鍵の寿命って何年くらい?交換費用の負担問題と不調の放置が招く「退去・事故リスク」の盲点を徹底解説
- 住宅設備
鍵は「壊れるまで使えるもの」と思われがちですが、モノである以上、実際には寿命が存在し、劣化は静かに進行しています。鍵トラブル専門のサービスである「カギお助け本舗」を運営するBEST株式会社の調査によれば、鍵の耐用年数を知らない人は9割以上にのぼり、不調を感じながらも放置している実態が浮き彫りになりました。こうした状況は、「閉じ込め」や「閉め出し」といったトラブルだけでなく、入居者満足度の低下や退去リスクにも直結します。ここでは、賃貸経営の視点から鍵の管理の重要性と具体的な対策について解説します。
「6割」が寿命を超過した鍵を使う現状

画像引用元:「住宅の鍵の耐用年数(寿命)に関する意識調査」 BEST株式会社
今回の調査によると、設置から10年以上経過した鍵を使用している人は全体の63.7%にのぼり、いわば【寿命超過状態】の鍵が広く使われている傾向が確認されました。最多となった「20年以上」使用されているケースも44.0%と非常に多く、経年劣化が進行している可能性は極めて高いといえます。
鍵は日々の開閉によって内部部品が摩耗し、徐々に精度が低下していく【消耗品】です。しかし、外見上の変化が少ないため、劣化に気づきにくいという特性があります。賃貸物件においては、こうした見えない劣化が入居者トラブルの引き金になる可能性も否定できません。オーナーには設備の一部として定期的に状態を確認し、計画的な交換を行う視点が求められます。
交換が進まない、その構造的な理由とは

画像引用元:「住宅の鍵の耐用年数(寿命)に関する意識調査」 BEST株式会社
鍵の交換経験がないと回答した人は、じつに7割以上にのぼり、多くの人が「問題が起きるまで交換しない」という姿勢であることが分かります。その背景には、「鍵は長く使えるもの」という固定観念や、交換の必要性を感じにくい点があります。スマートフォンや家電と異なり、鍵は性能の低下が目に見えにくいため、優先順位が下げられがちです。
また、賃貸物件ではオーナーと管理会社のどちらが主体的に判断するかが曖昧なケースも少なくなく、結果として対応が後手に回る傾向があります。このような状況を放置すると、不具合が顕在化したタイミングで一気にトラブルへと発展する可能性が高まります。管理ルールの明確化が重要です。
約半数が感じる鍵の不調。その初期症状

画像引用元:「住宅の鍵の耐用年数(寿命)に関する意識調査」 BEST株式会社
設置から10年以上経過した鍵を使用している層の約半数が、何らかの不調を自覚しています。よく見られる症状としては、「回しにくい」「引っかかる」「スムーズに入らない」といった操作性の低下です。これらは単なる使いづらさではなく、内部部品の摩耗や異物の蓄積による機能低下のサインといえます。
さらに、ドアノブのガタつきやラッチの動作不良といった周辺部品の劣化も見られ、鍵全体としての性能が低下している状態と考えられます。こうした初期症状を見逃さず、早期に対応することがトラブル回避の鍵となります。賃貸経営においては、入居者からの小さな違和感の報告を軽視しない姿勢が重要です。
不調の放置が招く、突然の閉じ込め事故

画像引用元:「住宅の鍵の耐用年数(寿命)に関する意識調査」 BEST株式会社
鍵の不調を感じながらも、7割以上が特に対策を行っていないという結果は、リスク管理の観点から非常に危険な状態といえます。鍵の劣化は自然に改善することはなく、むしろ日々進行します。その結果、ある日突然鍵が回らなくなり、閉じ込めや閉め出しといったトラブルに発展するケースも見られます。特にトイレや浴室といった密閉空間での閉じ込めは、体調悪化や事故につながる可能性もあり、軽視することはできません。
賃貸物件においてこうした事態が発生すれば、入居者満足度の低下だけでなく、管理責任が問われるリスクも生じます。予防的な対応こそが最も重要な対策といえるでしょう。
故障の発生場所で変わるリスクの深刻度

