【土地白書】令和7年版を国交省が発表!土地に関する動向や今年行われる基本的施策をまとめて解説

国土交通省が毎年発表している「土地白書」。国が地価をはじめとした土地取引の現状について調査し、これまでとってきた施策や、現状をふまえて今後どのような施策を図るのかをまとめたものです。全119ページにわたる「土地白書」から、賃貸経営に関連する部分を抜粋してご紹介します。
【土地に関する動向】地価公示は4年連続で上昇
土地白書は、第1部が土地に関する動向、第2部が前年度に土地に関して行った基本的施策、第3部が当年の施策という3部構成になっています。
まず地価について、令和7年1月1日時点の公示地価による全国の地価動向は、全用途・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇し、上昇幅が拡大しました。
三大都市圏の平均変動率でも同様の傾向で、特に東京圏と大阪圏では上昇幅の拡大傾向が継続。ただし名古屋圏では上昇幅がやや縮小しています。
地方圏では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇。そのうち地方四市(札幌市、仙台市、広島市及び福岡市)では上昇幅がやや縮小したものの、その他の地域ではおおむね拡大傾向が継続しています。
図表|地価変動率の推移(年間)

引用元:土地白書|国土交通省
新型コロナウイルス感染症の影響により地価が下落したのが令和3年。コロナ流行の収束とともに回復、そこから上昇が続いていることになります。
東京23区の賃料指数はこの15年で約1.24倍に
「不動産市場の動向」の節では、新築・中古マンションの価格の推移や在庫戸数、契約数や賃料の推移などが報告されています。
都市圏ではすでに実感している賃貸オーナーが多くいると思われますが、賃料も上昇傾向にあります。令和6年10~12月における賃貸マンションの賃料は、平成21年1~3月期を100とした場合、東京23区で124.71、大阪市では135.93となりました。
地価と同様に、新型コロナウイルスの収束以降、上がり続けていることがわかります。
図表|東京23区・大阪市のマンション賃料指数の推移

引用元:土地白書|国土交通省
顕在化する空き地・空き家問題に関するアンケート

「土地・不動産の所有・利用・管理に関する意識」の節では、社会問題となっている空き地・空き家の問題について所有者にアンケート調査を実施。
日常的に利用されていない土地の管理状況については「管理が行き届いていない」「管理は行き届いている」がそれぞれ4割強でほぼ同数、残りが「どちらとも言えない」でした。
また、「日常的に利用されていない土地を今後も保有し続けたいと考えるか」という質問に「売れる見込みはないが、手放せるものなら手放したい」と回答した人を対象に、「一定の管理費を負担する代わりに土地を手放せるとしたら、おおよそ何年分の管理費用までなら負担できるか」を質問。
結果は、「1〜5年分」が35.7%、「6~10年分」が11.2%、「11~15年分」が2.0%、「16~20年分」が2.4%。費用をかけても土地を手放したいと考えている人が過半数にのぼることが明らかになりました。
【令和6年度施策】登記義務化や「不動産ライブラリ」
第2部では、「令和6年度土地に関して講じた基本的施策」として土地利用の促進や地方創生・都市再生への取り組みについて紹介しています。

例えば、令和5年施行の「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)」改正により新たに創設された「管理不全空家等」除去の促進がそのひとつ。さらに、相続による所有者不明土地をなくすために、令和6年4月1日には「民法等の一部を改正する法律」により「不動産登記法」の一部を改正。相続登記の義務化や登記手続きの負担軽減策など新たな制度を設けました。
また、同じく令和6年4月1日より、不動産取引の円滑化のための公的サービスとして「不動産情報ライブラリ」を公開しました。これは、地価公示や都道府県地価調査、不動産取引価格等の価格情報、防災情報、都市計画情報、周辺施設情報など不動産に関するオープンデータを地図上に表示する仕組みです。令和7年1月末時点の累計ページビュー数は、1,544万3,990回となっています。
土地税制については、令和6年度税制改正で以下のような対応を行っています。
(1) | 土地に係る固定資産税について、①現行の負担調整措置、②市町村等が一定の税負担の引き下げを可能とする条例減額制度を3年間延長(令和9年3月31日まで) |
(2) | 土地等に係る不動産取得税について、①宅地評価土地の取得に係る不動産取得税の課税標準の特例措置(1/2控除)、②土地等の取得に係る不動産取得税の税率の特例措置(特例:3%、本則:4%)を3年間延長(令和9年3月31日まで) |
(3) | 不動産譲渡契約書等に係る印紙税の特例措置を3年間延長(令和9年3月31日まで) |
【令和7年度施策】不動産IDの2年後運用開始を目指す
前年度をふまえ、令和7年度の土地に関する基本的施策について述べているのが第3部です。
第3部は第2部と同じ構成で、「適正な土地利用及び管理の確保を図るための施策」「土地の取引に関する施策」など5章から成り立っています。
賃貸経営と関連が深いのが第2章「土地の取引に関する施策」で、令和7年度は、令和4年より可能になった不動産取引のオンライン化環境整備をはじめ、不動産DXの推進を図るとしています。
日本郵便(株)が保有するデータを利用した不動産IDについては、課題の洗い出しと解決手法の検討・実証を行ったうえで、令和9年度中の一部試験運用開始を目指しています。

令和7年度税制改正では、リート及び特定目的会社が取得する不動産に係る特例措置が5年間延長されるほか、不動産特定共同事業において取得される不動産に係る特例措置について、一部要件の拡充等をしたうえで2年間延長。他に「所有者不明土地法」に基づく地域福利増進事業に係る特例措置の2年間延長などが予定されています。
さらに、令和6年にはじまった相続登記の義務化に加えて、令和8年4月1日施行予定の「住所等変更登記の義務化」の内容を周知することで円滑な活用につなげる、としています。
まとめ
「土地白書」は国交省のホームページで公開されており、誰でも見ることができます。その内容は明日の賃貸経営にすぐ役立つものではありませんが、国の土地や不動産に関する方針をつかむには有効です。
今後の税制改正などで慌てないためにも、時間があるときにざっと目を通しておくと良いでしょう。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2025年6月10日時点のものです。
取材・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。
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