大家さんの約6割が高齢者の入居に抵抗感あり。そのうち約3割が孤独死保険や見守りサービスの導入で「入居OK」に!?

高齢化が進む日本社会において、賃貸住宅における高齢者の入居ニーズはますます高まっています。一方で、物件を貸し出す大家さんの側には、高齢者の受け入れに対して少なからず不安や懸念があるのも実情で、そうした課題の解消に向けて2025年10月には「改正住宅セーフティネット法」の施行が予定されています。オーナーズ・スタイルが発行した「大家さん白書2025」に収録されたデータから、大家さんが高齢入居者にどのような不安を感じているのか、そして実際に受け入れた際に経験する「困りごと」との間にあるギャップも検証します。
大家さんの約6割が単身高齢者の入居に抵抗感あり

まず、一人暮らしの高齢者(65歳以上)を賃貸物件の入居者として迎えることについて、大家さんがどのような意識を持っているかを見てみましょう。
『大家さん白書2025』の調査では、大家さんの約6割(63.0%)が「抵抗感がある」(19.0%)または「少しある」(36.9%)と回答しています。これは、多くの大家さんが高齢者の入居に対して、何らかの心理的なハードルを感じている現状を示しています。一方、「抵抗感がない」と回答した大家さんは26.0%存在しています。
高齢者入居で「不安に思うこと」の最多は孤独死、次いで認知症
では、大家さんは具体的にどのような点に不安を感じているのでしょうか。

一人暮らしの高齢者を入居者として迎える際に不安に思うことを複数回答で尋ねた結果、最も多くの大家さんが挙げたのは「孤独死」で、実に71.6%に達しました。これは他のどの不安要素よりも圧倒的に高く、高齢入居者を考える上で大家さんが抱く最大の懸念事項であることがわかります。
「孤独死」に次いで多かった不安は、「認知症」が51.1%、「病気・怪我」が47.0%、「ボヤ、火災」が44.1% と、健康面や生活面でのトラブルへの懸念が続きます。その他、「残置物の処分」が28.9%、「滞納」が27.6%、「賃貸借契約の相続や終了」が18.9% と、契約や金銭に関する不安も少なくありません。
自由記述コメントからは、「相続人の有無と相続人が入居者の後処理対応をしてくれる人物かどうかがわからない」「本人以外の家族・親戚が対応してくれるかわからない」といった、万が一の際の連絡先や対応者への具体的な不安の声も寄せられています。
実際にあった高齢者入居の「困りごと」は病気・怪我が最多
高齢者を受け入れる前には様々な不安を抱えている大家さんですが、実際に一人暮らしの高齢者を受け入れた経験のある大家さんは、どのような「困りごと」を経験しているのでしょうか。『大家さん白書2025』では、高齢者を入居者にした経験がある大家さんに、実際にあった困りごとについても尋ねています。

ここで興味深いのは、事前の「不安」として最も高かった「孤独死」が、実際に経験した「困りごと」としては12.8%にとどまっている点です。もちろん、孤独死が実際に起こった際の衝撃や対応の困難さは大きいものですが、不安に感じている大家さんの割合(71.6%)と比較すると、その発生率は受け入れ経験者の中では比較的低いという実態が見えてきます。
では、実際に困りごととして多かったのはどういった事柄なのでしょうか。最も多かったのは「病気・怪我」で14.7%でした。次いで「孤独死」12.8%、「滞納」11.7%、「残置物の処分」10.4%、「認知症」7.1% などが挙がっています。

このデータは、「孤独死」に対する大家さんの不安は非常に大きいものの、実際に高齢者を受け入れた際に直面する可能性がより高いのは、病気や怪我といった日常的な健康問題や、それに伴う様々な対応であることを示唆しています。受け入れ前の不安と現実の困りごとには、ある程度のギャップが存在すると言えるでしょう。
見守りサービスと孤独死保険の導入が受け入れ促進のカギに!
こうした大家さんの不安を軽減し、高齢者の受け入れを促進するためには、どのような支援が有効なのでしょうか。『大家さん白書2025』では、高齢入居者に抵抗感がある大家さんに対し、特定の支援サービスがあれば受け入れを検討するかを尋ねています。
その結果、抵抗感がある大家さんのうち、「倒れた時などに早期発見できる見守りサービスを導入したとしたら、高齢者を入居者として迎えますか?」という問いに対し、30.9%が「はい」と回答。また、「孤独死保険を契約したとしたら、高齢者を入居者として迎えますか?」という問いに対しても、31.6%が「はい」と回答しています。


