【最新】今後の地価動向と「トランプショック による市場への影響|アナリスト・幸田昌則の不動産市況

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公開日:2025年5月31日
更新日:2025年6月5日
【最新】今後の地価動向と「トランプショック による市場への影響|アナリスト・幸田昌則の不動産市況1

公示地価が発表され、多くの都市・地点で上昇が目立ちました。住宅需要が減速する中で、富裕層や企業(経営者)の旺盛な購買力が地価を下支えしました。そこに起こった「トランプショック」。不動産市場に与える影響について、不動産市況アナリスト・幸田氏が解説します。

寄稿いただきました
【最新】今後の地価動向と「トランプショック による市場への影響|アナリスト・幸田昌則の不動産市況2

不動産市況アナリスト 幸田 昌則氏

福岡県出身。三大都市圏の住宅情報誌の創刊責任者を歴任。1989年11月に発表した「関西圏から不動産価格が大幅に下落する」は、バブル崩壊前の業界に波紋を呼び、予測の正確さを実証した。著書に「アフターコロナ時代の不動産の公式」(日本経済新聞出版)他、多数。「不動産バブル 静かな崩壊」(日本経済新聞出版)が好評発売中。

2025年の公示地価を検証

【最新】今後の地価動向と「トランプショック による市場への影響|アナリスト・幸田昌則の不動産市況2

3月に今年の公示地価が発表された。全国全用途の平均は4年連続で上昇したが、地域や地点による地価の格差拡大は著しく、二極化が一段と進行した。地価動向の特徴を解説してみよう。

【最新】今後の地価動向と「トランプショック による市場への影響|アナリスト・幸田昌則の不動産市況2

●東京中心部の商業地価・住宅地価は上昇が続く(図表①)
●住宅地では割安感のあった東京都足立区や千葉県流山市などの周辺地区の需要も活発(図表②)
●都心部・駅近の地点は、高値圏で推移
●インバウンド需要拡大による地価上昇が復活。浅草などのホテル用地の需要は旺盛(図表②)
●富裕層が物件を求める地域では、地価の上昇が目立つ。大都市の中心部や、軽井沢などの高級リゾート地が好例(図表③)

図表②[東京圏]2025年地価公示|年間変動率の上位地点

住宅地
順位 所在 上昇率(%)
1 目黒区青葉台4丁目580番7 18.9
2 流山市西初石4丁目369番29 18.7
3 港区港南3丁目6番7 18.6
4 流山市東初石2丁目160番2 18.5
5 流山市西深井字八ノ割640番4 18.4
6 流山市平和台5丁目36番18 16.9
7 足立区綾瀬1丁目111番2外 16.6

 

商業地
順位 所在 上昇率(%)
1 渋谷区桜丘町15番6外 32.7
2 台東区浅草1丁目16番14外 29.0
3 台東区西浅草2丁目66番2 25.9
4 渋谷区神山町7番9 24.3
5 台東区西浅草3丁目2番10 23.8

 

次いで、今後の地価予想をしてみたい。

❶建築費と金利の上昇に加え、トランプショックによる不確実性の高まりで、買い控えや様子見の姿勢が強まり、地価上昇はピークアウト。

❷富裕層・企業が物件を求めるエリアは高値で推移してきたが、株価の下落による地価の変化も予想される。

❸地価の「下落エリア」は、緩やかに拡大傾向へ。

❹市場全体では、地価の二極化が一段と進行。交通や生活の利便性(希少性)の良否などで差が広がる。

今回の公示地価の上昇は大都市で著しい。それでも相続対策など、富裕層による節税需要は、底堅く続いていくものと思われる。

今後の地価動向は、金利動向と金融機関の融資姿勢がカギを握る。加えて、建築コストの高止まり、人手不足、働き方改革なども、地価を押し下げる要因となる。

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【最新】今後の地価動向と「トランプショック による市場への影響|アナリスト・幸田昌則の不動産市況2

トランプ関税が経済全体に不透明さと不確実性を与える

【最新】今後の地価動向と「トランプショック による市場への影響|アナリスト・幸田昌則の不動産市況2

世の中の変化は、いつも突然にやってくる。コロナ禍が収束したら、次は「トランプショック」である。アメリカのトランプ大統領に、日本だけでなく世界中が振り回されている。

トランプ政権の関税政策は保護主義そのものであり、世界経済を停滞させる可能性が高まっている。全世界を相手にした関税障壁を作れば、景気が悪化していくだろうと、経済については素人である私にも理解できる。

過去の日本、そして世界の歴史を見れば、鎖国政策を続けた時代・国には経済成長はない。関税政策は、経済的鎖国と言えるものであり、世界のみならず、米国自身の経済成長を妨げることになると思われる。

すでに、4月4日の米ニューヨーク株式市場では、主要指標のダウ工業株平均が2200ドル超下落し、史上3番目の下げ幅を記録した。ダウ平均株価は4月3日と4日の2日間で続落、米国の株式市場で約970兆円が消失してしまったと報じられた。また日本でも日経平均株価が急落し、日本政府は対応に追われることになった。

そして影響は株価だけでなく為替にもおよび、今後は経済全体の失速、インフレ・物価上昇の長期化による国民生活への悪影響も懸念される。

アメリカのトランプ大統領が世界中を相手に仕掛けた関税政策は、経済全体に不透明さと不確実性、不安を高めている。企業も個人も投資マインドが冷え、新たな事業計画を控えたり、中止したりすることにつながる。

不動産バブルの崩壊が顕在化。今後の動向を考える

今回の想定以上の関税政策の影響について、十分に説明することは私にはできない。コロナ感染症の時と同様に、過去に経験したことがないもので、しかも二転三転する状況である。よって、こうした状況を踏まえ、日本の不動産市場にはどんな影響をおよぼすのか、現時点での私見として、以下を読んでいただきたい。

❶自動車産業に限らず、輸出産業を中心に、影響の大小はあっても、業績の落ち込みは避けられない。これまで不動産市場の活況を支えてきた法人の需要が減退する。

❷株価の下落などで、富裕層・経営者の不動産購入に、様子見や先送りの動きが出てくる。投資・節税目的の購入や、リゾート・セカンドハウスの購入にブレーキがかかり、申し込み後のキャンセルも発生するおそれ。

❸賃上げの動きが続いてきたが、今年夏・冬のボーナス、来春の賃上げにブレーキがかかることも考えられる。個人の購買力が低下し、住宅ローンの滞納も増加へ。

❹世界中の経済停滞、円高などが進行すれば「商業地価」の押し下げが想定される。インバウンドにも影響し、訪日外国人は減少の可能性も。

❺関税政策によるインフレの進行が止まらなければ、購買力が低下し、住宅需要の減速傾向が強まる。

❻景気の低迷で、資金繰りの悪化や、借金返済に窮する企業・人が増加。不動産の「売り」が出てくる時代となる。優良な不動産を購入するチャンスとなることも、十分に考えられる。

❼経済・生活全体の先行き不安や不透明さから「生活防衛」の姿勢が強まる。住宅・不動産需要が縮小し、価格調整が顕在化していく。

トランプ大統領は、選挙前の「自分の公約」を実行しただけだが、その関税政策は全世界を相手にしたもので、今後は、企業活動や国民生活にもおよんでいくことが容易に想定される。あわせて不動産市況にも変化が生まれてくることは否定できない。

※この記事は2025年5月10日時点の情報をもとに制作しています。

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