知らないと損する!大家さんが知っておくべき見落としがちな 税務ポイントを税理士が解説
賃貸経営の税務は、ちょっとした判断の違いで損得が分かれることがあります。今回は、実務の現場でよくある見落としやすいポイントを整理し、「もったいない損」を防ぐヒントをわかりやすく解説します。
慶應義塾大学卒業後、大手税理士法人にて相続・事業承継・不動産に関わる税務等を中心とした業務に従事。相続・事業承継の豊富な実績を経て、2012年に税理士法人アンサーズ会計事務所を設立。資産家や中小企業オーナーの相続・承継の課題解決に尽力している。著書に「専門家のための事業承継の実務」(翔泳社)、「事業承継の失敗事例33」共著(東峰書房)等。
「もったいない損」をしていませんか?
皆さんこんにちは。税理士の野上です 。
賃貸経営において「税金」は、切っても切れないテーマです。日々、多くの賃貸オーナー様からのご相談を受けている中で感じるのは、大きな節税よりも、細かな判断ミスによる「もったいない損」が非常に多いということです。
ご本人としては正しく処理しているつもりでも、税務上は認められなかったり、逆に本来使えるはずの経費を使えていなかったりするケースも少なくありません。
今回は、実務の現場でよく見かける「見落としがちな税務ポイント」について整理していきます。
修繕費と資本的支出の判断
まず最も多いのが、修繕費と資本的支出の判断です。外壁の塗り替えや設備の交換など、「直した」という認識でも、税務上は必ずしも全額がその年の経費になるとは限りません。
修繕費:原状回復や維持目的であれば修繕費として処理できます。
資本的支出:性能向上や価値の向上につながる場合には資本的支出となり、減価償却により複数年で費用化することになります。
同じ設備交換でも、同等品であれば修繕費と判断されやすい一方で、グレードアップしている場合には資本的支出となる可能性が高くなります。
ここで重要なのは、「工事の目的」と「結果として何が変わったか」という点です。単に古くなったものを元に戻したのか、それとも機能や性能が向上しているのか、この視点で整理すると判断しやすくなります。
金額が大きい工事ほど影響も大きく、「全額が経費になる前提」で資金計画を立ててしまうと、後から負担する税額が増えてしまうことにもなりかねません。見積もりの段階から税務上の扱いを意識することを心がけましょう。
家事按分の適切な考え方
次に多く見られるのが、家事按分です 。例えば自宅の一部を事務所として使用している場合、電気代や通信費などを経費にすることが検討できます。しかし、按分割合が曖昧なケースが少なくありません。
税務上重要なのは、「合理的に説明できるかどうか」です。使用面積や使用時間など、客観的な基準に基づいて割合を決めておくことが求められます。
「仕事部屋として使っているスペースが全体の何%か」
「1日のうち業務に使用している時間はどの程度か」
といった形で整理しておくと、説明しやすくなります 。
過大に計上すれば、税務調査で否認されるリスクがあります。逆に過少であれば、本来受けられる節税効果を逃してしまいます。適切な基準を持つことが重要です。
領収書がない経費の扱い
「領収書がないと経費にできない」と思われている方も多いですが、必ずしもそうとは限りません。通帳の記録や請求書などにより支払いの事実を確認することができ、かつ内容が説明できるものであれば、経費として認められるケースもあります。
一方で、「何に使ったのか分からない支出」は経費として認められません。現金での支払いが多い場合などは、後からでも分かるように簡単なメモを残しておくと安心です。
なお、消費税については原則としてインボイスが必要となるため、所得税と消費税で取り扱いが異なる点には注意が必要です。この違いを理解しておかないと、「所得税ではOKでも消費税ではNG」というケースが生じます。
消費税の落とし穴
賃貸経営では消費税の取り扱いも見落とされがちです。住宅の貸付は非課税ですが、駐車場や事務所の貸付は課税対象となります。そのため、「基本は非課税」と思い込んでいると、消費税の申告漏れにつながる可能性があります。
また、課税売上がある場合には、仕入れについても課税・非課税の区分を意識する必要があります。インボイス制度の影響により、仕入税額控除の可否も含めて、従来よりも管理の重要性が高まっています。
名義と実態のズレ
もう一つ重要なのが、名義と実態の関係です 。例えば、家族名義の口座で家賃を受け取っている場合でも、税務上は「実際に誰が管理・支配しているか」という実態が重視されます。
「名義を変えれば税金も変わる」と考えてしまうケースもありますが、形式だけでは判断されません。資金の流れや意思決定の主体など、実態が伴っているかどうかがポイントになります。
特に相続や贈与を意識した対策では、この点を誤ると想定どおりの効果が得られないこともあるため注意が必要です。
足元の処理を見直すことから始めよう
「税務」というと難しく感じられるかもしれませんが、重要なのは特別な対策ではありません。
日々の処理について、「その内容をきちんと説明できるかどうか」。この視点を持つだけで、税務リスクは大きく下げることができます。
難しい節税を考える前に、まずは足元の処理を見直すこと。それが結果として、無駄な税負担を防ぐ最も確実な方法です。
年末が近づくにつれ、ゆっくり日々の処理を確認する余裕がなくなっていく方も多いと思います。ぜひお時間に余裕がある今のうちに、ご自身の処理を振り返ってみていただければと思います。
※この記事内のデータ、数値などに関しては2026年3月1日時点の情報です。
















