Z世代入居者の3人に1人が「冬寒い」ことに不満!18歳~26歳のZ世代が賃貸住宅に求めること

デジタルネイティブであることから情報収集能力が高く、多様性や効率性を重視するとも言われるZ世代。賃貸住宅市場のメインターゲットでもある彼らは、どのような住まいを求めているのでしょうか。(一財)住宅改良開発公社がZ世代の賃貸住宅での生活の実態、意識、要望等についてアンケートを実施。その結果をまとめたガイドブックより内容を抜粋してご紹介します。賃貸経営に役立つワンポイントアドバイスもありますので、ぜひ参考にしてみてください。
Z世代の現状|家賃は手取り収入の30%未満、広さは30㎡未満が多い
ガイドブックでは、Z世代を1997年から2012年までに生まれた世代と定義。日本各地の賃貸住宅に住む18歳~26歳(2024年1月現在)を対象にアンケートを行っています。
回答者の世帯構成の割合は「一人暮らし」が68.7%、「配偶者やパートナーと暮らしている人」が28.3%、残りは子どもやきょうだいなどと一緒に住んでいます。RC造の賃貸マンションに住んでいる人と木造・軽量鉄骨造の賃貸アパートに住んでいる人の割合はほぼ半々となっています。
まずは現在住んでいる住宅について、半数以上がワンルーム・1Kに住み、広さは18㎡~30㎡未満、家賃は手取り収入の20~30%未満が最多割合となっています。
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Z世代は、狭くても安価で利便性がある物件を選ぶ傾向があります。家賃設定は収入の2~3割に収まるように意識し、「広さよりも機能性」を重視した設備や収納の工夫が求められます。
いま住んでいる賃貸住宅への不満|「冬寒い」が最多で32.9%
Z世代が住んでいる賃貸住宅に対して不満に思っている点は、2割以上を占めたもので以下の通りでした。
Z世代の賃貸住宅への不満点(複数回答) | |
冬寒い | 32.9% |
隣りの音が聞こえる | 24.5% |
収納が狭い | 24.0% |
料理がしにくい | 23.7% |
家賃が高い | 22.3% |
3人に1人が「冬寒い」と回答しています。構造別では、「冬寒い」「隣りの音が聞こえる」の割合がアパート居住者で、「家賃が高い」割合がマンション居住者で高くなっています。
属性別では女性の方が男性よりも不満が大きく、学生は特に「料理がしにくい」ことへの不満が大きくなっています。しかし全体で見ると「とくに不満はない」と回答した人も18.2%いました。
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「冬寒い」は建物の断熱性能の問題が大きく、特に木造・軽量鉄骨のアパートで不満が集中しています。断熱対策(内窓の設置、断熱カーテンの備え付けなど)や暖房効率の良いエアコンの導入が差別化につながります。
住まい選びの重視項目|家賃以外では「間取り」「日当たり」「防犯性」
では、Z世代が賃貸住宅を選ぶ際は何を重視しているのでしょうか。複数回答で、3割以上を占めたのは次のような項目でした。
Z世代が賃貸住宅を選ぶ時の重視項目(複数回答) | |
家賃が安いこと | 48.2% |
間取りが良いこと | 39.5% |
日当たりが良いこと | 34.7% |
防犯性に優れていること | 33.9% |
初期費用が安いこと | 30.5% |
築年数が浅いこと | 30.5% |
男女別では女性の方が重視したい割合が高く、特に「間取りが良いこと」で11.4%、「防犯性に優れていること」で19%も女性の方が高くなっています。属性別では、学生が特に防犯性を重視する傾向がありました。
立地や住環境で重視したいのは、約半数が「通勤・通学に便利なこと」「交通の利便性が良いこと」「日常生活の利便性が良いこと」と回答。やはり女性の方が重視する割合が高くなっています。
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「間取りの良さ」「防犯性」は女性や学生にとって重要なポイント。女性単身者向けにはモニタ付インターホンやオートロックの導入が必須です。1Kでも収納を区切って使える工夫や、採光性の高いレイアウトなどが評価されます。
所有している家電・家具|4人に1人はテレビ・掃除機を持っていない

