サポート体制次第で約3割が受け入れに前向きな姿勢へ変化。外国人入居に対する“イメージ”と“現場”のギャップ

日本社会のグローバル化が進むにつれて、賃貸住宅における外国人入居のニーズは増加の一途をたどっています。大家さんはこの新たな潮流をどのように受け止めているのでしょうか。「大家さん白書2025」のデータから、外国人入居にまつわる大家さんの「不安」、そして実際に直面する「困りごと」との間に潜む意外なギャップが見えてきました。
約4割の大家さんが受け入れ経験あり。一方で未経験者の6割以上に抵抗感

調査結果によると、これまでに外国人を賃貸物件に入居者として迎えた経験のある大家さんは43.3%に上ります。特に、中国籍の入居者が121件と最も多く、次いでベトナム(62件)、韓国(40件)と、アジア圏からの入居が多い傾向が見られます。
この約4割という数字は、外国人入居者がすでに日本の賃貸市場において無視できない存在となっていることを示しています。特にアジア諸国からの入居が多い背景には、日本での就労や留学を目的とした層の賃貸ニーズが高いことが考えられます。これは、空室対策の選択肢として外国人の受け入れが避けられない状況になっていることを示唆しています。

しかし、外国人の入居を受け入れることに対して、大家さんの間には依然として心理的なハードルが存在します。外国人を賃貸物件に迎えることに「抵抗感がある」または「少しある」と回答した大家さんは全体の約65%に達しています。
この抵抗感は、単なる漠然とした感情ではなく、具体的な懸念に根ざしていることが次のデータで明らかになります。
受け入れ前の不安と実際の困りごとにギャップ
では、外国人の入居経験がない大家さんは、具体的にどのような点を不安に感じているのでしょうか。

最も多く挙げられたのは「生活習慣の違い」で26.5%でした。次いで「コミュニケーション(言葉が通じない)」が23.1%と続き、文化や言語の壁に対する懸念が大きいことが読み取れます。
これは、ゴミ出しのルール、騒音、共用部の利用方法など、文化の違いから生じる日常生活上のトラブルを大家さんが事前に想像し、不安を抱いていることを示唆しています。言葉の壁も、問題発生時の意思疎通の困難さに直結するため、大きな懸念事項となります。

一方で、実際に外国人を賃貸物件に迎え入れた経験のある大家さんは、どのような「困りごと」を経験しているのでしょうか。複数回答で尋ねた結果、最も多かったのは「ゴミ出しルールを守らない」と「生活習慣の違い」がともに10.1%でした。次いで「騒音」と「コミュニケーション(言葉が通じない)」が5.8%、「におい」が4.9%と続きます。

自由記述のコメントからも、「夜中や昼間に奇声を発する」「花壇に断りなく苗を植えられた」「文化の違いか、自転車の置き方や料理のにおいでクレーム」「台所・トイレの汚れが強烈」「日本語が通じず会話に困った」「無断で民泊してた」「滞納し帰国」「残置物そのままで鍵も返さず」といった具体的な困りごとが挙げられています。
ここで注目すべきは、事前の不安で最も高かった「生活習慣の違い」(26.5%)が、実際の困りごととしては10.1%に留まっている点です。また「コミュニケーション(言葉が通じない)」も、不安要素(23.1%)よりも実際の困りごと(5.8%)の方が低い割合となっています。
この結果は、大家さんが漠然と抱いていた「生活習慣の違い」への不安が、実際には「ゴミ出しルールを守らない」といったより具体的かつ限定的なトラブルとして顕在化しやすいことを示しています。
さらに、「突然の帰国で連絡が取れない」や「残置物の処理ができない」といった、入居者管理上の問題が一定数発生している点も重要です。
このギャップは、大家さんが抱く不安が、実際のトラブル発生頻度よりも大きく見積もられている可能性を示唆しています。しかし、だからといって不安が杞憂であるわけではなく、具体的な困りごとへの対策こそが、円滑な外国人入居の鍵となることが分かります。
コールセンターや家賃保証などの導入で受け入れ姿勢に変化
では、大家さんのこのような不安を軽減し、外国人入居の促進を図るためには、どのような支援が有効なのでしょうか。

