自然災害、賃借人の過失、宿泊費の請求…火事・災害にまつわる トラブルの対処法を弁護士がQ&Aで解説
久保原弁護士による法律相談Q&A。今回のテーマは、「火事・災害にまつわるトラブル」です。損害賠償請求や救済制度など、気になる疑問について解説します。
Q1.台風で建物に大きな被害が出た場合、賃貸借契約はそのまま継続しますか。
A1.使用不能の割合に応じ賃料が減額し、復旧不能な場合契約終了となります。
部屋の一部が使用不能となった場合、賃貸借契約自体はそのまま存続し、使用不能となった割合に応じて当然に賃料が減額されます。賃借人は使用可能な範囲に応じた賃料を支払えば足ります。修繕工事が完了し再び使用できる状態に戻った時点から、賃料も元の金額に戻ります。
他方、台風で建物が倒壊し全部使用不能となり、復旧もできない場合、別途、解除通知や解約合意を行う必要もなく建物賃貸借契約は当然に終了します。判例では、修復工事をして使用可能な状態に戻すことが物理的には可能でも、2階建ての建物のうち1階しか復旧できず、修繕工事よりも再築した方が経済的に合理的であった事案において、契約が当然に終了したと認めたものがあります。
Q2.賃借人のタバコの不始末が理由で部屋が半焼した場合、どのような請求ができますか。
A2.賃借人に対して損害賠償請求を行うほか、契約を解除することが可能です。
賃借人に対して損害賠償請求を行うほか、契約を解除することが可能です。
過失は免責すると定めていますが、この法律は契約上の請求に適用されないため、軽過失のときも損害賠償請求や解除は可能です。
他方、賃借人の故意過失によらない天災(雷、台風、津波、地震等)による損害では、賃借人の行為が損害の一因であるとき(ベランダに放置していた物が飛んできて窓ガラスが割れた場合等)を除き、賃貸人は自己の負担で修繕を行わなければなりません。
Q3.耐震工事を怠っていた建物が地震で倒壊し、入居者の財産に大きな被害が生じました。
A3.地震がきっかけでも、建物の安全性に問題があった場合は大家が賠償責任を負います。
民法の原則に、故意過失者に限り法的責任を課すという過失責任主義があります。地震で賃借人に損害が発生した場合、賃貸人は地震の発生に対する故意過失はないため法的責任を負わないとも考えられます。しかし、耐震性に問題があったのに耐震工事を怠ったことで甚大な被害に繋がった場合、賃貸人の修繕義務違反により損害が発生したと言え、賃貸人が修繕しなかったことに過失が認められれば損害賠償義務が肯定されます。
また、建物が元々危険な状態であり、それも原因となり損害が生じた場合、所有者の過失の有無を問わず損害賠償義務が認めことがあります(所有者の工作物責任)。このように民法では、過失責任主義の例外となる無過失責任の規定も定められています。
Q4.災害時の法的リスクを抑えるために、どのような対応が必要となりますか。
A4.何よりも安全を確保することを最優先としつつ、予防や初動対応が重要となります。
災害が発生し、建物設備に問題があったため多大な損害が生じたということになれば、大きな法的トラブルに発展します。防災対策は、法的リスクを抑える予防法でもあると言えます。
災害発生時に、建物の設備不良がゆえに損害が生じたのか、入居者の使い方にも一因があったのか等、損害の原因が分からないと責任の所在を巡る対立が避けられません。そのため、被災直後の現場の写真を残したり、迅速に原因調査を手配することで、円滑な法的トラブルの解決が期待できます。
ただし、あくまで人命が最優先です。何よりもまず、命を守る行動に集中すべきです。被災者には大きな心理的負担もかかっておりますので、身体・精神の健康を第一に考えてください。
Q5.入居者から、火災後の復旧工事中の退去に関して宿泊費を求められました。
A5.火災の発生・拡大に関与していないのであれば、宿泊費を負担する必要はありません。
賃貸借契約上、賃貸人は部屋を使用可能な状態にして貸す義務があるため、火災等により一時的に住めなくなった場合には、復旧工事を行う義務があります。入居者が工事中、一時退去を余儀なくされる場合、賃料は発生しません。
隣家の火災が燃え移ってきたけれども、賃貸人は火災の発生原因に関与せず、防火設備・消火設備も問題がないとして、故意過失が認められないのであれば、賃借人の避難先の宿泊費の支払義務を負わないことになります。
火災の被害が大きく復旧工事が長期間にわたり、入居者が避難先の宿泊費を自己負担するとなれば、入居者としては別の家に転居する選択肢も出てくるかと思います。その場合、賃貸借契約の合意解約等の協議を行うことになります。
Q6.大規模災害発生時の法的な救済制度を紹介してください。
A6.賃貸住宅再築資金の融資制度、賃貸住宅の特別法、紛争解決制度を紹介します。
災害により賃貸住宅が半壊以上した場合、罹災証明書の交付等の要件を満たせば、住宅金融支援機構から賃貸住宅を復旧する費用の融資を受けることができます(災害住宅復興融資)。
また、災害時の賃借人の権利を保護する特別な法律として被災借地借家法があり、大規模災害で借家が倒壊した後、賃貸人が建物を再築して貸す場合には、元の賃借人に通知しなければならないと規定されています。その他、東京等の弁護士会では裁判手続に比べ簡易迅速な紛争解決を目指すADR(裁判外紛争解決手続)が運営されていますが、個別の災害に応じて申立手数料等が減免される災害時ADRが利用可能となる場合があります。よりハードルの低い紛争解決手段として検討可能です。
※この記事内のデータ、数値などに関しては2026年9月1日時点の情報です。
イラスト/黒崎 玄