これらのデータは、高齢入居者に抵抗を感じている大家さんのうち約3割が、見守りサービスや孤独死保険といった具体的なサポート体制があれば、受け入れを前向きに検討する可能性があることを明確に示しています。
特に孤独死への不安が高い大家さんにとって、孤独死保険は万が一の際の経済的・精神的な負担を軽減する有効な手段となり得るでしょう。見守りサービスも、早期発見や安否確認による不安軽減につながることが期待されます。
【オーナーズ・スタイル統括編集長・上田英貴のコメント】高齢化社会と賃貸経営のこれから
今回の『大家さん白書2025』で明らかになった、高齢者入居に関する大家さんの意識について、株式会社オーナーズ・スタイル代表取締役/統括編集長の上田英貴は次のように述べています。

(株)オーナーズ・スタイル 代表取締役 統括編集長 上田英貴
「高齢化社会において、賃貸住宅が高齢者の住まいとして果たす役割は増大しています。弊社の調査から、「孤独死」や「病気・怪我」といった大家さんの不安が、解決すべき「リアル」な社会課題であることは浮き彫りになっています。
大家さんが安心して高齢者を受け入れられるよう、孤独死保険や見守りサービスといった具体的なサポート体制の普及が不可欠です。特に、2025年10月に施行予定の改正住宅セーフティネット法による「居住サポート住宅」への支援創設は、高齢者の住まい確保に大きな期待を抱かせます。
オーナーズ・スタイルとしても、大家の皆さまをはじめ、関連業界や行政機関と連携し、誰もが安心して暮らすことができるような社会の実現に向けて貢献していきたいと考えております」
まとめ:データから見えた高齢者受け入れの課題と可能性
『大家さん白書2025』のデータからは、高齢入居者に対する大家さんの根強い抵抗感と、特に孤独死への強い不安がある一方で、実際の困りごととしては病気や怪我といった日常的な問題も多く発生している、という実態が明らかになりました。
しかし、見守りサービスや孤独死保険といった支援体制があれば、抵抗感のある大家さんのうち約3割が受け入れを検討する可能性があるというデータは、高齢者の住まい探しの選択肢を広げる上で、これらのサービスの普及・促進が非常に有効であることを示唆しています。
高齢入居者をさらに円滑に進めるためには、大家さんの不安の背景にある「リアル」を理解し、孤独死対策だけでなく、病気や怪我など、より頻繁に起こりうる事象への具体的な対応方法やサポート体制の情報提供を強化することが重要です。
そして、不安を軽減する見守りサービスや保険といった具体的な支援策を普及させ、大家さんが安心して高齢者を受け入れられる環境を社会全体で整備していくことが求められています。
【調査概要】
●調査手法 :郵送及びインターネット
●調査時期 :2024年12月
●対象者条件 :賃貸経営情報誌「オーナーズ・スタイル」読者の大家さん(関東、関西、東海エリア)、アパート、マンションを1棟以上所有している人
●有効回答数 :793人
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「大家さん白書2025」主な内容
Part 1:大家さんのプロフィール
オーナー様の属性、所有物件の規模や種類、経営姿勢についての全体像が把握できる内容です。
∟検討中のこと・お悩み
空室・老朽化・相続など賃貸経営における課題や関心テーマを把握すること ができます。
Part 2:賃貸住宅の建築
建築意向、土地状況、建築会社の選定や見学ニーズなど、建築計画の実態が明らかになります。
Part 3:不動産の購入・売却
購入・売却の動向や価格帯、運用意識など、投資・資産組み換えの傾向について情報が得られます。
Part 4:修繕・設備
修繕内容や費用感、設備更新の意識など、物件維持に関する実情を解明します。
Part 5:管理・仲介・家賃
管理委託状況、仲介業者への評価、家賃設定の実態を把握できます。
Part 6:相続・税務
相続対策の実施状況や関心度、税務に関する悩みが明らかになります。
Part 7:空室対策・トラブル
空室への対応や入居者トラブルの実例、ならびにその対策に関する傾向が示されています。
Part 8:高齢者・外国人・LGBTの受け入れ
多様な入居者対応の現状と課題に対する意識が把握できます。
Part 9:災害・コミュニティ・情報収集・資格取得
防災意識、地域連携、学びへの取り組みなど、社会との関わりを探っています。
Part 10:オーナーズ・スタイル誌・主催イベントの利用状況
情報収集やイベント活用の状況とニーズについて把握できます。
【付録1】:自主管理大家さんへのアンケート調査
自主管理を行うオーナー様の実情、管理手法や課題を集約しています。
【付録2】:大家さんの生の声(コメント集)
延べ865件の大家さんの自由記述をテーマ別に掲載し、現場のリアルを伝えています。
今後も、『大家さん白書2025』のデータから、賃貸経営に役立つ様々なテーマの記事をお届けしてまいります。ご期待ください。
メディア等に掲載する記事に本冊子内のデータを使用される際には、以下までお問い合わせください。
【本件に関するお問い合わせ】
株式会社オーナーズ・スタイル
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