「南向き」を絶対条件にする人が大幅に減少。入居者の絶対条件に起きた変化と賃貸オーナーが取るべき対策

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公開日:2026年5月20日
更新日:2026年5月14日
「南向き」を絶対条件にする人が大幅に減少。入居者の絶対条件に起きた変化と賃貸オーナーが取るべき対策1

住まい探しで「絶対に譲れない条件」は、時代とともに変化しています。LIFULL HOME'Sが発表した「住まい探しの絶対条件ランキング2026」では、「保証人不要」が前回比+60ポイント、「二人入居可」が+29ポイントと大きく上昇する一方、「南向き」は-71ポイント、「追焚機能」は-48ポイントと大幅に下落しました。背景には、物価高、少子高齢化、猛暑、タイパ志向など生活環境の変化があります。今回は、ランキング結果から見える賃貸ニーズの変化と、オーナーが見直すべき設備・募集戦略を考察します。

「バス・トイレ別」が不動の王者である理由

「南向き」を絶対条件にする人が大幅に減少。入居者の絶対条件に起きた変化と賃貸オーナーが取るべき対策2

データ画像引用元:「住まい探しの絶対条件ランキング2026」|株式会社LIFULL 都道府県ごとの上位20条件をポイント換算し集計(1位20pt、2位19pt・・・20位1pt)

「住まい探しの絶対条件ランキング2026」で総合1位となったのは、前年同様「バス・トイレ別」でした。長年にわたり支持され続けている設備ですが、その背景には単なる快適性だけでなく、“最低限の生活水準”として認識されている実態があります。

近年は単身向け物件でも、浴室・トイレ一体型への抵抗感が強まっています。特に若年層では、SNSや動画で多様な部屋を見る機会が増え、「ユニットバス=妥協」という印象が定着しやすくなっています。

賃貸経営の視点では、築古ワンルームの競争力低下を示すシグナルともいえます。立地が良くても、バス・トイレ同室というだけで検索対象から外れるケースも珍しくありません。

また、地方圏で2位にランクインした「駐車場あり」も重要なポイントです。都市部では駅距離が重視される一方、地方では依然として“車前提の生活”が基本です。そのため、空きスペースを駐輪場だけで終わらせず、駐車場として再整備することが競争力につながるケースもあります。

設備投資では新しいものを追加したくなりますが、実際には「基本条件をどれだけ満たしているか」が反響率を左右します。まずは“選ばれる最低条件”を押さえることが、空室対策の土台です。

「保証人不要」が急伸した社会的な背景とは

「南向き」を絶対条件にする人が大幅に減少。入居者の絶対条件に起きた変化と賃貸オーナーが取るべき対策2

データ画像引用元:「住まい探しの絶対条件ランキング2026」|株式会社LIFULL 都道府県ごとの上位20条件をポイント換算し集計(1位20pt、2位19pt・・・20位1pt)

今回の調査でとくに目立ったのが、「保証人不要」の前回比+60ポイントという急上昇です。これは単なる利便性向上ではなく、社会構造の変化を反映した結果といえます。

背景には、少子高齢化や単身世帯増加があります。親が高齢で保証人になれないケースや、親族との関係性希薄化によって、保証人確保そのものが難しくなっているのです。また、「保証人を頼みにくい」という心理的負担も影響しています。

現在では家賃保証会社の利用が一般化しており、保証人不要を打ち出す物件も増えています。その結果、ユーザー側でも「保証人不要」が“あると便利”ではなく、“必須条件”へ変化しつつあります。

賃貸住宅オーナーにとってカギになるのは、保証会社利用を前提とした募集条件の見直しです。従来型の人的保証に固執すると、入居候補者を狭める可能性があります。

特に若年単身者や高齢者層では、「保証人不要」で検索するケースも増えているため、ポータルサイト上の表記も重要になります。募集条件に記載がないだけで、検索対象から外れてしまう恐れもあります。

今後は、「保証人を取るかどうか」ではなく、「保証会社をどう活用するか」が賃貸経営の標準になっていくかもしれません。

「二人入居可」が急伸した背景に物価高あり

「南向き」を絶対条件にする人が大幅に減少。入居者の絶対条件に起きた変化と賃貸オーナーが取るべき対策2

「二人入居可」は前回比+29ポイントとなり、大きく順位を上げました。背景には、物価高や家賃上昇への生活防衛意識があると考えられます。

近年は、単身で暮らすよりも、パートナーや親族と住居費を分担する動きが広がっています。特に都市部では家賃負担が重く、一人暮らしを続けにくい環境になりつつあります。

また、結婚前の同棲需要も増加しています。従来はファミリー向けと単身向けが明確に分かれていましたが、現在では「1LDKで二人入居」というニーズも一般化してきました。

賃貸経営では、この変化は見逃せません。例えば、広めの1Kや1DKでも、「二人入居相談可」に変更するだけで反響層が広がる可能性があります。

一方で、トラブル防止も重要なポイントです。なお、一般的に「二人入居可」は夫婦や親族を想定していることが多く、友人同士の同居は「ルームシェア可」に該当します。募集条件を変更する際は、対象者の範囲を明確にしたうえで、騒音やゴミ出しなど生活トラブルへの備えも合わせて検討が必要です。

