断熱改修などの実施で宅配ボックス設置も補助対象に。「住宅省エネ2025キャンペーン」4つの事業で交付申請を受付

『住宅省エネ2025キャンペーン』各事業の概要が発表されました。環境省、国土交通省、経済産業省が連携しておこなう補助金制度で、2024年からは賃貸住宅の小型省エネ給湯器を対象にした補助も加わりました。現在発表されている内容から、賃貸オーナーが空室対策に活用できるものを抜粋して紹介します。所有物件のリフォームを検討している大家さんは要チェックです。
キャンペーン全体の目的は?賃貸も含めすべての世帯が対象!
日本では、2050年までに温室効果ガスの排出量を、実質ゼロにすることを念頭に、2030年度に2013年度比で温室効果ガスを46%削減する(さらに50%の高みに向けて挑戦を続ける)ことを目指しています。家庭部門では2013年度比66%削減が目標で、その排出量の約5割を占める冷暖房と給湯についての取り組みが急務となっています。

出典:家庭の用途別エネルギー消費の推移|住宅省エネ2025キャンペーンホームページ
そのため、『住宅省エネ2025キャンペーン』の各事業も、冷暖房効率を高める住宅の断熱性能向上と、高効率給湯器への助成が大部分を占めています。次の4つの補助事業は一部の新築住宅を除き、子育て世帯に限らずすべての世帯が対象。もちろん賃貸住宅も含まれています。
「住宅省エネ2025キャンペーン」の補助対象
①子育てグリーン住宅支援事業(予算400億円/国土交通省)
②先進的窓リノベ2025事業(1,350億円/環境省)
③給湯省エネ2025事業(580億円/経済産業省)
④賃貸集合給湯省エネ2025事業(50億円/経済産業省)
補助事業 | 補助 対象者 |
補助対象住宅 | 補助対象用途 | 補助上限/戸 |
子育てグリーン住宅 支援事業 |
工事 発注者 |
戸建※1 共同(集合)住宅※2 |
持家、 貸家 借家等 |
40万円または 60万円 |
先進的窓リノベ 2025事業 |
200万円 | |||
給湯省エネ 2025事業 |
戸建:2台 |
|||
賃貸集合給湯省エネ 2025事業 |
工事 発注者 かつ住宅所有者 |
共同(集合)住宅※3 | 貸家に 限る |
1台 |
※1ひとつの住戸が含まれる建物。店舗併用住宅を含む
※2ふたつ以上の住戸が含まれる建物。二世帯住宅を含む
※3ふたつ以上の住戸が含まれる建物
補助事業 | 交付申請の予約の受付終了 | 交付申請の受付終了 |
子育てグリーン住宅 支援事業 |
遅くとも 2025年11月30日まで※1 |
遅くとも 2025年12月31日まで※1 |
先進的窓リノベ 2025事業 |
||
給湯省エネ 2025事業 |
||
賃貸集合給湯省エネ 2025事業 |
※1 各事業の交付申請(予約を含む)の受付は、その補助金申請額が各事業の予算上限に達した時点で終了
あらかじめ事業者登録をした施工業者が申請手続きを行い、交付された補助金を後から賃貸オーナー等に還元するかたちになります。
子育てグリーン住宅支援事業|断熱改修などの実施で宅配ボックス設置も補助対象に

