは?2025年から賃貸住宅でも断熱等級4の適合が義務化2
建築費用が高くなる

断熱性能を満たすためには、壁に入れる断熱材を厚くしたり、窓やドアなどを断熱仕様のものにしたりする必要があります。そのため、断熱等級を上げようとするとどうしても建築費用が高くなってしまう点が最大のデメリットです。

建物の大きさや建てるエリアによっても変わりますが、一戸建ての場合、断熱等級4から6に上げるには数十万円、等級7まで上げるならば数百万円ほど建築費の差が出てきます。

光熱費や税制優遇でランニングコストは安くなるものの、イニシャルコストが上がるのが断熱等級を上げることのデメリットといえるでしょう。

これから家を新築するなら知っておきたいポイント

どの断熱等級で建てるべき?

断熱等級とは?2025年から賃貸住宅でも断熱等級4の適合が義務化2

建築物省エネ法改正により、2025年4月以降は賃貸住宅も等級4未満では建築できなくなります。できるだけコストを下げたいからと、それまでに急いで安価に賃貸住宅を建築したとしても、省エネ基準を満たす賃貸住宅が徐々に主流になっていくなかでは、10年ほどで競争力を失ってしまうでしょう。

それならば最低ラインである等級4を目指せばいいのでは?となりそうですが、政府は2030年までに省エネ基準をZEH水準(断熱等級5)まで引き上げようとしています。5年で省エネ基準に満たなくなってしまう可能性を考えると、断熱等級5は目指したいところ。ZEH住宅という優位性もあり、長期優良住宅の基準にも適合します。

理想は最高基準である7といっても、現状ではコストがかかり過ぎてしまい、リスクが伴います。今後さらに補助金や税制優遇が手厚くなってくるとしても、新築時は断熱等級5を目指し、次の改修でそれ以上の性能に上げるという流れが現実的かもしれません。

断熱等級の高い家を建てる際の注意点

断熱等級とは?2025年から賃貸住宅でも断熱等級4の適合が義務化2

断熱性能の高い家ほど、建物の気密性も高くなります。熱や湿気がこもらないように通風計画をしっかり行うことや、換気システムの定期的なメンテナンスを心がけるようにしましょう。

また、断熱性能を上げるためには高い施工技術が求められます。というのは、断熱性能は気密性能のように機械で測定できるものではなく、UA値とηAC値を計算して算出する理論値になります。

机上では断熱性を保てていても、設計図書通りに緻密な施工が行われていなければ、実際の断熱性能はそれよりも低い…ということにもなりかねません。

そのため、断熱等級の高い家を選ぶときは、しっかりとした施工技術を持った建築会社を選ぶようにしましょう。高断熱住宅の実績が豊富な会社を探せば、補助金などに関するアドバイスももらえるでしょう。

断熱等級の最新情報と今後の動向

断熱等級とは?2025年から賃貸住宅でも断熱等級4の適合が義務化2

2024年4月から賃貸住宅についても省エネ性能表示制度がスタートし、住まい探しにおける省エネ性能のニーズは高まっていくと思われます。

4月にアットホーム(株)が加盟店に実施した調査では、26.3%が『環境に配慮した住まいを探す人が1年前と比べて増えている』、23.1%が『お客さまから物件の省エネ性能について質問を受けたことがある』と回答。この割合はこれからも増えていくでしょう。

気候変動の影響もあって、ここ最近の建物の断熱基準の変遷はめまぐるしく、数年前まで「次世代省エネ基準」と呼ばれていた等級4がすでに省エネ基準の最低ラインとなってしまいました。今後もこの動きは加速しそうです。

資産価値においても、省エネ性能が高い建物は資産価値を維持できる一方で、省エネ性能が低い建物は相場以下の価値と評価されてしまう可能性も大きくなります。例えば新耐震と旧耐震のように、法改正によって建物の性能基準が変わることが資産価値の格差を生み出す要因となるのです。

「住宅省エネキャンペーン2024」を活用しよう

既存の建物も、改修で省エネ化することが可能です。2024年は賃貸住宅に対する助成も手厚くなり、「住宅省エネキャンペーン2024」に小型省エネ給湯器を対象にした「賃貸集合給湯省エネ2024事業」も加わりました。

断熱等級とは?2025年から賃貸住宅でも断熱等級4の適合が義務化2

断熱性能に関連する助成事業には、熱損失の大きい窓に特化した「先進的窓リノベ事業」があります。賃貸住宅も対象に含み、短期間で設置できる内窓の設置にも利用可能。防音性もアップし、入居者に室内環境の良さを実感してもらいやすいリフォームです。

省エネ賃貸住宅は、今後は徐々にスタンダードになっていくと思われますが、今は数も少なく、ニーズに供給が間に合っていない状況です。差別化できるうちに、国や自治体の助成金を使いながら、利益につながる賢い設備投資をしていきましょう。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2024年6月10日時点のものです。

文/石垣 光子

ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。

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