外国人の受け入れに「抵抗感がある」または「少しある」と回答した大家さんに対し、外国人の生活を支援するコールセンターや外国人対応の家賃保証などのサポート体制があれば受け入れを検討するかを尋ねたところ、34.9%の大家さんが「はい」と回答しています。
この結果は、大家さんが抱える不安が決して根拠のないものではなく、具体的なリスクや手間に対する懸念があることを示しています。しかし、その不安を軽減するような明確なサポート体制が存在すれば、約3人に1人の大家さんが外国人入居を受け入れる可能性が高まるという非常に重要な事実が示されました。
具体的に、業界が提供すべきサポートのヒントとしては、以下の点が挙げられます。
言語・生活習慣の壁を解消する多言語コールセンター

「コミュニケーション(言葉が通じない)」や「生活習慣の違い」への不安や実際の困りごとに対し、24時間対応可能な多言語対応のコールセンターは、大家さんの負担を大きく軽減し、入居者の安心にもつながります。入居者からの「日本語が通じず会話に困った」という生の声にも対応できるでしょう。
家賃債務保証の強化と周知

「突然の帰国で連絡が取れない」「滞納し帰国」といった、金銭的・契約上のリスクに対する家賃債務保証サービスは、大家さんが最も懸念するリスクの一つをカバーします。家賃債務保証は、現在44.2%の大家さんが利用していますが、外国人入居における特定のリスクをカバーする保証制度の普及が期待されます。
具体的なトラブル対応ガイドラインと仲介

「ゴミ出しルールを守らない」といった具体的な生活習慣のトラブルについては、入居者向けの多言語ガイドラインの提供や、仲介会社による入居時の丁寧な説明、そしてトラブル発生時の迅速な仲介・解決支援が有効です。これにより、大家さんの「現場の困りごと」を直接的に減らすことができます。
居住支援サービスの拡充

国土交通省の「住宅セーフティネット制度」では、住宅確保要配慮者(外国人を含む)の居住支援として、居住支援協議会や居住支援法人の活動が挙げられています。これらの組織が大家さんと入居者の間に入り、情報提供や生活支援を行うことで、大家さんが外国人を受け入れるハードルを下げることが期待されます。
情報提供と教育
外国人入居に関する成功事例や、トラブル対策のノウハウ提供、また異文化理解を深めるための勉強会の開催なども、大家さんの不安解消につながるでしょう。
オーナーズ・スタイル統括編集長・上田英貴のコメント
今回の『大家さん白書2025』のデータが示す外国人入居に対する大家さんの姿について、株式会社オーナーズ・スタイル代表取締役統括編集長の上田英貴は、以下のように述べています。