賃貸住宅に住んでいるZ世代は、どんな家電・家具を持っているのでしょうか。まず家電については冷蔵庫、洗濯機、電子レンジは、1割程度が所有しておらず、掃除機、テレビは、4人に1人が持っていません。上位すべての項目で、女性の方が所有割合は高くなっています。
家具については約3割がベッド、机を持っておらず、やはり女性の方が多くの家具を持っている傾向がありました。
家具・家電以外に部屋にあるインテリアや雑貨については、約4割が「自分で購入したカーペット」を敷いており、約3割が「推し活・オタ活のためのグッズ」を飾っています。
賃貸住宅の部屋でしていることは、料理を「毎日している」が35%で、「週2~3回」を入れると約6割の人が料理をしています。他に「毎日している」割合の多かったものは「湯船につかる」「ゲームをする」でした。
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初期費用を抑えたいZ世代の傾向から、家具・家電付き物件の需要は一定数あります。特に洗濯機、冷蔵庫、電子レンジなど生活必需品を備えた「ミニマム家電付き」物件は、学生や新社会人にとって魅力となります。
求める設備やサービス|「風呂・トイレ別」「24時間ゴミ出し」が上位に
Z世代は、賃貸住宅にどんな設備を望んでいるのでしょうか。まず室内設備については、複数回答で次のような結果となりました。上位から4割を超えるものを抜粋します。
Z世代が賃貸住宅に求める設備(複数回答) | |
風呂・トイレ別 | 63.7% |
独立した洗面台 | 53.5% |
モニタ付インターホン | 53.5% |
オートロック | 46.3% |
無料インターネット | 44.5% |
2口以上コンロ | 43.9% |
すべての設備で女性の方が男性よりも希望が高く、上位は男女で20%程度の差がつくほど。共用部分に求める施設・サービスについては「24時間ゴミ出し」が63.0%で最も高く、「宅配ロッカー」「駐車・駐輪場」が続きます。
求める賃貸住宅の規模については、43.9%が「10世帯未満」の小規模な住宅を希望し、「10世帯以上30世帯未満」41.5%と合わせると30世帯未満の希望が8割を超えます。
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Z世代の「当たり前」は時代と共に変化しています。風呂トイレ別、独立洗面台、ネット無料は「基本装備」と考えた方がよいでしょう。また、「24時間ゴミ出し」は生活時間が多様な現代の若者にとって強い魅力となります。
求めるライフスタイル|約半数が効率性を求め、6割がプライバシー重視

最後に、Z世代が賃貸住宅で希望するライフスタイルについて聞いています。約半数が「タイムパフォーマンスや効率性を重視したい」、約4割が「できるだけモノを持たない暮らしに憧れる」と回答しました。
賃貸住宅で求めるコミュニティについては、住宅内で「隣人とは顔を合わせたくない」という希望が約半数に。その一方で、「趣味を一緒に楽しむ」「イベントなどを一緒に行う」という人も1割程度いました。賃貸住宅内での「バーベキューなどの食イベント」や「クリスマスパーティ」への希望は2割程度で、約6割が「参加したくない」という結果に。
しかし、近隣の住民に「挨拶をする」は「かなりやりたい」「ある程度やりたい」を合わせて4割以上がしたいと答えています。ただし近所付き合いの意向については「プライバシーを保つことがなにより重要だ」という回答が6割を超え、「同じ住宅内の人と仲良くなりたい」人は15%程度となりました。
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「隣人とは顔を合わせたくない」「でも挨拶はしたい」という矛盾を持つZ世代。共用部での過剰な交流イベントや管理人の介入は控えめにしつつ、必要なときには安心できる対応があるというバランスが重要です。プライバシー重視のためには、遮音性・目隠しフェンス・郵便受けのセキュリティ強化なども評価されます。
まとめ
今回アンケートを行った1,500人について、現在の住まいに「これから何があっても一生住むつもり」「何事もなければ一生住み続けるつもり」を合わせた永住志向は8%でした。また、53.9%が将来望む世帯像を「一人暮らし」と回答しています。
約半数が「賃貸は仮の住まいでいつかは住宅を所有したい」と答えてはいるものの、「結婚して子どもを1〜2人授かり、マイホームを買って家族と暮らす」という従来型の将来をイメージしているZ世代は少なくなっているようです。つまり、上の世代よりも「一生賃貸」「一生一人暮らし」という将来像が身近であることがわかります。
Z世代は「賃貸を仮住まい」とは思っておらず、「自分らしい暮らしのための選択肢」として考えています。これからの賃貸経営は、設備とサービスの充実に加え、効率性・プライバシー・防犯性・住環境のバランスをどう取るかが鍵になります。
Z世代が求める「快適かつ効率的に、プライバシーを守って自分らしく暮らす」生活スタイルに合わせて、これからの賃貸住宅の方向性を考えていく必要がありそうです。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2025年4月30日時点のものです。
取材・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。
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