令和・平成・昭和築の賃貸物件、東京23区の物件数と賃料動向は?昭和築の物件が最も多いのはどこ?
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上昇傾向が続く都市圏の賃料。新しい物件も次々に建築される中、築年数と賃料の関連やエリアごとの分布はどのようになっているのでしょうか。(株)いえらぶGROUPが不動産業者間流通プラットフォーム「いえらぶBB」のデータをもとに、東京23区における賃貸物件の市場動向を分析。令和・平成・昭和築別にまとめた結果と、該当するエリアの賃貸オーナーが取るべき対応をご紹介します。
シングルタイプで最も供給数が多いのは平成築の築6~10年
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東京23区には、どれくらいの築年数の物件が多いのでしょうか。築年数を5年ごとに区切って集計したところ、シングルタイプで最も多いのが築6~10年の平成築物件で、全体の18.7%。続いて築16~20年で17.4%となっています。
最も少ないのが築26〜30年、それに築11〜15年が続きます。この築11〜15年は物件数が多い上位2位の間の年代に当たるのですが、その理由にリーマンショックの影響が挙げられています。
平均賃料も築6~10年の平成築物件が新築物件並みに高く、この年代の物件は最新の耐震基準や省エネ設計を備え、設備の新しさや管理状態の良さが維持されていることが一因では、としています。
オーナーが取るべき対応
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賃料設定は強気でも成約の可能性あり。ただし、築11~15年になると競争力が下がる可能性があるため、早めに設備のアップグレードやリフォームを検討。
リーマンショックの影響で供給が減ったため、競合が少ない。リノベーションを施し、築浅物件と差別化できるポイントを打ち出すのが鍵。
昭和築物件が最も多いのが渋谷区、令和築の最多は新宿区
次に、築古物件と新築物件の分布を見てみましょう。シングルタイプ(30㎡未満)で、築36年以上の昭和築と令和の新築、それぞれの物件割合が多い区の上位は以下のようになっています。
昭和築(築36年以上)の物件が多い区 | |||
順位 | 区名 | 物件数 | 割合 |
1位 | 渋谷区 | 4,172 | 14.4% |
2位 | 世田谷区 | 3,492 | 12.1% |
3位 | 杉並区 | 3,016 | 10.4% |
4位 | 大田区 | 2,753 | 9.5% |
5位 | 中野区 | 2,383 | 8.2% |
令和築(新築)の物件が多い区 | |||
順位 | 区名 | 物件数 | 割合 |
1位 | 新宿区 | 9,036 | 22.8% |
2位 | 豊島区 | 4,682 | 11.8% |
3位 | 品川区 | 4,592 | 11.6% |
4位 | 江東区 | 4,227 | 10.7% |
5位 | 足立区 | 2,260 | 5.7% |
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昭和築の物件は渋谷区が最も多く、世田谷区と杉並区が続く結果となりました。その背景には1964年の東京オリンピック開催が影響しているのでは、と分析されています。会場周辺の当時の大規模な開発で建てられたマンションが今でも多く残っていると思われます。
一方、新築物件が圧倒的に多い新宿区では、近年の再開発で商業施設やオフィスビルとともに新築マンションの供給が増加しています。コロナ収束後の都心回帰の傾向を反映するように、交通利便性の高いエリアで新築物件が建てられているようです。
オーナーが考えるべきポイント
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需要の高いリノベーション市場を狙い、内装・設備のアップデートで競争力を維持する。特に、耐震補強や水回りのリフォームは入居率アップに直結。
競争が激化しやすいため、家賃の見直しや入居者ニーズに合った付加価値(家具付き賃貸・インターネット無料化など)を検討。
カップル・ファミリータイプは4物件に1件が新築
もっと広めの物件の築年数分布はどうでしょうか。30㎡〜50㎡未満のカップルタイプ、50㎡〜70㎡未満のファミリータイプで、物件数の多い築年数(5年ごと)は以下となっています。
カップルタイプの築年数別物件数割合 | |||
順位 | 区名 | 物件数 | 割合 |
1位 | 令和築(新築) | 32,209 | 27.9% |
