今こそ知っておきたい!「インボイス制度」の概要と賃貸オーナーが取るべき対応を解説

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公開日:2022年12月7日
更新日:2024年3月14日
今こそ知っておきたい!「インボイス制度」の概要と賃貸オーナーが取るべき対応を解説1

「インボイス制度」って何?と思っている賃貸オーナーの方も多いのではないでしょうか。実は大いに影響がある賃貸オーナーもいれば、まったく関係ない立場のオーナーもいます。ややこしいこのインボイス制度に関して、税理士の野上浩二郎さん監修のもとに解説します。

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この記事の監修者
今こそ知っておきたい!「インボイス制度」の概要と賃貸オーナーが取るべき対応を解説2

税理士法人アンサーズ会計事務所 代表社員 税理士 野上 浩二郎さん

2009年に辻・本郷税理士法人に入社し、相続・事業承継専門の部署にて数多くの相続案件及び、中小企業の事業承継案件を手掛ける。2012年に税理士法人アンサーズ会計事務所を設立。資産家や中小企業オーナーの多くが潜在的に抱える相続・事業承継の悩みを掘り起こし、解決するために全力を尽くしている。

賃貸オーナーも仕入税額控除を受けるためにはインボイスが必要

「インボイス制度」の正式名称は、「適格請求書保存方式」。現在、事業者が支払う消費税は、「売上に係る消費税額」から「仕入に係る消費税額」を差し引くことで算出されています。これを仕入税額控除と言いますが、インボイス制度が開始されると、事業者が仕入税額控除を受けるためには、インボイス(適格請求書)という正式な書類を受け取り、保存することが必要となります。

インボイスには、現行の区分記載請求書に、「税率ごとの消費税額及び適用税率」と「発行した事業者の登録番号」等が記載されることになります。このインボイスを発行できるのは、「適格請求書発行事業者」のみ。適格請求書発行事業者として登録できるのは、消費税を申告する課税事業者のみです。

今こそ知っておきたい!「インボイス制度」の概要と賃貸オーナーが取るべき対応を解説2

課税事業者とは、原則、2年前の課税売上高が1000万円を超えている事業者のこと。これに対して1000万円以下の事業者を免税事業者といい、消費税の納付義務はありません。

「つまり、インボイスを発行することができない免税事業者が相手だと、買い手は仕入税額控除が受けられなくなり、税負担が増えてしまうことになるのです」と野上さんは語ります。

もちろん、免税事業者であっても、課税事業者選択届を提出することで登録申請はできるようになります。ただし、そうなるとこれまで消費税免除のために手元に残っていた消費税額分を受け取れなくなる可能性があるので注意が必要です。

「インボイス制度」開始で何が変わる?

●【インボイス(適格請求書)の要件】現行の「区分記載請求書」に、項目が追加

今こそ知っておきたい!「インボイス制度」の概要と賃貸オーナーが取るべき対応を解説2

●【消費税額控除の仕組み】インボイスがないと消費税額が控除できない

今こそ知っておきたい!「インボイス制度」の概要と賃貸オーナーが取るべき対応を解説2

仕入に係る税額控除を受けるためには、適格請求書(インボイス)の保存が必要になります。インボイスがないと仕入側は消費税額の控除が受けられず、負担が増えてしまいます。免税事業者は発行できません。

課税売上がある賃貸オーナーは影響を受ける可能性も!

では、この制度が始まると賃貸オーナーにはどのような影響があるのでしょうか。

アパート・マンション経営を行っている賃貸オーナーの中には、売上高が1000万円以下の免税事業者も多いと思われますが、注意してほしいのは「課税売上」の有無。以下に課税売上と非課税売上の項目を挙げていますが、一つ(少額)でも課税売上の項目があると影響があります。

不動産経営にかかる課税・非課税売上の分類

【課税売上】
●店舗・事務所等の賃料・共益費、礼金、更新料
●居住用の賃貸借契約に付随していない駐車場の賃料、礼金、更新料
●賃借人負担分の原状回復工事費用
●法人・個人事業者による建物の売却金額

【非課税売上】
●居住用の賃料・共益費、礼金、更新料
●居住用の賃貸借契約に付随している駐車場の賃料、礼金、更新料
●借地の地代
●個人による自宅の売却金額
●土地の売却金額

【対応早見表】タイプ別に対策の必要性を確認しよう

今こそ知っておきたい!「インボイス制度」の概要と賃貸オーナーが取るべき対応を解説2

上図をもとに説明します。免税事業者で、収入が居住用賃貸住宅のみ、あるいは事務所や駐車場等の課税売上があっても賃借人が免税事業者なら、インボイス制度の影響は受けません。

また、すでに消費税の課税事業者であれば、インボイス制度への登録を進めてください。デメリットはありません。

対策が必要となってくるのが、賃貸オーナーが免税事業者で課税売上があり、賃借人が課税事業者である場合です。賃借人が仕入税額控除を受けるにはインボイスが必要なので、インボイス制度への登録や消費税額分の賃料値下げ等を検討しなければなりません。そこで、免税事業者のままでいるか、課税事業者となるかの判断を迫られます。

今こそ知っておきたい!「インボイス制度」の概要と賃貸オーナーが取るべき対応を解説2

「現実的な話をすれば、現在の賃借人それぞれに免税事業者かどうかを確認することは難しいと思います。また、免税事業者のままでいると、賃借人課税事業者からインボイス発行を求められ、応じないと賃料の値下げを要求されたり、課税事業者が経営する物件に転居されたり、という可能性もあります。

一方、課税事業者になったからといって10%まるまる消費税を納付するわけではなく、経費の額によっては、1~2%くらいにすることも可能ですし、面倒な帳簿作成が煩わしい方は、仕入額を売上額の一定割合とみなし、控除額を簡単に計算する簡易課税制度を選択することもできます。不動産賃貸管理業の場合、経費を4割として計算します」(野上さん)

経過措置期間もあるので検討は慎重に

インボイスの制度開始から6年間は経過措置があります。課税事業者が免税事業者から仕入れた場合、3年間は80%、その後の3年間は50%の割合を仕入税額として控除できます。

「賃貸オーナーは賃借人との信頼関係が大事ですから、管理会社を通じて賃借人と交渉するなどして、どう考えているか、様子を見てみるといいでしょう」(野上さん)

自分の状況と照らし合わせて、必要かどうかを慎重に検討してください。

※この記事内のデータ、数値などに関しては本記事は、2023年10月5日時点の情報をもとに制作しています。

取材・文/本多 智裕

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