首都圏から本社を移転する企業が過去20年で最多に!コロナ禍で変化する「本社は首都圏」という常識

その他
  • 市況・マーケット
この記事が気になる

【この記事が気になるとは】
会員様限定のサービスです。 会員の方は、「ログインする」そうでない方は、
会員登録して再度アクセスしてください。

ログインする ⁄  会員登録する
閉じる
公開日:2023年4月13日
更新日:2024年3月8日
首都圏から本社を移転する企業が過去20年で最多に!コロナ禍で変化する「本社は首都圏」という常識1

ここ数年で、私たちの暮らしをすっかり変えた新型コロナウイルス。テレワークの定着により、住まいの郊外化・地方化が注目されていましたが、人だけでなく、企業にも本社を東京などから地方へ移転する「脱首都圏」の動きが広がっているようです。2022年の帝国データバンクの調査結果から最新事情をご紹介します。

【登録はすべて無料】オーナーズ・スタイルでは様々なメディアで情報を発信中!

お役立ち情報を
週2回無料で配信中!
約100pの情報誌を
年4回無料でお届け!
オーナーズ・スタイル
お役立ちメルマガ

メルマガ登録はこちら
賃貸経営情報誌
オーナーズ・スタイル

情報誌の読者登録はこちら

 

2年連続の転出超過は12年ぶり!規模は過去20年で最大

2022 年の1年間で、首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)から地方へ、本社または本社機能を移転した企業は335社。

コロナ禍直前の2019年調査からは1.4倍に増加しており、調査開始(1990年)以来最多を記録した前年の351社に続いて2番目の多さとなります。

地方→首都圏への本社移転は過去20年で最少

一方で、地方から首都圏へ本社を移転した企業は258社。前年の328社から2 年ぶりの減少で、過去20年で最少件数に。地方の成長企業などが首都圏へ本社を移す動きが弱まったものとみられています。

転出>転入は12年ぶり、超過規模は20年で最大

この結果、首都圏の本社移転動向は、転出が転入を77社上回る「転出超過」に。昨年に続き、2年連続の転出超過となるのは 2009-2010 年以来 12 年ぶりで、転出超過の規模は過去20年で最大となりました。

大阪圏や名古屋圏など、他の主要都市圏の企業転出入と比較しても大幅な増加となっており、調査では「首都圏の企業吸引力は相対的な低下傾向がみられる」としています。

移転の理由は?コロナ禍当初とは異なる現状

首都圏から本社を移転する企業が過去20年で最多に!コロナ禍で変化する「本社は首都圏」という常識2

イメージ:テレワークの推奨で閑散とするオフィス

では、本社を移転するにあたり、どういった理由が多いのでしょうか。その理由もコロナ禍当初と現在とでは、少し異なっているようです。

コロナ禍当初|売上高減少、業績悪化で地方へ移転

コロナ禍当初は、環境変化によって業績が急変し、オフィス賃料の高い首都圏から地方へと移転する動きが急増。

2020年、首都圏外へ移転した企業のうち、移転年の売上高が前年から減少した割合が57%と、半数を超えていたことからも分かります。これは、リーマン・ショック直後の2009年(61%)に次いで高い数値となります。

現在|リモートの定着+新たなビジネスの可能性も底上げ

コロナ禍を経たいま、WEB会議を活用したビジネススタイルや、リモートワークなど場所に縛られない多様な働き方が定着しつつあります。本社機能を集約する必要性が薄れるなか、BCP(事業継続計画)※上のリスク分散としての一面も指摘しています。

加えて、地方で新たなビジネスに挑戦したいといった前向きな移転需要や、首都圏の本社機能やワークスペースを削減・縮小し地方へ拠点を分散化する動きも活発になっているようです。

※BCP(事業継続計画)=企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のこと

茨城県への移転が最多。全体では41道府県に移転

首都圏から本社を移転する企業が過去20年で最多に!コロナ禍で変化する「本社は首都圏」という常識2

茨城県・つくば駅前

首都圏からの移転先としてはどこが多いのでしょうか?最多は「茨城県」の34社で、2018 年以来4年ぶりの首位に。次いで「大阪府」、「愛知県」となっています。

移転先となる地域は41道府県あり、これは1990 年以降で最多となります。首都圏からの本社移転先として大都市部や北関東3県など首都圏近郊エリアが多かったこれまでと違い、リモートワークの定着により、遠隔地や、人口密度の低い地方・中核都市が候補となってきていることが分かります。

コロナ禍で人気が上昇した移転先は?