イラスト/アサミナオ
●「子育て対応改修」の枠を使って「宅配ボックス」を設置 ●家族向けの部屋のリノベで、対面キッチンに改修、ビルトイン食洗器の設置にも挑戦 |
新築住宅の建築で活用できる「子育てグリーン住宅支援事業」。新築住宅を対象とした補助金では、環境省と国土交通省合わせて1,850億円の予算が組まれています。賃貸住宅については、新たな建築が対象で「賃貸住宅の購入は対象外」という点に注意しましょう。
賃貸住宅を新たに建てる場合は床面積50〜240㎡が要件
補助対象住宅 | 1戸あたりの補助額 | 古家の除却※1が伴う場合の補助額の加算額 |
GX志向型住宅※2 | 160万円/戸 | なし |
長期優良住宅 | 80万円/戸※3 | 20万円/戸 |
ZEH水準住宅 | 40万円/戸※3 |
※1 新築住宅の建築主・購入者等(その親族を含む)が、所有する住宅の解体工事を発注し、2024年11月22日から完了報告までに解体工事が完了するものに限ります。
※2 GXへの協力表明を行った事業者が建築する住宅に限ります。詳細はこちら
※3 補助対象は、要件を満たす賃貸住戸の50%です。(事務の合理化のため、申請手続きにおいては、長期優良住宅の場合40万円/戸、ZEH水準住宅の場合20万円/戸として取り扱います。)
上記に加えて、長期優良住宅とZEH水準住宅については「子育て・若者夫婦世帯向けに限定した募集(3ヶ月以上)等」という要件もあります。
GX志向型住宅とは、国が行うGX(グリーントランスフォーメーション)政策のもと、長期優良住宅やZEH水準住宅を上回る省エネ性能を実現している住宅のこと。GXに対する協力表明を行った建築事業者が建てる必要があります。
完了報告期間は交付決定以降、戸建賃貸住宅が2026年7月31日まで、10階建て以下の共同住宅が2027年4月30日まで、11階建て以上の共同住宅が2028年2月29日までの予定です。
子育てグリーン住宅支援事業のリフォーム対象工事
必須工事 | 任意工事 |
①開口部の断熱改修 ②躯体の断熱改修 ③エコ住宅設備の設置 |
④子育て対応改修 ⑤防災性向上改修 ⑥バリアフリー改修 ⑦空気清浄機能・換気機能付きエアコンの設置 ⑧リフォーム瑕疵保険等への加入 |
必須工事①~③のすべてのカテゴリーを実施した場合60万円/戸が、いずれか2つのカテゴリー実施で40万円/戸が上限となります。
任意工事については「必須工事のうち2つ以上のカテゴリーを実施した場合のみが補助対象」とハードルはやや高め。しかし「④子育て対応改修」には次のような、賃貸住宅にも取り入れやすい設備機器が多く含まれています。
設置台数によらず、設置を行った設備の種類に応じた補助額とします。
エコ住宅設備の種類 | 補助額 |
太陽熱利用システム | 30,000円/戸 |
高断熱浴槽 | 32,000円/戸 |
高効率給湯器 | 30,000円/戸 |
蓄電池 | 64,000円/戸 |
節水型トイレ | 掃除しやすい機能を有するもの以外 21,000円/台 |
掃除しやすい機能を有するもの 23,000円/台 | |
節湯水栓 | 6,000円/台 |
設備の種類に応じた補助額×設置台数の合計を補助額とします。
エコ住宅設備の種類 | 補助額 |
節水型トイレ | 掃除しやすい機能を有するもの以外 21,000円/台 |
掃除しやすい機能を有するもの 23,000円/台 | |
節湯水栓 | 6,000円/台 |

家事負担の軽減を目指す、Bの「子育て対応改修」については、「家事負担の軽減に資する住宅設備」として、以下の設備に補助金が支払われます。
2024年に続き宅配ボックスの設置も補助金の対象に含まれます。
ビルトイン食器洗機 | 25,000円/戸 |
掃除しやすいレンジフード | 13,000円/戸※1 |
ビルトイン自動調理対応コンロ | 15,000円/戸※1 |
浴室乾燥機 | 23,000円/戸 |
宅配ボックス | 住戸専用の場合11,000円/戸 共用の場合11,000円/ボックス※2 |
※1「キッチンセットの交換を伴う対面化改修」で補助金が交付される場合、本項目は補助の対象になりません
※2共同住宅においては、単数のボックスなど当該住戸用に独立して設置された宅配ボックスに限ります
宅配ボックスについては例えば、1つの宅配ボックスに4つのボックスが設置されている場合は、補助額が44,000円となります。
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先進的窓リノベ事業|内窓やガラス交換に1戸あたり200万円上限の補助

イラスト/アサミナオ
短時間で設置できる内窓を、入退去のタイミングで順々に交換。室内の気密性が高まり、冬も夏も快適な室内環境に。防音性もアップ |

出典:住宅における熱の流失入割合|住宅省エネ2025キャンペーンホームページより引用
環境省による1,350億円の予算が組まれているのが『先進的窓リノベ2025事業』で、戸建、共同住宅によらず既存住宅に行う開口部の断熱リフォームを補助します。補助額は設置する製品ごとの補助額(定額)の合計で、1戸当たり200万円となっています。
補助対象工事はガラス交換、内窓設置、外窓交換、ドア交換ですが、ドア交換のみの場合は対象になりません。補助額は窓の性能と大きさによって以下の通りです。
対象項目 | 補助額 |
ガラス交換 | 5,000円〜5万5,000円/枚 |
内窓設置 | 1万2,000円〜10万6,000円/製品 |
外窓交換(カバー工法) | 5万8,000〜22万円/製品 |
外窓交換(はつり工法) | 4万6,000〜18万3,000円/製品 |
ドア交換(カバー工法) | 5万8,000〜22万円/製品 |
ドア交換(はつり工法) | 4万6,000〜18万3,000円/製品 |
なお、開口部の断熱改修については『子育てグリーン住宅支援事業』も対象で、窓の性能によっては『先進的窓リノベ2025事業』よりも高い補助を受けられる場合があります。
同一製品について複数の事業を重複して申請できないため「対象要件の詳細」ページで確認が必要です。
賃貸集合給湯省エネ2025事業|賃貸住宅限定でエコジョーズなど小型給湯器が補助対象に