画像引用元:「住宅の鍵の耐用年数(寿命)に関する意識調査」 BEST株式会社
実際に発生した「閉じ込め」「閉め出し」の場所として最も多いのは玄関(63.6%)ですが、トイレ(31.8%)や浴室(13.6%)といった室内での発生も一定数確認されています。特に室内でのトラブルは、スマートフォンを持っていない状況で発生することが多く、外部との連絡手段が限られる点でリスクは高いといえるでしょう。
さらに、昨今の夏場においては、トイレや浴室といった空間は非常に高温な環境となるため、体調への影響も懸念されます。賃貸経営においては、玄関だけでなく、室内設備も含めた総合的な安全管理が求められます。鍵の点検や交換は、単なる防犯対策ではなく、入居者の安全を守るための重要な取り組みです。
じつに9割が知らない鍵の寿命の盲点

画像引用元:「住宅の鍵の耐用年数(寿命)に関する意識調査」 BEST株式会社
鍵の耐用年数が約10年であることを知らない人が「94.3%」にのぼるという結果は、非常に大きな問題です。この認識不足が、劣化した鍵の長期使用を招き、結果的にトラブルの温床となっていることは間違いありません。
鍵は精密部品で構成されており、使用頻度や環境によって劣化の進行速度は異なりますが、一定期間を過ぎれば交換が必要です。しかし、その認識が広まっていないため、交換のタイミングを逃すケースが多発しています。オーナー側としては、入居者任せにせず、設備管理の一環として寿命を把握し、適切なタイミングで更新を行うことが求められます。
鍵交換費用は誰が負担するのか――現役大家さんの声
賃貸現場では「入居者が鍵交換の費用負担を拒否した」というケースが実際に発生しています。費用は誰が負担するのが正解なのか――国土交通省のガイドラインや実際のオーナーさんの経験をもとに整理します。
賃貸物件の鍵交換について国土交通省のガイドラインに記載あり!
私の物件では、入居者が入れ替わった際の鍵の交換費用は、オーナーである私が負担しています。国土交通省の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』にも、『物件管理上の問題であり、賃貸人の負担とすることが妥当』と、書かれています。鍵は生活の安全のための設備です。
要は、入居者に安全で快適な生活を提供するのは私達オーナーの義務・・・と、いうことなのでは?給湯器が壊れたらオーナーの負担で交換する。それと同じことであると解釈していいのではないでしょうか?
※上記ご意見の中に述べられている国土交通省のガイドラインの解釈については、当記事最下段にも目をお通しください
国土交通省のガイドラインはあくまでガイドライン
以下は私の推論ですが…まず、国土交通省のガイドラインはあくまでガイドライン。必ず守るべき義務はなく、オーナーと入居者との契約の中で、違う約束がされていても、何ら問題はないと思います。なので、『鍵の交換は安全のため必ず行なう。費用は入居者負担とする』と、いう契約を結んでも、契約自体に問題はないでしょう。
では、『鍵を交換するかどうかの判断は入居者に一任。交換する場合の費用は入居者が負担』と、した場合はどうでしょうか。その場合、入居者の判断によって鍵の交換が行なわれず、それに起因して盗難などの事件が発生したとしても、『オーナーは責任を免れる』と、解釈できるような気がします。ですが、他方、そうした特別な約束をしていない場合に何かが起こって、裁判となった場合…裁判所はガイドラインに準拠、つまりは、『物件管理上の問題であり、賃貸人の負担とすることが妥当』だったものとして、判断するのだろうと私は思います。
そもそも鍵は賃貸オーナーが提供する住宅設備の一部なのでは?
私の場合、少なからぬ割合のオーナーさんが、『入居時の鍵の交換費用を入居者に求めている』と、いうことを最近知り、実は、大変違和感を覚えた次第です。そもそも鍵は、私達が賃料とひきかえに入居者に提供する住宅設備の一部なのでは?その整備・準備のためにかかる費用を別途入居者に請求する…。理不尽な話ではないかと思えました。
ちなみに、私のマンションの場合、鍵はカードキーです。これならば入居者の入れ替わりに際して、シリンダーの交換などは必要なく、新しい暗証コードを入力したカードを新たに作れば、流失した合鍵が犯罪に使われる、などといったリスクへの予防が可能です。費用も数千円程度で済んでいます。
交換するなら入居者さん負担。換えるかどうかは入居者さん自身が選択
