空き家売却にかかる期間は平均13カ月。長引く原因と所有しているオーナーが取るべき一手とは?

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公開日:2025年12月3日
更新日:2025年12月3日
空き家売却にかかる期間は平均13カ月。長引く原因と所有しているオーナーが取るべき一手とは?1

親から家を相続したが、すでに住んでいる家がある…。空き家が発生する背景にこういった事情がよく見られます。今回は空き家を売却する際にかかった期間や、売却時の実情にフォーカスして「空き家問題」の全容に迫ります。

空き家売却までにかかった期間の平均値は13.3ヵ月

空き家の売却を経験・検討したことがある139人に「売却するまでにかかった期間」を聞いたところ、すでに空き家を売却した人の“平均値”は、約13.3カ月でした。

Q.空き家を売却するまでにかかった期間(n=139人)
~3ヵ月 6.5%
~半年 27.3%
~1年 15.8%
~2年 5.0%
~3年 4.3%
3年超 2.9%
未売却 38.2%

 

しかし、ボリュームゾーンは「3カ月超半年以内」となっており、売却まで長期間かかった一部の人が“平均値”を押し上げていることは考慮すべきポイントです。

さらに、まだ売却できていない人の中にも「5年以上経つが、まだ売れていない」という声もありました。ニーズのある物件はすぐに売却が可能ですが、条件的に厳しい物件は売却できるまでに長い期間を必要とすることが明らかになっています。

半数が苦戦!空き家売却が長引く理由とは?

Q.空き家の売却は順調だったか(n=139人)
想定より順調だった 23.0%
想定通りだった 18.0%
想定より時間がかかった 59.0%

 

半数以上となる59.0%の人が「想定より時間がかかった」と回答しており、空き家売却への道のりは決して楽なものではなかったことが、この結果からもうかがえます。

その一方で、「想定より順調だった(23.0%)」「想定通りだった(18.0%)」と、順調だったと回答した人が合わせて41.0%いました。4割を超えてはいるものの、苦戦した・あるいは苦戦している人の方が多いようです。

先述した「空き家を売却するまでにかかった期間」の質問では、売却までに1年超かかってしまった人や、まだ売れていない人も多くいたことからも、条件やタイミングによっては、空き家の売却がなかなか順調に進まないことがわかります。

空き家がすぐ売れる条件は?最多は「立地のよさ」

「順調に売却が進んだ」と回答した人にその理由を聞いたところ、最多の回答となったのは「立地がいい」で約3割におよびました。

Q.空き家の売却が順調だった理由(n=57人(複数回答)上位5位)
立地がいい 29.8%
急いでいなかった 22.8%
不動産会社の対応がいい 19.3%
近所の人が買った 8.8%
物件がきれいだった 7.0%

 

「空き家の周囲の環境が良かったから(20代・男性)」、「駅から近い立地だった(30代・女性)」とコメントからも、アクセスの良さはもちろん、近隣に商業施設や医療施設がある、治安が良いなどの周辺環境は、動かすことが不可能、かつリセールバリューを考慮すれば、当然の結果とも言えます。

さらに「立地条件が非常に良かった。不動産会社も『すぐに決まるので、価格は引き上げるべき』とまで言っていました(40代・男性)」など、売却までに時間がかからない以外のメリットがあることも事実です。

急がないことも必要?ご近所からの声掛けも多々

空き家売却にかかる期間は平均13カ月。長引く原因と所有しているオーナーが取るべき一手とは?2

焦らずに余裕をもって売却を進めたことが、良い結果につながったと回答する人も約2割いました。売り手側の心に余裕があれば、不動産会社が値引きを提案してきた際も「値引きは本当に妥当だろうか」と冷静に判断することもできます。

しかしながら、空き家である期間も維持・管理費といったものはかかってきます。心に余裕を持つためには、コスト面においてもそれなりの余裕を確保しておくのも忘れてはなりません。

さらに1割弱と少数ながら、近所の方から声をかけてきたと回答した人も。

「不動産会社から『立地的になかなか売れない』と言われ覚悟していたが、たまたまご近所で買い手が見つかり、すぐ売れた(40代・女性)」、「近所の人が家の売却を検討していることに気づいて、『息子夫婦に売ってくれないか』と声をかけてきて、すぐに話がついた(40代・女性)」、「買い手を探していたところ、近隣住民の親類から『買いたい』との話があり、手続きなども問題なく順調に売却できました(60代以上・男性)」など、自宅の拡張を考えている人の他、二世帯住宅などを検討している人が多いエリアなどでは、こうしたケースもあるようです。

売れない空き家の共通点も「立地」が最多に

「売却に時間がかかった」の最多回答も「立地」で、回答の割合はダントツの41.5%となりました。「アクセスの悪い田舎」「人口減少が進行中」「ほかにも空き家が多い」といったエリアでは、遅々として売却は進まないようです。

Q.空き家の売却に時間がかかった理由(n=82人(複数回答)上位5位)
立地が悪い 41.5%
不動産会社の対応が悪い 18.3%
物件の状態が悪い 17.1%
売り出し価格が高かった 11.0%
親戚との折衝に時間がかかった 6.1%

 

こうなると不動産会社から「価格の見直し」の提案や「更地化」「賃貸転用」など、買い手側のアプローチにも工夫が必要になってきます。

しかし「人口減の地域にあり、他にも空き家が多くあるうえに需要は少ないから(30代・女性)」といった声や、「田舎の空き家で、あまり人気な場所ではない。問い合わせすらもない状況(30代・女性)」などのコメントには、ほかに工夫すべき点もなく、諦めにも似た徒労感が感じられます。

古家は売れない?不動産会社選びで結果が変わる?

