入居者が鍵交換の費用負担を拒否!誰が負担することになる?現役大家さんがアドバイス
- 住宅設備
こんにちは。大家さんのための賃貸経営マガジン「オーナーズ・スタイル」の統括編集長の上田です。雑誌「オーナーズ・スタイル」や以前開設していた「みんなの掲示板」などに、オーナーさんから寄せられた賃貸経営に役立つ素晴らしいアドバイスの一部をご紹介します。今回は、「物件の鍵の交換費用、誰の負担?」です。
入居者さんが退去時に鍵の交換費用を払いたくないとおっしゃっています。
発端は、あるオーナーさんからのこんなご質問でした。
「先日、新しい入居者さんと契約。ところが直後、不動産会社から連絡が。『入居者さんが鍵の交換費用を払いたくないとおっしゃっています。交換しないまま入居させてもらって構わない、と・・・』交換費用は1万5千円。
さて、この場合、入居者さんご自身が『このままでよい』と言うのですから、鍵を交換しないまま入居いただく・・・と、いった判断でよろしいものでしょうか?万が一のことがあった場合、私の責任にされてしまわないかが心配なんです」
ここで、ご質問のオーナーさんがおっしゃる「万が一のこと」とは、つまりこういうこと。
「以前の入居者さんが合鍵をつくっている可能性がある。それが万一、良からぬ人の手に渡るなどし、物件への侵入に使われたら・・・」賃貸住宅オーナーさんならば皆さんよくご存知、しっかりと管理しておくべきリスクです。
色々なご意見が寄せられましたので、ご紹介していきます。
賃貸物件の鍵交換について国土交通省のガイドラインに記載あり!
私の物件では、入居者が入れ替わった際の鍵の交換費用は、オーナーである私が負担しています。国土交通省の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』にも、『物件管理上の問題であり、賃貸人の負担とすることが妥当』と、書かれています。鍵は生活の安全のための設備です。
要は、入居者に安全で快適な生活を提供するのは私達オーナーの義務・・・と、いうことなのでは?給湯器が壊れたらオーナーの負担で交換する。それと同じことであると解釈していいのではないでしょうか?
※上記ご意見の中に述べられている国土交通省のガイドラインの解釈については、当記事最下段にも目をお通しください
国土交通省のガイドラインはあくまでガイドライン
以下は私の推論ですが…まず、国土交通省のガイドラインはあくまでガイドライン。必ず守るべき義務はなく、オーナーと入居者との契約の中で、違う約束がされていても、何ら問題はないと思います。なので、『鍵の交換は安全のため必ず行なう。費用は入居者負担とする』と、いう契約を結んでも、契約自体に問題はないでしょう。
では、『鍵を交換するかどうかの判断は入居者に一任。交換する場合の費用は入居者が負担』と、した場合はどうでしょうか。その場合、入居者の判断によって鍵の交換が行なわれず、それに起因して盗難などの事件が発生したとしても、『オーナーは責任を免れる』と、解釈できるような気がします。ですが、他方、そうした特別な約束をしていない場合に何かが起こって、裁判となった場合…裁判所はガイドラインに準拠、つまりは、『物件管理上の問題であり、賃貸人の負担とすることが妥当』だったものとして、判断するのだろうと私は思います。
そもそも鍵は賃貸オーナーが提供する住宅設備の一部なのでは?
私の場合、少なからぬ割合のオーナーさんが、『入居時の鍵の交換費用を入居者に求めている』と、いうことを最近知り、実は、大変違和感を覚えた次第です。そもそも鍵は、私達が賃料とひきかえに入居者に提供する住宅設備の一部なのでは?その整備・準備のためにかかる費用を別途入居者に請求する…。理不尽な話ではないかと思えました。
ちなみに、私のマンションの場合、鍵はカードキーです。これならば入居者の入れ替わりに際して、シリンダーの交換などは必要なく、新しい暗証コードを入力したカードを新たに作れば、流失した合鍵が犯罪に使われる、などといったリスクへの予防が可能です。費用も数千円程度で済んでいます。
交換するなら入居者さん負担。換えるかどうかは入居者さん自身が選択
私が、まだオーナーではなく、入居者として賃貸住宅に住んでいた頃、入居者の入れ替わりに際して、なぜ、わざわざ鍵を取り換えなければならないのか、なぜ、その費用を私が負担させられるのか、どちらの理由もよくわかりませんでした。『契約したいのならば払うように』と、不動産会社から言われ、渋々従ったことを覚えています。でも、いまは結婚し、子どももいますので、安全を考えての鍵交換であることはよく理解しています。
一方、費用については、『交換するなら入居者さん負担。換えるかどうかは入居者さん自身が選択』、つまり、自己責任論でよいのではと、個人的には思います。なので、自らがオーナーになったいま、私の物件ではそのようにしています。
『あのマンションは鍵の交換をしてあげなかったらしい』噂が一人歩きするのが怖い
『鍵を交換するかどうかは入居者の判断。そこで、交換しなくともよい、と入居者が決めた以上、あとで何かが起きてもそれは入居者の責任』…?ですが、考えてください。それは入居者だけでなく、私達オーナーにとっても、大きなリスクを抱えてしまうことに繋がるのでは…。ある実際に起きた事件です。入居者自身の判断により、鍵が交換されないまま、女性が入居したそうです。なお、その部屋、前の入居者も女性。その人は合鍵を作り、それを彼氏に渡していました。
しかしその後、二人の仲は破綻。女性は彼氏には知らせずに、逃げるように引越していったのだそうです。ところが、そうとは知らない彼氏、以前のように彼女の部屋にやってきて合鍵でドアを…!中には新たな入居者である女性がいて、悲鳴が上がる事態に。警察も出動し、大騒ぎになったそうです。こういったことが起きて、あるいはもっと重大な事件が起こって、『あのマンションでは鍵の交換をしてあげなかったらしい…』そんな噂が一人歩きするのが、私は一番怖いんです。さらには、合鍵を使った犯罪により、物件がいわゆる『事故物件』に。入居者が一斉に退去…。そんな事態も私は懸念します。
新たな入居者に鍵の交換費用を求めることも妥当ではない
以上、いかがでしょうか。なお、上記各オーナーさんのご意見のうちの一番目、「国土交通省の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』にも、『物件管理上の問題であり、賃貸人の負担とすることが妥当』と、書かれています」・・・こちらにつきましては、下記のリンク先にあるPDFファイルの21ページにて、ご確認をいただけます。
ただし・・・!ご覧いただくとおわかりのとおり、当ガイドラインは、入居者の「退去時」におけるトラブルや、原状回復のための費用負担のあり方について、その基準などを述べているものです。よって文脈上、ここでの入居者=賃借人は、新たに物件に住もうとされる人ではなく、物件を去ってゆく「退去者」を意味しています。新たに物件にお住まいになる立場の入居者について述べているものではないことに、一応ご注意ください。
とはいえ、国土交通省は、こうした場合の鍵の交換費用について、(賃借人による破損や紛失が無い場合は)「賃貸人の負担とすることが妥当」・・・である、その理由として、それが「物件管理上の問題」であることを挙げています。すなわち、この考え方に従うのならば、やはり当然のこと、「新たな入居者に鍵の交換費用を求めることも妥当ではない」・・・そのように解釈できることにはなるでしょう。
※上記、弊社に寄せられたオーナーさんの声につきましては、読みやすいよう原文の一部を加除、または修正させていただいています