確定申告は“年1回の苦行”?不動産オーナーの8割が悩み。負担の正体と改善のポイントを徹底解説
賃貸住宅を所有する不動産オーナーの約8割が、確定申告に「負担・不安を感じている」──そんな実態が、アセットテクノロジー株式会社が実施した調査で明らかになりました。経費の線引き、減価償却の計算、税制改正への対応と、専門知識が求められる局面は年々増えています。「税理士に頼みたいけれど、誰に頼めばいいか分からない」という声も4割を超えるなど、税理士への依頼に踏み切れないケースも少なくありません。今回は、賃貸住宅の経営者の視点から調査結果を読み解き、今後求められる支援の方向性を探ります。
賃貸オーナーの約8割が「確定申告が負担」。その実態とは
今回の調査によれば、不動産収入に関する確定申告について、「非常に負担を感じている」「やや負担を感じている」と回答した人は合計で74.7%(約75%)に上りました。調査では「約8割」が確定申告に負担を感じているとも表現されており、賃貸オーナーにとって確定申告が重大なストレス要因になっていることがうかがえます。

グラフ画像の引用元:「不動産オーナーの確定申告に関する実態調査」|アセットテクノロジー(株)
賃貸住宅の経営とは、入居者募集や空室対策、建物の維持管理、修繕の判断、資金繰りなど、日常的に多くの意思決定を伴う事業といえます。そのうえで年に一度の確定申告は必要不可欠であり、1年間の収支を整理し、税額を確定させる必要があります。
特に複数の物件を所有するオーナーや、区分と一棟を併有するケースなどでは、収入経路や支出科目が複雑化し、確認作業だけでも相当な時間を要します。それがほかに本業を持つ「兼業オーナー」であれば、限られた時間の中で帳簿整理を行わなければならず、精神的負担はさらに大きくなります。
確定申告は単なる事務作業ではなく、経営成果を左右する重要プロセスであるからこそ、その負担感の高さが経営全体のストレス要因となっていることは明白です。
「どこまで経費?」「減価償却が難しい」申告作業を阻む2大ハードル
確定申告で負担を感じる作業について聞いてみたところ、トップは58.7%で「経費の仕分け・分類」でした。

グラフ画像の引用元:「不動産オーナーの確定申告に関する実態調査」|アセットテクノロジー(株)
賃貸住宅を経営するにあたっては、管理委託費、修繕費、原状回復費、火災保険料、固定資産税、借入金利息といった多様な支出が発生します。しかし、どこまでを経費として計上できるのか、修繕費と資本的支出のどちらに該当するのかといった判断は、税務知識がなければ簡単ではありません。判断を誤れば、過少申告や過大申告につながり、将来的なリスクを抱えることにもつながります。
また、40.7%の人が負担に感じている「減価償却費」の計算も大きな壁です。建物の構造や耐用年数、取得価格の按分などを正確に理解しなければ、適切な税額を導き出すことはできません。
節税を意識する賃貸経営者ほど、誤りによる損失や税務調査リスクを懸念し、慎重にならざるを得ません。その結果、判断に時間を要し、申告業務が長期化する傾向も見られます。
税務への不安が投資判断にも影響。「節税できているか分からない」が4割
「不動産収入における確定申告において、分かりづらさ・不安を感じる」と回答した人は約8割に達しました。

グラフ画像の引用元:「不動産オーナーの確定申告に関する実態調査」|アセットテクノロジー(株)
その中でも「経費として計上できる範囲が分かりづらい(58.5%)」が最多で、さらに「減価償却の仕組みや計算方法(45.0%)」「計算や記載にミスがないか不安(40.5%)」が続いています。

グラフ画像の引用元:「不動産オーナーの確定申告に関する実態調査」|アセットテクノロジー(株)
また、「節税対策が十分にできているか分からない(39.0%)」、「税制改正に対応できているか不安(30.0%)」といった声も挙がりました。当然ながら申告誤りによる損失は避けたいところですが、申告ミスが過少申告によるペナルティリスクにつながることもあり、その慎重さを必要とする作業には少なくないストレスがあるようです。
賃貸経営は長期的な資産形成を前提とするため、税務判断の積み重ねが将来のキャッシュフローに直結します。しかし税制は複雑で、特例や改正も多く、情報収集には相応の時間と労力が必要です。制度の理解が不十分なままですと、積極的な設備投資や買い増し判断にも不必要なブレーキがかかりかねません。
税務不安は単なる心理的問題ではなく、経営戦略そのものに影響を与える要素と言えます。
収支データがバラバラ…一元管理できているオーナーは2割以下
収支データの管理方法について聞いてみたところ、「管理会社から届く明細をそのまま保管(22.9%)」「Excelで管理(21.7%)」「紙の帳簿で管理(21.3%)」が拮抗しています。