私が、まだオーナーではなく、入居者として賃貸住宅に住んでいた頃、入居者の入れ替わりに際して、なぜ、わざわざ鍵を取り換えなければならないのか、なぜ、その費用を私が負担させられるのか、どちらの理由もよくわかりませんでした。『契約したいのならば払うように』と、不動産会社から言われ、渋々従ったことを覚えています。でも、いまは結婚し、子どももいますので、安全を考えての鍵交換であることはよく理解しています。
一方、費用については、『交換するなら入居者さん負担。換えるかどうかは入居者さん自身が選択』、つまり、自己責任論でよいのではと、個人的には思います。なので、自らがオーナーになったいま、私の物件ではそのようにしています。
『あのマンションは鍵の交換をしてあげなかったらしい』噂が一人歩きするのが怖い
『鍵を交換するかどうかは入居者の判断。そこで、交換しなくともよい、と入居者が決めた以上、あとで何かが起きてもそれは入居者の責任』…?ですが、考えてください。それは入居者だけでなく、私達オーナーにとっても、大きなリスクを抱えてしまうことに繋がるのでは…。ある実際に起きた事件です。入居者自身の判断により、鍵が交換されないまま、女性が入居したそうです。なお、その部屋、前の入居者も女性。その人は合鍵を作り、それを彼氏に渡していました。
しかしその後、二人の仲は破綻。女性は彼氏には知らせずに、逃げるように引越していったのだそうです。ところが、そうとは知らない彼氏、以前のように彼女の部屋にやってきて合鍵でドアを…!中には新たな入居者である女性がいて、悲鳴が上がる事態に。警察も出動し、大騒ぎになったそうです。
こういったことが起きて、あるいはもっと重大な事件が起こって、『あのマンションでは鍵の交換をしてあげなかったらしい…』そんな噂が一人歩きするのが、私は一番怖いんです。さらには、合鍵を使った犯罪により、物件がいわゆる『事故物件』に。入居者が一斉に退去…。そんな事態も私は懸念します。
各オーナーの考え方は様々ですが、共通しているのは「鍵は入居者の安全に直結する設備である」という認識です。費用負担のルールは契約書に明記し、曖昧なまま運用しないことが、オーナー・入居者双方にとって最善の対策といえるでしょう。
管理の視点で見る予防的対策の重要性
鍵のトラブルを未然に防ぐためには、予防的な管理体制の構築が不可欠です。具体的には次のような取り組みが有効です。
● 入居者の入れ替え時に鍵の状態を点検し、一定年数が経過している場合は交換を標準化する
● 入居中であっても不調の報告があった場合には、迅速に点検・対応する仕組みを整える
● 管理会社との連携を強化し、鍵に関する対応フローを明確化する
● 新たな入居者に鍵の交換費用を求めることも妥当ではない鍵交換費用の負担ルールを契約書に明確に記載しておく
● カードキーやスマートロックの導入を検討し、入れ替えコストを平準化する
こうした取り組みは短期的にはコストが発生しますが、トラブル対応費用や退去リスクを抑える観点では十分に投資価値のある施策です。安定経営のためには徹底した予防意識が鍵となります。
まとめ
今回の調査と現役大家さんの声から見えてきたのは、「鍵」という日常的な設備に対する認識の甘さが、思わぬリスクを招いているという現実です。多くの入居者が鍵の寿命を知らず、不調を感じながらも使用を続けている状況は、閉じ込め・閉め出しといった突発的なトラブルを引き起こす要因となります。
また、鍵交換費用の負担問題は、国土交通省のガイドライン上はオーナー負担が原則とされているものの、契約内容によって異なります。重要なのは「ルールを曖昧にしない」こと。交換の費用負担・タイミング・実施主体を明文化することで、トラブルを防ぐことができます。
オーナーとしては、鍵を単なる消耗品ではなく、入居者の安心を支える「インフラ」の一部として捉える必要があります。定期的な点検や計画的な交換を実施することで、トラブルの芽を未然に摘むことができます。「起きてから対処する」のではなく、「起きる前に防ぐ」――この視点こそが、これからの賃貸経営においてより一層重要になっていくでしょう。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2026年4月時点のものです。
取材・文/御坂 真琴
ライタープロフィール
御坂 真琴(みさか・まこと)
情報誌制作会社に25年勤務。新築、土地活用、リフォームなど、住宅分野に関わるプリプレス工程の制作進行から誌面制作のディレクター・ライターを経てフリーランスに。ハウスメーカーから地場の工務店、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、販売促進ツールなどの制作を手がける。

















