【最新】不動産市況アナリストが解説!止まらないインフレと金融情勢の変化が懸念材料。2024年の不動産市況と展望

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公開日:2024年1月25日
更新日:2024年2月20日
【最新】不動産市況アナリストが解説!止まらないインフレと金融情勢の変化が懸念材料。2024年の不動産市況と展望1

昨今の物価上昇が著しくなっています。同一商品で年間に数回値上げされた食料品も珍しくなく、ガソリン代も高値水準で推移。インフレの進行で家計が圧迫され、賃金が上昇しても可処分所得は低下傾向が続いています。建築費の上昇により、住宅メーカーやリフォーム業界も苦境に。混迷期を迎えている市場の今後を、不動産市況アナリストの幸田氏が解説します。

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【最新】不動産市況アナリストが解説!止まらないインフレと金融情勢の変化が懸念材料。2024年の不動産市況と展望2

不動産市況アナリスト 幸田 昌則氏

福岡県出身。三大都市圏の住宅情報誌の創刊責任者を歴任。1989年11月に発表した「関西圏から不動産価格が大幅に下落する」は、バブル崩壊前の業界に波紋を呼び、予測の正確さを実証した。著書に「アフターコロナ時代の不動産の公式」(日本経済新聞出版)他、多数。

不動産を取り巻く環境は大転換期へと移行

【最新】不動産市況アナリストが解説!止まらないインフレと金融情勢の変化が懸念材料。2024年の不動産市況と展望2

今年は、能登半島での震災、そして国会議員の逮捕など、波乱の幕開けとなったが、年初に当たり、2024年の住宅・不動産全体の市場動向を予測してみたい。

2023年秋以降、住宅やオフィス・店舗市況は、10年ぶりの大変化となったが、その要因の一つが、インフレの進行であり、不動産業界と顧客の双方に大きなダメージを与えた。2024年は、止まらないインフレに加え、金融情勢の変化という、新たな懸念材料が予測されるようになってきた。

日銀の植田新総裁の就任後も、金融緩和政策が維持されてきたが、急激な円安の進行などの副作用も認識されるようになり、政策見直しの議論も活発になっている。「金利のある世界」の到来が現実味を帯びてきているが、金利の上昇は、不動産市況に多大な影響を及ぼすことになる。

インフレと金融動向に左右されるであろう今年の不動産市場は、デフレからインフレへ、金利の無い時代からある時代へと、取り巻く環境が反転することが想定され、新しい時代を迎えることになる。アベノミクス政策以降の、需要の拡大・価格の上昇に、終止符が打たれることが予想される。

新規供給量と取引件数が減少。市場の在庫が増えている

街中には新築戸建て住宅の完成在庫(売れ残り)が数多くみられる(図表①)。地価高騰と建築費の値上がりで販売価格が上昇。一方で、顧客の懐具合はインフレで厳しくなり、購買力は低下、成約件数が急減している。

同様の現象は中古マンション・流通(中古)戸建ての市場でも見られ、在庫増加が加速している(図表②)。土地取引についても、土地不足が続いていたが、最近では在庫の増加が明白となり(図表③)、売り主の一部は値下げに応じるなど、姿勢は軟化している。

図表①【首都圏】新築戸建て(建売住宅)在庫件数の推移
【最新】不動産市況アナリストが解説!止まらないインフレと金融情勢の変化が懸念材料。2024年の不動産市況と展望2

「不動産流通機構」データより

図表②【愛知県】売り出し中物件数の推移
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「不動産流通機構」データより

図表③【中部圏】土地 売り物件数の推移
【最新】不動産市況アナリストが解説!止まらないインフレと金融情勢の変化が懸念材料。2024年の不動産市況と展望2

「不動産流通機構」データより

住宅市場では3月の年度末に在庫処分・価格調整が想定されるが、地価や建築費の高値に加えて、人手不足もあり、新規供給は先細り、中古流通市場に関心が移っていくことになるだろう。

「金利がある」時代へ。融資姿勢にも厳しさが表れている

【最新】不動産市況アナリストが解説!止まらないインフレと金融情勢の変化が懸念材料。2024年の不動産市況と展望2

昨年10月の日銀の会合以降、マイナス金利政策の解除を含む「長期緩和の転換」に向けた動きが、少しずつ見られるようになってきた。「金利の存在する」時代に向けた地ならしで、今春にも金利のある時代へと踏み出す可能性が増しつつある。

すでに、欧米では急ピッチの金利引き上げが行われてきたが、その影響は、住宅・不動産市況に大きな打撃をもたらしている。2024年1月時点の米国の住宅ローン金利は7%前後だが、取引量は減少していて、価格の調整も見られる。

また、欧州の変動金利の住宅ローンを採用している国々では、取引件数の減少、価格の値下がりが著しいと言われている。日本では、住宅ローンの大半が変動金利であり、金利上昇の影響は少なくないだろう。ただ、欧米とは異なり、急激な金利引き上げの可能性は低いと思われるが、家計がインフレで圧迫される中、影響は避けられない。

金融機関では、すでに、融資の際の担保評価、顧客の支払い能力などについて、警戒を強めている。この動きは、最近の住宅ローンの破綻数の増加、家賃滞納者の増加などで、さらに強まっていくことは必至だろう。

これまでの「誰にでも、いくらでも貸す」時代から、顧客や不動産、個々の状況を考えた「選別融資」の姿勢が強まることになる。

価格の格差拡大。二極化現象が一段と強まる

2024年も、住宅・不動産価格の二極化が進行していく。図表④は、名古屋市内の区ごとの住宅地価を示したものだが、中区とその他の区とでは価格に大きな差異があり、年を重ねるごとに拡大傾向にある。

図表④【名古屋市】住宅地 公示地価平均価格
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国土交通省「地価公示」データより

地点格差は、日本、そして全世界でも見られるが、その主な要因は格差社会と人口集中の度合いにある。コロナ禍とインフレの進行は、個人や企業の所得・資産の格差を拡大させた。不動産も、質が厳しく問われる時代となり、地域・地点による価格差は、今年も進むことになる。

人生100年時代。終活に向けた動きが活発化

【最新】不動産市況アナリストが解説!止まらないインフレと金融情勢の変化が懸念材料。2024年の不動産市況と展望2

この数年間、不動産市場全体の取引の実態を見ると、売り主・買い主双方の立場で、高齢者の存在感が際立っている。長寿社会を迎えて、住居の住み替え、老後の資金確保のための換金処分、そして相続に関する売買などの理由(図表⑤)で活況を呈している。その背景には、高齢者数の増加と、彼らが資産を数多く所有していることが挙げられる。

図表⑤不動産の売却理由(141件の内訳)
【最新】不動産市況アナリストが解説!止まらないインフレと金融情勢の変化が懸念材料。2024年の不動産市況と展望2

「ネットワーク88」調べ

一方、若年層の存在感は弱まっている。50年前に比べて20歳代は4割も減少しているが、住宅購入者や賃貸住宅の借主の数は、今後、さらに減少が加速する。先般発表された2023年の出生数は、推計で約72万人となって、ベビーブームの時の200万人に比べ、約3分の1となっている。

これから先、住まいに求められる立地・広さ・設備、賃料や価格などは激変すると考えられるが、2024年は、その変化の基点となることに間違いはないだろう。

現状がいつまでも続くという保証はない。インフレ・金融、そして格差社会・高齢化社会・人口減少など、複数の構造的な変化が、市場に影響を与え始める年となる。

※この記事は2024年1月20日時点の情報をもとに制作しています。

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