(株)オーナーズ・スタイル 代表取締役 統括編集長 上田英貴
「外国人労働者や留学生の方々は、日本に対して前向きな期待を抱き、自らの意思で来日してくれた方々です。そうした方々に安心して暮らせる住まいを提供することは、社会的な責任であると同時に、オーナー自身の人生を豊かにする貴重な機会にもなります。異文化とのふれあいや新しい価値観との出会いは、日々の暮らしに刺激と学びをもたらし、視野の広がりにもつながります。
実際、外国人入居には、築古物件や狭い部屋でも受け入れられる柔軟性、家具家電付きでの家賃アップ、知人紹介による入居促進など、賃貸経営の面でも多くのメリットがあります。コールセンターや家賃保証などの支援体制を活用することで、安心して受け入れる環境は十分に整えられるので、ぜひ前向きにご検討いただければと思います」
まとめ
『大家さん白書2025』のデータから、外国人入居者に対する大家さんの不安と、実際に経験した困りごとの間に、ある種のギャップが存在しつつも、共通する具体的な課題が浮き彫りになりました。特に「生活習慣の違い」や「コミュニケーション」は、受け入れへの心理的ハードルと実際のトラブルの両面で影響を与えています。
しかし、外国人の生活支援のためのコールセンターや家賃債務保証などの具体的なサポート体制があれば、抵抗感のある大家さんの約3割が受け入れを検討するというデータは、外国人入居者の住まい探しの選択肢を広げるうえで、これらのサービスの普及・促進が非常に有効であることを示唆しています。
外国人の入居受け入れをさらに円滑に進めるためには、大家さんの不安の背景にある現状を理解し、生活習慣や言語の問題に対する具体的な対応方法や、万が一の際のサポート体制に関する情報提供を強化することが重要です。そして、不安を軽減する支援策を社会全体で整備していくことが求められています。
【調査概要】
●調査手法 :郵送及びインターネット
●調査時期 :2024年12月
●対象者条件 :賃貸経営情報誌「オーナーズ・スタイル」読者の大家さん(関東、関西、東海エリア)、アパート、マンションを1棟以上所有している人
●有効回答数 :793人
180項目のアンケート&大家さんの生の声865件!様々なデータを収録した「大家さん白書」を好評販売中

『大家さん白書2025』は、初回100冊限定で好評販売中です。
販売価格/書籍版:価格30,000円(税別)、PDF版:60,000円(税別)
関東・関西・東海エリアを中心とした全国の賃貸住宅オーナーを対象に実施したアンケート結果をまとめたデータブックの最新版で、実に10年ぶりの発行となります。延べ2,000人超が回答、180項目のアンケート&大家さんの生の声865件を収録した、充実の内容です。
購入をご希望の方は以下フォームよりお申し込みください。
「大家さん白書2025」主な内容
Part 1:大家さんのプロフィール
オーナー様の属性、所有物件の規模や種類、経営姿勢についての全体像が把握できる内容です。
∟検討中のこと・お悩み
空室・老朽化・相続など賃貸経営における課題や関心テーマを把握すること ができます。
Part 2:賃貸住宅の建築
建築意向、土地状況、建築会社の選定や見学ニーズなど、建築計画の実態が明らかになります。
Part 3:不動産の購入・売却
購入・売却の動向や価格帯、運用意識など、投資・資産組み換えの傾向について情報が得られます。
Part 4:修繕・設備
修繕内容や費用感、設備更新の意識など、物件維持に関する実情を解明します。
Part 5:管理・仲介・家賃
管理委託状況、仲介業者への評価、家賃設定の実態を把握できます。
Part 6:相続・税務
相続対策の実施状況や関心度、税務に関する悩みが明らかになります。
Part 7:空室対策・トラブル
空室への対応や入居者トラブルの実例、ならびにその対策に関する傾向が示されています。
Part 8:高齢者・外国人・LGBTの受け入れ
多様な入居者対応の現状と課題に対する意識が把握できます。
Part 9:災害・コミュニティ・情報収集・資格取得
防災意識、地域連携、学びへの取り組みなど、社会との関わりを探っています。
Part 10:オーナーズ・スタイル誌・主催イベントの利用状況
情報収集やイベント活用の状況とニーズについて把握できます。
【付録1】:自主管理大家さんへのアンケート調査
自主管理を行うオーナー様の実情、管理手法や課題を集約しています。
【付録2】:大家さんの生の声(コメント集)
延べ865件の大家さんの自由記述をテーマ別に掲載し、現場のリアルを伝えています。
今後も、『大家さん白書2025』のデータから、賃貸経営に役立つ様々なテーマの記事をお届けしてまいります。ご期待ください。
メディア等に掲載する記事に本冊子内のデータを使用される際には、以下までお問い合わせください。
【本件に関するお問い合わせ】
株式会社オーナーズ・スタイル
〒104-0061 東京都中央区銀座7-14-16 太陽銀座ビル3階
TEL:03-3541-0089(代表)
URL:https://owners-style.net
メール:info@owners-style.co.jp(担当:村松)