それでも、人口減少時代において“入居対象を広げる”ことは重要です。「単身限定」にこだわるよりも、柔軟な募集条件へ見直すことが空室リスク低減につながります。

「南向き神話」が崩れた理由——猛暑と共働き化の影響

「南向き」を絶対条件にする人が大幅に減少。入居者の絶対条件に起きた変化と賃貸オーナーが取るべき対策2

今回もっともインパクトが大きかった下落項目が、「南向き」の前回比-71ポイントでした。かつては“部屋探しの絶対条件”とされてきた人気条件ですが、近年は価値観が変わり始めています。

背景にあるのは、記録的な猛暑です。夏場の日差しによる室温上昇や冷房費増加がデメリットとして認識されるようになりました。「日当たりが良い=快適」という従来の常識が揺らいでいるのです。もちろん、現在でも南向きを重視する層は根強く存在します。ただ、その“絶対性”には変化が見え始めています。

さらに、共働き世帯増加も影響しています。日中に在宅しない人が増えたことで、「日当たり重視」の優先順位が下がっています。加えて、花粉への対策、浴室乾燥機やドラム式洗濯機の普及によって、室内干しへの抵抗感も薄れてきています。

賃貸住宅オーナーにとって重要なのは、「南向きでない=不利」と決めつけないことです。たとえば北向きでも、「夏場に室温が上がりにくい」「在宅ワーク向き」など別視点で訴求できる可能性があります。

今後は、単純な方角競争ではなく、“住み方との相性”をどう伝えるかが重要になるでしょう。固定化された人気条件に依存しない募集戦略が求められる時代に入りつつあります。

「追焚機能」が下落したタイパ時代の現実

「南向き」を絶対条件にする人が大幅に減少。入居者の絶対条件に起きた変化と賃貸オーナーが取るべき対策2

「追焚機能」は前回比-48ポイントとなり、大幅に順位を下げました。以前はファミリー物件の定番設備でしたが、近年は価値観に変化が見られます。

理由の一つが、ガス代高騰です。追焚は便利な一方、光熱費負担への警戒感から優先順位が下がっています。また、若年層を中心に“シャワー中心生活”が広がっていることも影響しています。

さらに、「タイパ(タイムパフォーマンス)」志向も無視できません。お湯を張る時間や入浴準備そのものを面倒に感じる層が増えており、浴槽レス物件への関心も高まりつつあります。

賃貸経営では、「人気設備=永続的価値」とは限らないことを示しています。高額な設備更新を行っても、実際の入居者ニーズとマッチしなければ投資回収が難しくなることも考えられます。

もちろん、ファミリー層では依然として追焚需要があります。しかし単身向けや若年層向け物件では、「無料Wi-Fi」「宅配ボックス」「独立洗面台」など、別設備の優先度が上がっている可能性があります。

設備投資では、“過去の人気”ではなく、“今の生活様式”を見る視点が必要になっています。

賃貸経営は「条件数」より「生活提案」へ

今回のランキング変化から見えてくるのは、住まい探しが「設備スペック競争」から、「生活合理性重視」へ移行している点です。

例えば、「保証人不要」は契約負担軽減、「二人入居可」は生活コスト削減、「南向き下落」は猛暑対策、「追焚離れ」はタイパ志向と、それぞれ社会的な背景と強く結びついています。

つまり、入居者は設備そのものではなく、「その設備が自分の生活にどう役立つか」を重視するようになっているのです。

賃貸住宅オーナーにとって重要なのは、“人気設備を並べる”だけでは差別化できなくなっている点です。今後は、「在宅ワークしやすい」「生活費を抑えやすい」「夏場も快適」など、暮らし方まで含めて提案できるかが問われます。

また、設備投資の判断も変わります。以前なら「追焚追加」が有効だった物件でも、現在は無料Wi-Fi整備のほうが、反響につながりやすい物件も増えています。

これからの賃貸経営では、「何を付けるか」だけでなく、「どんな生活価値として伝えるか」が空室対策の成果を左右します。

まとめ

「南向き」を絶対条件にする人が大幅に減少。入居者の絶対条件に起きた変化と賃貸オーナーが取るべき対策2

今回の「住まい探しの絶対条件ランキング2026」は、入居者ニーズの変化が、社会環境の変化と強く連動していることを示しました。「保証人不要」の+60ポイントや「二人入居可」の+29ポイントには、少子高齢化や物価高といった現実が色濃く反映されています。一方で、「南向き」の-71ポイント、「追焚機能」の-48ポイントは、猛暑やタイパ志向によって、従来の人気条件が見直され始めていることを意味しています。

これは賃貸経営においても大きな転換点です。これまで“定番人気”とされてきた設備や条件が、今後も同じように支持され続けるとは限らないのです。むしろ重要なのは、「現在の生活者が何を合理的だと感じるか」を読み解くことです。

今後は、設備スペックを競うだけではなく、「どんな暮らしができるか」を伝える力が重要になります。生活コストを抑えられる、暑さに対応しやすい、契約負担が少ない―。そうした“生活メリット”を具体化できる物件ほど、比較競争で優位に立ちやすくなるでしょう。

人口減少と物価高が続く時代だからこそ、賃貸経営では「昔の人気条件」に頼り続けるのではなく、変化する価値観を柔軟に取り込む視点が求められています。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2026年5月時点のものです。

取材・文/御坂 真琴

ライタープロフィール
御坂 真琴(みさか・まこと)
情報誌制作会社に25年勤務。新築、土地活用、リフォームなど、住宅分野に関わるプリプレス工程の制作進行から誌面制作のディレクター・ライターを経てフリーランスに。ハウスメーカーから地場の工務店、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、販売促進ツールなどの制作を手がける。

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