賃貸住宅でも増えている「ゴミ屋敷」。未然に防げる?ゴミ屋敷にしてしまう人の傾向は?
大量のゴミを家の内外に溜め込むことで、悪臭や害虫といったトラブルや、ときには火災などの危険につながることのある「ゴミ屋敷」。2022年10月には、環境省が中心になって「ゴミ屋敷」の発生件数や対応についての実態調査を行うことが発表されました。調査結果に先立ち、現状や対策をまとめました。
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ゴミ屋敷の解決が難しい理由は?国の法律はまだ未整備
長期化しやすく、解決が難しいといわれるゴミ屋敷の問題。現在の日本の法律では、ゴミとはいえ個人の所有地にあるものを勝手に処分することはできません。ゴミの所有者が「これは財産」と主張してしまえば私有物という扱いになり、勝手に処分すると所有権の侵害にあたるからです。
賃貸住宅の場合は共有スペースまでゴミがはみ出たり、近隣への被害などがなかったりすれば、気付かれにくいことも多く、たとえ実害があっても居住権の関係ですぐに契約解除をすることは難しくなっています。
ゴミ屋敷対策、全国自治体の現状はどうなっている?
少し前のデータですが2018年に環境省が発表した『平成 29 年度「ゴミ屋敷」に関する調査報告書』によると、全国1741 市区町村のうち、「ゴミ屋敷」の事案について「認知している」が34.2%、「認知していない」が65.8%でした。
2018年の時点では、全国で6割以上の自治体が認知していないという状況。認知状況については、都道府県別で広島県が56.5%と最も認知率が高く、埼玉県、愛媛県、東京都と続きます。最も低いのは青森県で、続く高知県、奈良県までは20%以下となっています。
「ゴミ屋敷」に対応することを目的とした条例の制定は、「有り」が82市区町村(4.7%)にとどまっています。条例内でゴミ屋敷に対して罰則規定を設けているのは、そのうち17市区町村(条例設定82市区町村のうち20.7%)でした。
2018年当時よりもさらに対策が重要視されているからこそ、現状把握のために今回の実態調査が行われることになったのでしょう。
自宅をゴミ屋敷にしてしまいやすい人の共通点は?
それでは、自宅をゴミ屋敷にしてしまう人に特徴や共通点はあるのでしょうか?
特殊清掃や遺品整理を行う(株) GoodServiceが不動産賃貸オーナー・不動産管理会社を対象に実施したアンケート調査では、以下のような結果が出ています。上位3位までを引用します。
Q.ゴミ屋敷状態になる人に多い特徴として当てはまるものは何だと思いますか?(複数回答可)
一人暮らし・・・65.4%
高齢者・・・28.7%
未婚・・・26.7%
Q.ゴミ屋敷状態になる人に多い行動、生活習慣として当てはまるものは何だと思いますか?(複数回答可)
不規則な生活をしている・・・38.1%
物を捨てられない・・・36.6%
在宅時間が長い・・・31.6%
また、不用品回収を行う「関西クリーンサービス」を運営するA-LIFE(株)が、役所に勤務している方を対象に行った別の調査では、以下のような結果が報告されています。(上位3位)
Q.ゴミ屋敷問題を抱えている方の特徴を教えてください
一人暮らしをされている方・・・57.1%
ものを捨てるのが苦手な方・・・28.0%
定職に就かれてない方・・・23.0%
Q.ゴミ屋敷問題を抱えている方が多い年齢層を教えてください
70代以上・・・45.7%
60代・・・22.8%
50代・・・16.6%
決して一概にはいえないものの、状況を注意してくれる人が近くにいないことや、ゴミ収集の時間に寝ている生活リズム、物を捨てるのが苦手で溜め込んでしまうこと、高齢による判断力の低下などが原因のひとつとなっている可能性があります。
ゴミ屋敷の対策は?全国のゴミ屋敷条例の一部をご紹介
ゴミ屋敷について条例を制定している自治体が、2018年時点で5%未満に過ぎないことはすでに触れましたが、今後は少しずつ増えていくものと思われます。条例に当てはまる「ゴミ屋敷」の定義と、自治体の対策例についてご紹介します。
「ゴミ屋敷」の定義とは?
条例ではそもそも、「ゴミ屋敷」という言葉は使われません。多くの条例では「不良な生活環境」や「不良な状態」と表記され、その定義もまちまちです。
また、「ゴミ」ではなく「物品の堆積」としていることも多く、これは住人にとっては財産や資源である場合もあることに配慮したためと思われます。
「ゴミ屋敷条例」というのは通称で、どの自治体の条例もすぐには分かりにくい表記となっています。また、注意や勧告といった軽いものから、強制力の強い行政代執行を含むものまで、その執行力も様々です。
例えば、世田谷区の「住居等の適正な管理による良好な生活環境の保全に関する条例」では以下のように定義されています。
●現に、居住者が居住していること
●住居等(住居及びその敷地)に物品が堆積し、又は散乱した状態にあること
●居住者及び地域住民の生活環境が著しく損なわれている状態にあること
このように、ゴミがあふれることによって付近の衛生状態が悪くなり、近隣の住民の生活環境に影響が出ている場合を「ゴミ屋敷」と定義している場合が多いようです。
2009年に全国の自治体で初めてゴミ屋敷に関する条例が制定されました。正式名称は「良好な生活環境の確保に関する条例」です。
ゴミ屋敷条例の最終措置である行政代執行を定めており、住人に代わって行政の職員がゴミの撤去や片付けを行うことができます。作業にかかった費用は本人へ請求されますが、行政代執行までには立ち入り調査や指導、勧告といった段階があります。
「ゴミ屋敷条例」とは異なりますが、一般ゴミを集積所に出すことが困難な人のために、埼玉県所沢市では週に一度、市職員が自宅まで訪問して玄関先でゴミを収集する「ふれあい収集」というサービスを実施しています。ゴミが玄関先に出ていない場合は声掛けも行っているため、利用者の安否確認にもつながっています。
高齢化によるゴミ屋敷の防止だけでなく、孤独死予防の観点もあるため、同様のサービスを取り入れる自治体が全国で徐々に増えつつあります。
賃貸でゴミ屋敷が発生した場合の対処法は?
前述の通り、いくら賃貸物件とはいえ、すぐに強制退去を要求することはできません。借地借家法「家主の解約や契約更新拒絶には正当事由がなければならない」にある「正当事由=ゴミ屋敷」を退去理由して立証する必要があるからです。
まずは、ゴミを片付けるように口頭や文書で注意し、それでも聞き入れてもらえなかった場合は、内容証明郵便による通達とともに行政に相談し、明け渡し訴訟という流れになります。
相談後は行政による調査が入り、指導や勧告が行われますが、その執行力は自治体によって違うため、お住まいの自治体の条例を確認しておきましょう。
しかし、ゴミ屋敷になる前の段階で、その遠因となる生活リズムや体調の変化に気付けることが、お互いにとってもベストといえます。行政の対応も視野に入れつつ、慎重に対処するようにしましょう。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2023年1月17日時点のものです。
文/丸石 綾野
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