アパートローンの新規貸し付けはこの4年で1.5倍に。国交省が住宅ローンについての実態調査を発表

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公開日:2025年4月16日
更新日:2025年4月16日
アパートローンの新規貸し付けはこの4年で1.5倍に。国交省が住宅ローンについての実態調査を発表1

金利引き上げが頻繁にニュースになる昨今、住宅ローンの状況はどのように推移しているのでしょうか。国交省が実施している「民間住宅ローンの実態に関する調査」の2024(令和6)年度の結果が発表されました。最新の住宅ローンやアパートローンの概要をチェックしてみましょう。

【住宅ローン】個人向け新規貸出額は202,816億円。横ばいで推移

国交省によると、本調査の目的は「国民の計画的な住宅取得を円滑に実現していく上で、市場における住宅ローンの供給状況を把握すること」。国内の銀行や信用金庫、農業協同組合など住宅ローンを扱う民間金融機関を対象として行われています。

調査期間は2024(令和6)年10月~11月で、件数・金額に関しては2023(令和5)年度末実績となります。年度ごとに回答があったすべての機関について集計した「各年集計」と、2020(令和2)年度~2023(令和5)年度すべての実績がある機関について集計した「経年集計」が報告されていますが、ここでは各年集計をご紹介します。

まず、住宅ローン全体の実績については、2023(令和5)年度の新規貸出額は202,816億円。前年度の202,934億円からは微減となっています。2023年度末時点の貸出残高は1,985,327億円で、前年度末より25,722億円増加しました。

使途別では、新築住宅の建設・購入が69.9%、既存(中古)住宅の購入が24.1%、借換えが6.1%でした。新築住宅の割合は前年度の73.6%から減少し、既存住宅(前年度20.5%)および借換え(同5.9%)が増加しています。

【住宅ローン】金利タイプ別では変動が8割超で前年度より+6.4P

アパートローンの新規貸し付けはこの4年で1.5倍に。国交省が住宅ローンについての実態調査を発表2

実績を金利タイプに分けてみると、2023(令和5)年度は「変動金利型」(84.3%)の割合が最も高く、前年度より6.4ポイント増加。変動金利型は2019(令和元)年度から63.1% → 70.0% → 76.2% → 77.9% → 84.3%と伸び続けています。

変動金利型は当初の金利が低い反面、将来的な金利上昇による返済額増加のリスクがあるため注意が必要です。

前年度より減少したのは「証券化ローン(フラット35等)」4.5%、「全期間固定金利型」2.1%、「固定金利期間選択型」9.0%でした。

業態別では「都銀・信託銀行ほか」では変動金利型が96.8%、「地銀」では87.8%を占めています。

一方で、固定金利期間選択型の割合が高めなのは「信組」で38.8%、「第二地銀」29.2%、「労金」で26.4%。住宅ローンを専門とする金融機関「モーゲージバンク」では、その特性から95.6%が証券化ローン(フラット35等)です。

【住宅ローン】審査方法は「スコアリング方式」の採用が4割超に

長期・固定金利の住宅ローンの審査方法については、申込者のデータから年収や返済負担率などの審査項目ごとに点数をつけ、その合計点によって融資するかを決める「スコアリング方式」を中心にしている金融機関が17.4%。スコアリング方式を一部取り入れている金融機関が24.0%で、合わせると4割を超えています。

スコアリング方式は、AIやデータ分析を用いた自動審査の普及により今後さらに拡大する可能性があります。

審査項目として多い順に、「完済時年齢」98.4%、「健康状態」95.1%、「借入時年齢」96.0%、「年収」93.4%、「勤続年数」93.2%、「返済負担率」90.3%、「担保評価」90.5%(「金融機関の営業エリア」は除外)

過半数の金融機関が挙げている項目には他に「連帯保証」「国籍」「雇用形態」「融資可能額(融資率)」「カードローン等の他の債務状況や返済履歴」「申込人との取引状況」がありました。

【アパートローン】賃貸住宅向け融資は34,537 億円で前年度より増加

賃貸住宅の建設・購入に対する融資、いわゆるアパートローンの2023(令和5)年度新規貸出額は34,537億円で、前年度より2,922億円増加しました。アパートローンの貸出額は増加を続けており、2020(令和2)年度の22,160億円から約1.5倍になっています。

融資が増加する一方、人口減少や地域差による空室リスクも高まっており、立地選定がこれまで以上に重要になっています。

業態別では「地銀」の割合が最も多く10,281億円。次いで「信金」8,743億円、「都銀・信託銀行ほか」6,020億円が続きます。

賃貸住宅向け貸出残高は367,533億円で、前年度末より2,278億円増加しました。

表|アパートローン新規貸出額の推移

2020年 22,160億円
2021年 26,192億円
2022年 31,615億円
2023年 34,537億円

 

【住宅ローン】リバースモーゲージ商品化を検討中の金融機関が多い

住宅ローンの商品を金利タイプや返済条件によって19に分類し、それぞれの取り扱い状況を調べています。

19の住宅ローン商品のうち、「現在、商品として取り扱っている」割合が高いのは「金利タイプ(変動金利型)」93.7%、「金利タイプ(固定金利期間選択型)」91.8%でした。

「商品化を検討中」の割合が高いのは「リバースモーゲージ」で8.8%。一方で「取り扱っていたが、廃止した」の割合が高いのは「金利タイプ(全期間固定金利型)」10.1%となっています。

表|金融機関別 金利タイプの選好傾向

  変動 固定選択 フラット35等
都銀・信託銀行 96.8% 2.0% 0.2%
地銀 87.8% 10.0% 2.2%
信組 31.3% 38.8% 29.9%
第二地銀 45.0% 29.2% 25.8%
労金 55.0% 26.4% 18.6%
モーゲージバンク 95.6%(変動・固定なし)

 

まとめ

2024年10月に住宅金融支援機構が行った「住宅ローン利用者の実態調査」によると、2024年3月のマイナス金利解除と7月の政策金利引き上げによって、約4割が住宅ローン選択などに「変化があった」と回答しています。

その後、2025年1月に日銀が追加利上げを発表し、多くの金融機関で4月から住宅ローン金利が引き上げられました。アメリカの関税引き上げが日本経済に与える影響から「利上げは止まる」との見方もありますが、先行きは不透明なままです。

金利が上昇傾向にある今、変動金利型は月々の返済額に変動が出る可能性があるため、将来の収入計画と照らし合わせて慎重に選択することが求められます。

アパートローンについても同様に、これから新規借り入れを検討している方も、すでに返済中のオーナーも、引き続き情報収集を怠らず、今後の不測の事態に備えたいものです。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2025年4月15日時点のものです。

取材・文/石垣 光子

ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。

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