グラフ画像の引用元:「不動産オーナーの確定申告に関する実態調査」|アセットテクノロジー(株)
日常的な収支管理が体系化されていないと、確定申告の時期にまとめて整理することになり、作業は一気に煩雑化します。特に複数の物件を保有する賃貸経営者にとって、物件別の収支把握は融資戦略や修繕計画を立てるうえでも不可欠です。にもかかわらず、情報が紙資料や複数ファイルに散在していれば、経営判断のスピードも精度も落ちてしまいます。
確定申告の負担軽減は、単に申告期の工夫だけでは解決しません。日常のデータ管理を一元化し、リアルタイムで収支状況を把握できる体制づくりこそが、長期的な賃貸経営の安定化につながります。
「依頼したくても依頼できない」税理士探しの壁が専門家活用を妨げる
先述の「収支データの管理方法」について、わずか4.7%の方が「税理士に全て任せている」と回答していますが、「税理士など専門家へ依頼したい」という方は、じつに8割を超えることが明らかになっています。

グラフ画像の引用元:「不動産オーナーの確定申告に関する実態調査」|アセットテクノロジー(株)
しかしその8割の中には、「依頼したいと思ったが依頼していない」層も約4割存在します。その最大の理由は「どの税理士に頼めばよいか分からない」というものでした。
賃貸経営に精通した税理士かどうかを見極める基準が分からず、費用感や対応範囲も不透明なままでは、依頼に踏み切るのは容易ではありません。不動産特有の論点に強い専門家を探すには情報収集が必要ですが、多忙なオーナーにとってそれは大きな負担です。

グラフ画像の引用元:「不動産オーナーの確定申告に関する実態調査」|アセットテクノロジー(株)
その結果、「どの税理士に頼めばいいか分からなったから(47.3%)」、「自分でできる範囲だと思った(36.6%)」、「不動産に詳しい税理士を見つけられなかったから(34.4%)」という判断をすることになり、専門家の活用を見送るケースが生じています。
本来であれば、税理士は節税の提案や高度な資金戦略を支援するパートナーとなる存在です。その活用が進まない現状は、賃貸経営の潜在的な成長機会を逃している可能性もあります。
管理会社経由の税務サポートに7割超が期待。ワンストップ支援が鍵に

グラフ画像の引用元:「不動産オーナーの確定申告に関する実態調査」|アセットテクノロジー(株)
「不動産の管理会社経由で提携税理士に確定申告を依頼できるサービス」については、7割超が利用意向を示しました。

グラフ画像の引用元:「不動産オーナーの確定申告に関する実態調査」|アセットテクノロジー(株)
その理由として、「不動産に詳しい税理士を紹介してもらえる(52.7%)」、「管理会社との信頼関係があるため安心(44.0%)」、「自分で税理士を探す手間が省ける(40.7%)」、「物件情報を共有しているので説明の手間が省ける(39.6%)」などが挙げられています。
賃貸経営者にとって、管理会社は日常業務を支える重要なパートナーです。その延長線上で税務支援が受けられれば、心理的なハードルは大きく下がります。

グラフ画像の引用元:「不動産オーナーの確定申告に関する実態調査」|アセットテクノロジー(株)
また、収支データをアプリで一元管理し、そのまま確定申告に活用できる仕組みへの期待も高く、管理・会計・税務を横断した支援体制の必要性が明確になりました。
今後は、管理会社がハブとなり、データ連携と専門家の紹介を組み合わせた「ワンストップ型サービス」が、賃貸住宅の経営における標準モデルになる可能性もあります。
まとめ
今回の調査は、賃貸住宅の経営における確定申告が単なる年次業務ではなく、経営基盤を左右する重要課題であることを示唆しています。
約8割が負担や不安を抱え、経費の線引きや減価償却といった専門性の高い領域で判断に迷っています。その一方で、税理士への依頼意向は非常に高いにもかかわらず、「どの税理士に頼めばよいか分からない」という理由で行動に移せない層が数多く存在しています。これは能力や意欲の問題ではなく、専門家との接点の不足という構造的な課題といえるでしょう。
今後の賃貸経営では、日常の収支管理をデジタル化・一元化し、管理会社と税務の専門家が連携する仕組みづくりが重要になります。税務を“年に一度の負担”として切り離すのではなく、“日常経営の延長線上”に組み込むことで、オーナーはより戦略的な投資判断に集中できるようになります。
確定申告の不安を解消することは、キャッシュフローの最大化や資産拡大の戦略における精度の向上にも直結します。賃貸経営の質を高めるうえで、税務面の支援体制の再構築は避けて通れないテーマといえるでしょう。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2026年2月時点のものです。
取材・文/御坂 真琴
ライタープロフィール
御坂 真琴(みさか・まこと)
情報誌制作会社に25年勤務。新築、土地活用、リフォームなど、住宅分野に関わるプリプレス工程の制作進行から誌面制作のディレクター・ライターを経てフリーランスに。ハウスメーカーから地場の工務店、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、販売促進ツールなどの制作を手がける。
