コロナ前(2017~2019 年)に比べ、コロナ後(2020~2022 年)で首都圏から移転した企業が急増している地域も。

各3年間の移転社数合計を比較すると、コロナ後の移転社数が急増したのは「北海道」でした。コロナ前28社から、コロナ後56社と倍増したほか、首都圏からの移転社数として2020年には過去最多を記録。

この他にも、「宮城県」(17→33 社、+16 社)、「静岡県」(54→69 社、+15 社)、「愛媛県」(2→16 社、+14 社)が首都圏からの移転先として増加しています。

移転が多い業種は?中堅企業クラスにも拡大中

首都圏から本社を移転する企業が過去20年で最多に!コロナ禍で変化する「本社は首都圏」という常識2

業種はサービス業が多く、企業規模が中堅クラスに拡大

首都圏から転出した企業の業種は、「サービス業」が 129 社で最多で、なかでもソフトウェア開発やベンダー、ドローン開発など先端技術産業も含めたソフトウェア産業がそのうち2割超に。

次いで食品産業の増加が目立つ「製造業」、「卸売業」、飲食店などを中心にした「小売業」が続きます。

首都圏外への移転動機も、土地の安さや利便性以外の基準が加わりつつある、と同調査では分析。たとえば食品産業などでは自然環境の豊かさ、ドローン産業などでは研究開発に適した人家の少ない環境など、各産業のニーズを反映したものとなっています。

転出企業で最も多いのは「1億円未満」の企業

転出企業の売上高規模別では、最多は「1 億円未満」(149 社)で、多くが小規模な企業となっています。

ただし前年の176 社からは大幅に減少する一方で「1-10 億円未満」(143 社)が前年から31社増加。コロナ禍直後は身軽な小規模企業の移転が多くありましたが、業績が堅調で規模の大きい中堅企業にもその動きが広まっているようです。

転入企業で最も多かったのも「1-10 億円未満」ですが、社数は前年に比べてマイナス29社と大幅に減少しています。

「脱首都圏」の動き、今後の見通しはどうなる?

首都圏から本社を移転する企業が過去20年で最多に!コロナ禍で変化する「本社は首都圏」という常識2

コロナ禍によってITツールの導入が進み、人事や総務部門といった本社機能もより低コスト・低リスクで効率的な運用が可能になりました。そのため、首都圏に必ずしもオフィスを置く必要がないという企業の認識は「恒久的なものへと定着しつつある」と帝国データバンクでは分析。

テレワークなどコロナ禍に対応したビジネス環境の定着にともなって、企業の「脱首都圏」の動きは当面続くとみられる、としています。

さらに、工業団地の整備や助成金といった「モノ・カネ」中心の移転から、生活環境など「働く“ヒト”」のエンゲージメント向上、製品品質の向上といった「ストーリー性」などの判断材料も出現。これらにより、企業の移転理由が多様化し、移転先もより広範囲になるのでは、とまとめています。

※この記事内の情報は2023年4月11日時点のものです。

取材・文/石垣 光子

出典元の調査データを詳しく見る

【登録はすべて無料】オーナーズ・スタイルでは様々なメディアで情報を発信中!

お役立ち情報を
週2回無料で配信中!
約100pの情報誌を
年4回無料でお届け!
オーナーズ・スタイル
お役立ちメルマガ

メルマガ登録はこちら
賃貸経営情報誌
オーナーズ・スタイル

情報誌の読者登録はこちら

 

この記事をシェアする

関連する企業レポート

関連するセミナー・イベント

関連する記事