【最新】需要と供給、地価動向などにも影響。2025年の市況は金融とインフレの進行に左右される|アナリスト・幸田昌則の不動産市況
- 市況・マーケット

一段と進行するインフレに賃金上昇は追いつけず、建築費は高止まり。生活防衛で低・中所得層の住宅の購入需要が減る一方、富裕層と高額所得者は投資に意欲的。所得と資産の格差拡大で、購買姿勢も価格と希少性の二極化へ。いよいよ転機を迎える不動産市況を幸田氏が解説します。

福岡県出身。三大都市圏の住宅情報誌の創刊責任者を歴任。1989年11月に発表した「関西圏から不動産価格が大幅に下落する」は、バブル崩壊前の業界に波紋を呼び、予測の正確さを実証した。著書に「アフターコロナ時代の不動産の公式」(日本経済新聞出版)他、多数。3月に「不動産バブル 静かな崩壊」(日本経済新聞出版)を上梓。
この記事のPoint
●住宅の新規供給数は減少するも、賃貸住宅の供給は底堅い動き
●富裕層の不動産投資は活発。「希少性」に価値を置いた購買姿勢
●2025年は金融機関の選別融資とインフレの進行度合いに注目を
新規住宅の着工・供給は減少。賃貸住宅は底堅く推移

この1年間の日本の物価上昇は著しく、インフレは一段と進行した。その結果、多くの人々の家計は厳しさを増しており、住宅ローンの返済や家賃の滞納も増加している。衆議院選挙で「103万円の壁」への関心が高まったことも、現下の生活環境と無関係ではないだろう。
2024年、小売業界ではショッキングなニュースが流れた。ニトリが店舗用地としてすでに仕入れ済みの土地への建設着工を、3年間ほど先送りすると発表した。さらにイオンも、ショッピング・モールの建設を当面中止すると決断。
その後、ホテル業界のアパグループもまた、従来のような新規供給を控えるとした。これまで需要が拡大してきた倉庫・配送センターなどの物流施設についても、新規着工を延長・中止する例が少なくない。
この決断の背景には、建築コストの高騰があり(図表①)、現在の建築コストでは事業採算が合わないと判断したものと考えられる。
図表①[東京]建築費指数の推移(2015年を100とする)

加えて、建設業界では人手不足や働き方改革による労働時間の制約があり、工事期間の長期化も懸念されている。
こうした理由を背景に、2025年の新規住宅(新築マンション・建売住宅・注文住宅など)の供給数は減っていくと予想される。その影響を受けて中古住宅への関心が高まり、中古住宅市場は堅調に推移していくだろう。
賃貸アパートの新規供給数については、建築コストの高騰が続く中でも、急激な落ち込みはなく、底堅く推移していくことが想定される(図表②)。
図表②[首都圏]貸家着工戸数の推移

その要因の一つは、賃貸アパートの購入や発注をする人の大半は富裕層や高額所得者であり、その目的は節税対策であることが多いからだ。建築コストの高騰とは関係なく、一定数の新規着工が見込まれる。
住宅・商業用を含めた不動産市場全体の新規供給量としては、減少傾向が続くものと考えている。ここに住宅ローンの金利上昇などの新たな要因が加われば、需要の縮小や、さらなる供給控えの動きが出ることも否定できない。
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インフレ経済下で生活防衛意識が強まる

欧米ではインフレの進行が鈍化したとの判断で、政策金利の引き下げが実施されているが、日本でのインフレは一段と進行しているように感じる。筆者は経済の専門家ではないので、今後の動きについての予想は出来ないが、過去の例を見ると、インフレの収束は容易ではないことが分かる。
2024年は賃金の上昇が見られたが、急激な物価上昇によって実質賃金は上昇せず、むしろ低下していた。2025年も同様に物価の上昇は続くと思われる。インフレ率を上回る賃金の上昇も容易ではないと考えられることから、多くの人、特に低・中所得者層の家計は圧迫され、購買力が落ち込むことは確実となるだろう。
個人消費は伸びず、生活防衛意識は時の経過と共に強まっていくことが想定される。賃貸住宅市場では、全国的に入居者の退去事例が減少している。この背景を聞くと、「転居すると引越し費用が発生するので、今の住まいのままで」という答えがあるという。その引越し費用は、以前とは比較できないほどの値上がりとなっている。
住宅の購入についても、購買力が低下している人が増えているため、需要は緩やかに縮小に向かい、住宅価格の調整が2025年3月期末に向けて行われると予想している。
地価はピークアウト。購買姿勢は二極化へ
2024年9月発表の基準地価を見ると、住宅地・商業地、さらに工業用地など、全用途平均で地価が上昇している(図表③)。
図表③[首都圏]基準地価・住宅地価の推移(2012年を100とする)

一部の地域では、高騰し過ぎて取得しても事業採算が合わなくなっている。建築コストの上昇・高止まりに加えて、金利が上昇局面に入れば地価の押し下げ要因にもなる。今後、地価のさらなる上昇は見込めず、ピークアウトして調整色が強まっていくことになる。
不動産の購入について、インフレで生活状況が厳しくなる人は「価格重視」の購買姿勢を強めていくが、富裕層や高額所得者の購買姿勢は、立地条件などの「希少性」に価値を置くことが多く、価格で判断する人は少ない。したがって、希少価値のある不動産については、株価の暴落、地震などの大規模な自然災害などがなければ、値崩れの可能性は当面ないものと思われる。
購買姿勢の二極化は、人口減少社会、所得や資産の格差進行で、ますます鮮明になっていくことは必至と言える。
新たな年、市況を左右する金融とインフレの進行度合い

2025年は金融とインフレの進み具合に気を付ける必要がある。インフレは続くと考えられ、不動産市場や生活意識・家計などに与える影響は少なくない。
また最も注視しておきたい事は、金融機関の融資姿勢である。
図表④新規貸出金利の6カ月移動平均推移

金利引き上げは既定路線にあると言えるが(図表④)、選別融資などの実質的な引き締めがどこまで強くなっていくかで、市況が左右される年になる。
※この記事は2024年11月26日時点の情報をもとに制作しています。
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