貸付不動産の評価、どう変わる?「2026年度 税制改正大綱」大家さんが知っておくべきポイントを税理士が解説

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公開日:2026年3月11日
更新日:2026年3月11日
貸付不動産の評価、どう変わる?「2026年度 税制改正大綱」大家さんが知っておくべきポイントを税理士が解説1

2026(令和8)年度税制改大綱が公表されました。今回の注目は、相続対策の「王道」とされてきた貸付用不動産の評価見直しです。いま、大家さんが知っておくべき改正のポイントを解説します。

寄稿いただきました
貸付不動産の評価、どう変わる?「2026年度 税制改正大綱」大家さんが知っておくべきポイントを税理士が解説2

アンサーズ会計事務所 野上 浩二郎 氏

慶應義塾大学卒業後、大手税理士法人にて相続・事業承継・不動産に関わる税務等を中心とした業務に従事。相続・事業承継の豊富な実績を経て、2012年に税理士法人アンサーズ会計事務所を設立。資産家や中小企業オーナーの相続・承継の課題解決に尽力している。著書に「専門家のための事業承継の実務」(翔泳社)、「事業承継の失敗事例33」共著(東峰書房)等。

2026年度税制改正大綱。大家さんにかかわる改正点

貸付不動産の評価、どう変わる?「2026年度 税制改正大綱」大家さんが知っておくべきポイントを税理士が解説2

皆さんこんにちは。税理士の野上です。今回は、2025(令和7)年12月19日に公表され、同年12月26日に閣議決定された「2026(令和8)年度税制改正大綱」の中から、不動産オーナーの方に特に関係の深い「貸付用不動産の相続税・贈与税評価の見直し」について解説します。

今回の改正は、単なる評価ルールの微調整ではなく、これまで相続対策の定番とされてきたスキームに、はっきりとブレーキをかける内容となっています。さっそくみていきましょう。

なぜ今、貸付用不動産が見直されるのか?

相続税の評価をする際、亡くなった方の財産は「時価」で評価するのが原則です。

もっとも、実際の取引価格をひとつひとつ調べるのは現実的ではないため、実際には「財産評価基本通達」に基づく評価額を時価とみなして計算する実務が定着しています。

ところが近年、

・購入価格と相続税評価額に大きな差が生じる
・多額の借入れをして賃貸不動産を購入して、短期間で相続税評価額だけを圧縮する

といったケースが増え、相続税評価と実勢価格との乖離を利用した過度な節税が問題視されるようになりました。

そこで2024(令和6)年度の改正では、いわゆる「タワーマンション節税」に対する評価の見直しが行われました。しかし今回の改正では、対象がより広く「貸付用不動産全体」に及ぶ点が大きな特徴です。

これまでの評価の考え方を簡単に整理

貸付不動産の評価、どう変わる?「2026年度 税制改正大綱」大家さんが知っておくべきポイントを税理士が解説2

従来の相続税評価では、土地は相続税路線価をもとに形状補正などを行って評価し、さらに賃貸建物の敷地であれば「貸家建付地」となり評価が下がります。建物は固定資産税評価額を基準とし、貸している場合は「貸家」としてさらに評価減が認められます。

相続税路線価、固定資産税評価ともに、一般的には実勢価額よりも評価が低く設定されているうえに、賃貸不動産は自用不動産よりも評価減を受けることができます。そのため「借り入れをして賃貸物件を購入すると、相続税の課税対象額を大きく圧縮できる」という構造が長年続いてきました。

今回の改正のポイント

貸付不動産の評価、どう変わる?「2026年度 税制改正大綱」大家さんが知っておくべきポイントを税理士が解説2

❶取得から5年以内の貸付用不動産

今回の改正で最も大きな影響があるのが、「被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴って取得または新築した一定の貸付用不動産」についてです。

これらの不動産は、従来の財産評価基本通達による評価ではなく、「課税時期における通常の取引価額に相当する金額」で評価することとされました。

そして実務上は、特段の問題がなければ、「取得価額を基に、地価の変動などを考慮して計算した価額の80%」を目安として評価する仕組みが想定されています。

つまり、亡くなる(または贈与する)直前5年以内に購入した賃貸物件については、これまでのような大幅な評価圧縮が原則として使えなくなる、ということになります。

❷不動産小口化商品

今回の改正では、いわゆる不動産小口化商品についても改正が入りました。不動産小口化商品の対象となっている不動産については、取得時期にかかわらず、「通常の取引価額に相当する金額」によって評価することとされています。

実務では、事業者が提示している処分価格や買取価格、売買実例、定期報告書に記載された不動産価格などを参考に評価する仕組みが想定されています。

近年、「少額で始められる相続対策」として小口化商品を提案されるケースも増えていますが、相続税評価面でのメリットは大きく見直されることになります。

いつから適用されるのか

貸付不動産の評価、どう変わる?「2026年度 税制改正大綱」大家さんが知っておくべきポイントを税理士が解説2

今回の改正の適用時期は、2027(令和9)年1月1日以後に相続または贈与により取得する財産、とされています。

したがって、2026(令和8)年中に発生した相続や贈与については、原則として今回の改正は適用されません。ただし、「改正前だから大丈夫」と考えて、明らかに不自然な駆け込み対策を行った場合には、従来どおり租税回避行為として否認されるリスクがあるため、注意が必要です。

なお、一定の要件を満たす新築家屋については経過措置も設けられていますが、細かな取扱いは今後公表される通達を確認する必要があります。

大家さんが今、意識しておきたいこと

今回の改正で明確になったのは、「短期間で相続税評価だけを下げる対策」は、今後ますます難しくなる、という方向性です。

一方で、賃貸経営そのものの収益性や、長期的な資産形成としての不動産投資が否定されたわけではありません。

これからは、

・いつ取得した不動産なのか
・誰が、いつ相続や贈与を受ける

可能性があるのかといった点を、より中長期の視点で整理しておくことが重要になります。

不動産は金額が大きく、動かすにも時間がかかる資産です。制度が変わってからあわてて動くのではなく、改正内容を踏まえたうえで、早めにご自身の資産状況を棚卸し、専門家の助言を受けながら適切な対策を行っておくことをおすすめします。

今後、法律や通達が正式に公表される予定です。引き続き最新情報に注目していきましょう。

※この記事内のデータ、数値などに関しては2026年3月1日時点の情報です。

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