2位 | 令和築(築2〜6年) | 25,725 | 22.3% |
3位 | 平成築(築6~10年) | 14,474 | 12.5% |
4位 | 昭和築(築36年以上) | 13,233 | 11.4% |
5位 | 平成築(築16〜20年) | 12,439 | 10.8% |
ファミリータイプの築年数別物件数割合 | |||
順位 | 区名 | 物件数 | 割合 |
1位 | 令和築(築2~6年) | 13,973 | 31.2% |
2位 | 令和築(新築) | 10,164 | 22.7% |
3位 | 平成築(築6~10年) | 6,603 | 14.8% |
4位 | 平成築(築16〜20年) | 3,037 | 6.7% |
5位 | 平成築(築26〜30年) | 2,570 | 5.7% |
いずれも令和築が半数を超えており、4物件に1件が新築(築1年以内)という結果になりました。カップル・ファミリータイプには新しい物件が多いことがわかりました。
区別では、新築のファミリー物件の供給が多いのは台東区(25.1%)、港区(14.0%)、世田谷区(13.3%)、板橋区(13.0%)となっています。
賃貸オーナーが取れる戦略
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設備のグレードアップやファミリー層に人気のオートロック・宅配ボックス・防音仕様などを導入すると空室対策に有効。
新築に比べ賃料を抑えつつ、リフォームやペット可・楽器可などターゲット層を絞った貸し方を工夫。
ファミリータイプの平均賃料、上昇率が最も高いのは墨田区
ここ近年、東京23区では、ファミリータイプの賃料上昇が著しいと言われています。すべての築年数で、2023年12月と2024年12月の賃料を比較したところ、上昇率上位と下位は以下のような結果となりました。
ファミリータイプ平均賃料(上位5位) | |||
順位 | 区名 | 平均家賃 | 昨年比 |
1位 | 墨田区 | 233,782 | 123.8% |
2位 | 港区 | 361,958 | 123.5% |
3位 | 板橋区 | 213,384 | 123.3% |
4位 | 江戸川区 | 152,663 | 118.0% |
5位 | 世田谷区 | 223,160 | 115.5% |
ファミリータイプ平均賃料(下位5位) | |||
順位 | 区名 | 平均家賃 | 昨年比 |
1位 | 豊島区 | 206,975 | 87.9% |
2位 | 台東区 | 232,875 | 93.4% |
3位 | 渋谷区 | 275,156 | 96.7% |
4位 | 足立区 | 122,957 | 97.4% |
5位 | 江東区 | 238,983 | 98.0% |
台東区を除き、港区、板橋区、世田谷区など新築物件の割合が高い区が家賃上昇率上位に入っています。多くの入居者が、賃料が高めの令和築物件を選んでいるようです。
賃貸オーナーが取れる対応
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適正賃料を再評価し、家賃の見直しを検討。築年数が経過しても上昇傾向ならリフォームを施し、賃料アップを狙う戦略も。
もしも空室が目立ってきた場合には、他エリアとの競争に勝つために、設備投資だけでなく、法人契約のターゲット拡大や外国人向けの家具付き賃貸などニーズに対応する工夫も。
まとめ
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ファミリータイプを中心に、賃料の上昇は新築供給の増加とも連動していることがわかりました。新築のファミリー物件は子育て世帯に配慮した設備や省エネ設計など、利便性と住みやすさを兼ね備えており、それが家賃にも反映されているのでしょう。
一方で、シングルタイプに関しては築6~10年の物件が新築並みの賃料で、供給数も最も多いという結果が出ていました。この年代には、利便性と築年数のバランスが良い物件が多く建てられたのかもしれません。
築年数やエリアごとの市場動向を理解し、自身の物件に最適な運用方法を見極めることが、賃貸オーナーにとって重要な戦略となります。市場のデータを積極的に活用し、賃貸経営の安定化を図っていきましょう。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2024年2月19日時点のものです。
取材・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。
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