空き家売却にかかる期間は平均13カ月。長引く原因と所有しているオーナーが取るべき一手とは?2

「小さな不動産会社に頼んでいたのですが、3か月経っても売れる気配がなく、常に「売却価格を下げましょう」と言われていました。3か月後に大手不動産会社にもお願いしたら、1か月ほどで希望の値段で売れました。最初に頼んだ不動産会社が長引く原因でした(50代・男性)」という、不動産会社の営業力に原因をあげる人も多く聞かれました。

さらに「立地条件は良いものの、物件そのものが古家扱いになってしまったので(30代・女性)」、「空き家が汚かった。外観が美しくなかった(50代・女性)」など、築古や見た目の悪さを原因にあげる人の声も多く聞かれました。「築年数が経っていても、丁寧に使っていれば売れた」という体験談とは対照的です。

複数人で共有としたことが時間のかかった原因とする声も。空き家が家族や親族にとって思い入れのある家だと、意思決定に時間がかかると予想されます。なかには、相続人ではない親族が口を出してきたというケースもあったようです。

売り出し後に買い手がつかなくて長引くのではなく、「売却活動開始までに時間がかかる」という物件もあるとわかります。

折衝や維持費の支払い、残置物なども苦労のタネに

空き家を売却する際に苦労した点について聞いたところ、1位となったのは34.5%の「不動産会社とのやり取り」という結果に。専門的な知識や手続きが必要になるため、どうしても言いなりや後手に回りがちで、一度でも不信感を持ってしまうと、そこからはなかなか進めません。

Q.空き家を売却するうえで大変だったこと(n=139人(複数回答)上位5位)
不動産会社とのやり取り 34.5%
維持費の支払い 17.3%
残置物の片付け 15.1%
物件のメンテナンス 10.1%
売却価格の調整 6.5%

 

空き家を売却する際に苦労した点について聞いたところ、1位となったのは34.5%の「不動産会社とのやり取り」という結果に。専門的な知識や手続きが必要になるため、どうしても言いなりや後手に回りがちで、一度でも不信感を持ってしまうと、そこからはなかなか進めません。

「不動産会社の担当者がいい加減で、何度話しても理解が得られなかった。専任にされているため他社にお願いしたくても、口を出してきて話が進まなかった(20代・女性)」というように、媒介契約の違いに苦労したという声もあります。

空き家売却にかかる期間は平均13カ月。長引く原因と所有しているオーナーが取るべき一手とは?2

さらに、「売却するまでの間、使ってもいないのに固定資産税や光熱水費の基本使用料などで年間20~30万円が消えていく(60代以上・男性)」といったコストに関わる苦労や、「遠方に住んでいるため、売却前の家財整理・処分が一番大変でした。週末ごとに新幹線で実家に帰り、祖父母の思い出の品を仕分ける作業は、体力的にも精神的にも大きな負担でした(30代・男性)」という残置物の処理や物理的な距離の問題が挙がるなど、負担となる点も様々だということがわかります。

まとめ

空き家を相続しても住む予定がなく、売却を選択するケースは多いですが、売却は必ずしもスムーズにはいかないということが調査で明らかになりました。

売却経験者の平均売却期間は約13.3カ月(実際のボリュームゾーンは「3カ月~半年」)で、売却は約6割の人が「想定より時間がかかった」と回答しています。

スムーズに売れた理由の最多は「立地の良さ」。逆に売却が長引いた理由の最多も「立地」で、他には築古物件であること、不動産会社の対応力が不足していることも売却に時間がかかる原因となり、価格調整や更地化、賃貸にするなど選択肢の検討が必要なケースも出てきます。

空き家は維持費や残置物処理の負担も大きく、放置すればコストもリスクも増える一方です。早期の売却計画や不動産会社選びが売却の重要なポイントになります。空き家を所有している方は「まだ売れないだろう」と先延ばしにせず、早めの計画と信頼できる不動産会社選びを行いましょう。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2025年11月26日時点のものです。

取材・文/御坂 真琴

ライタープロフィール
御坂 真琴(みさか・まこと)
情報誌制作会社に25年勤務。新築、土地活用、リフォームなど、住宅分野に関わるプリプレス工程の制作進行から誌面制作のディレクター・ライターを経てフリーランスに。ハウスメーカーから地場の工務店、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、販売促進ツールなどの制作を手がける。

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