イラスト/アサミナオ
複数の部屋で給湯器交換する際、追い焚き機能付きエコジョーズに交換し、バリューアップ |
『賃貸集合給湯省エネ2025事業』は既存の賃貸集合住宅のリフォームに限定した補助事業で、予算は50億円です。設置スペースが限られているアパートなどにも取り付けやすい小型の省エネ型給湯器(エコジョーズ/エコフィール)への交換が補助されます。昨年に引き続き、リース利用も補助金の対象です。
潜熱回収型ガス給湯器 (エコジョーズ) |
給湯単能機 | モード熱効率が90%以上 |
ふろ給湯器 | モード熱効率が90%以上 | |
給湯暖房機 | 給湯部熱効率が95%以上 | |
潜熱回収型石油給湯機 (エコフィール) |
油焚き温水ボイラー | 連続給湯効率が95%以上 |
石油給湯機(直圧式) | モード熱効率が91%以上 | |
石油給湯機(貯湯式) | モード熱効率が80%以上 |
設置する給湯器 | 追炊機能 | 補助額 | 補助上限 |
潜熱回収型ガス給湯器 (エコジョーズ) |
なし | 5万円 | いずれか 1住戸1台まで |
あり | 7万円 | ||
潜熱回収型石油給湯機 (エコフィール) |
なし | 5万円 | |
あり | 7万円 |
エコジョーズやエコフィールへの交換時には、ドレン水を排水するドレン配管を設置する必要があります。排水方法は給湯器の種類などで異なりますが、工事の内容によって上記に3万円が加算されます。
2024年11月22日以降着工の工事が対象で、事業者登録の開始が2025年3月10日、交付申請(予約含む)の開始が2025年3月下旬から順次の予定です。交付申請は予算上限に達するまで(遅くとも2025年12月31日まで)。
対象となる既存賃貸集合住宅は、1棟に2戸以上の賃貸住戸を有しており、建築から1年以上が経過している、またはいずれかの住戸で人が居住した実績がある建物となります。住宅であっても、事業用に貸し出されていたり、賃貸借契約を締結しないオーナーや親族等が居住する住戸は含みません。
給湯省エネ2025事業|エコキュートなど高効率給湯器に補助

イラスト/アサミナオ
古い電気温水器を撤去してヒートポンプ給湯器に交換。併せて15 万円の補助金が出る |
経済産業省が主幹となる「給湯省エネ2025事業」は、特に性能の高い高効率給湯器(ヒートポンプ給湯機、ハイブリッド給湯機、家庭用燃料電池)の導入を支援する事業です。リース契約も対象になります。また旧式の電気温水器や蓄熱暖房機の撤去にも補助が出ます。
設置する給湯器 | 補助額(定額) | 補助上限 |
ヒートポンプ給湯機 (エコキュート) |
6万円/台 | 戸建住宅: いずれか 2台まで 共同住宅等: いずれか 1台まで |
電気ヒートポンプ・ ガス瞬間式併用型給湯機 (ハイブリッド給湯機) |
8万円/台 | |
家庭用燃料電池 (エネファーム) |
16万円/台 |
製品の性能により補助額が変わります。戸建は1戸につきいずれか2台まで、共同(集合)住宅は1戸につきいずれか1台まで申請できます。
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補助金の申請手続きは誰がする?申請から交付までの流れ
キャンペーンの交付申請の手続きは工事施工者が行うため、大家さんが自らすることはありません。交付決定後、約1〜2カ月で補助金は施工者に交付されたのち発注者に還元されます。
交付申請と補助金申請の流れは以下のようになっています。

参考:「住宅省エネ2025キャンペーン」総合サイト

参考:「住宅省エネ2025キャンペーン」総合サイト
4つの事業には重複している工事もあります。対象建材・設備の性能等に応じて、両事業の併用は可能ですが、ひとつの窓や機器に対して重複して交付を受けることはできません。なお、地方公共団体の補助制度については、国費が充当されている補助制度以外は併用可能です。
また、補助金は住宅省エネ支援事業者に交付され、発注者(大家さん)には工事代金への充当もしくは返金という形で補助金が還元されます。
上記の図は「住宅省エネ2025キャンペーン」補助金交付の流れをまとめたものですので、参考にしてください。
省エネ改修を検討中なら使わない手はなし
省エネに直結する工事だけでなく、ビルトイン食器洗機や宅配ボックス、給湯器など、賃貸物件をより魅力的にしてくれる設備・機器の設置も対象となる今回の事業。費用対効果を考えて投資をためらっていたオーナーも、今こそ、補助金を活用して攻めの対策に打って出るまたとないチャンスです。
3省連携事業のため、4事業共通の入力フォームからワンストップ申請ができ、補助対象が混在するリフォームの中でもっとも有利な条件で補助金を得ることができます。省エネリフォームを検討中の大家さんは、この補助金を利用した設備投資で、物件のグレードアップをかなえてみてはいかがでしょうか。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2025年3月5日時点のものです。
文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。
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