賃貸アパート・マンションを建てるなら、知っておくべき建築に関する法規制[建築の基礎知識#10]

建築の実務は専門家に任せるにしても、アパート経営をするオーナー自身も最低限把握しておきたい法規制があります。建築基準法や都市計画法などに定められた、代表的な建築制限について解説しましょう。

建築基準法と都市計画法で決まる建物の種類や規模

「自分は建築の素人だから」と、いきなり建築会社や設計事務所に相談に行くのはおすすめできません。

所有している土地に、どんな種類の建物をどれくらいの規模で建てられるのかを、まずは自分自身で把握しましょう。

そこに、どんな建物を建てたいかをイメージし、希望するプランが得意な施工会社を選択するのが望ましいアプローチです。そのためにオーナーが身に付けておきたい最低限の建築法規を紹介します。

建物が建てられる土地かどうか?~接道義務~

そもそも「所有している土地に建築が可能かどうか」を知ることが初めの一歩です。

建築基準法では、原則として「建築物は幅4m以上の道路に2m以上接しなければならない」と規定されています。これが「接道義務」です。接道義務を満たさない敷地には、建物は建てられません(※)。

※都市計画区域外には適用されない。

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ただ、前面道路が4m未満の場合でも例外があります。たとえば、建築基準法が施行される前から存在した「二項道路」の場合です(図1-1参照)。

二項道路に面している敷地では、道路の中心線から2mセットバック(敷地や建物を道路から離すこと)すれば建築できるようになります。セットバック部分は道路と見なされるため、自分の所有地でも建築できません。

逆に、4m以上の道路に2m接していても、図1-2のような「路地状部分」のある敷地の場合は建築できない場合があります。

路地状部分が長い場合は、自治体によって、道路に接するべき敷地の幅を広げる規定が設けられているケースがあるからです。

たとえば、東京都の建築安全条例では、路地状部分の長さ(奥行)が20mを超える場合は、道路に接する幅(間口)が3m以上なければなりません。

自治体によって、路地状部分の奥行と間口の関係は異なりますので、所在地を所轄する自治体に確認してみましょう。

どんな種類の建物が建てられるか?~用途地域~

次に、所有している土地に建てられる建物の種類を確認します。これを規定しているのが都市計画法と建築基準法で定められた「用途地域」です。

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図2のように「住居系」「商業系」「工業系」という3つのグループがあり、それぞれのグループ内にさらに細分化されて、全部で13種類に分かれています。

アパートやマンションなどの共同住宅は、工業専用地域以外ならどこでも建築可能です。建物の高さは用途地域によって異なりますが、自分で住むか、賃貸にするかの違いもありません。

注意したいのは、住宅と店舗、事務所など他の用途が混在する併用住宅のケース。

たとえば、もっとも住居系の規制が厳しい第一種低層住居専用地域では、事務所や店舗は建てられません。床面積50㎡以下で、建物内で住宅と事務所や店舗が行き来できる“兼用住宅”のみ許容されています。

その他、住宅以外の賃貸経営を検討している場合は、用途地域内の細かい規定を調べておきましょう。

これ以外にも、都市計画法では防火地域・準防火地域を設け、延焼防止のために建物に求められる構造・仕様を定めています。これによって、骨組みや外壁、開口部などの構造・仕様が限定される点にも注意が必要です。

どのくらいの広さの建物を建てられるか~建ぺい率・容積率~

建物の規模を決めるのが「建ぺい率」と「容積率」で、用途地域ごとに定められています。建ぺい率は、敷地面積に対する建築面積の割合です。

建築面積は、だいたい1階の床面積(建坪)と考えておけばいいでしょう※。たとえば、敷地面積が200㎡で建ぺい率が80%なら、1階は160㎡以下に抑えなければなりません。

※厳密には、建築面積は建物を上から見た場合の水平投影面積。1階の外壁面より2階以上が張り出している場合は、広いフロアの面積となる。

容積率は、敷地面積に対する延べ床面積の割合です。建ぺい率との関係で、建築できる階数が決まってきます。

たとえば、敷地面積200㎡で、建ぺい率80%、容積率200%なら、建築可能な延床面積は400㎡。1階は建ぺい率で160㎡以下なので、建ぺい率いっぱいに建てる場合、[400÷160=2.5]となり、3階建てまで可能となります。1階床面積を100m2に抑えれば4階建てもできる計算です。

ただし、容積率は前面道路の幅によって制限されます。

また、第一種・第二種低層住宅専用地域の場合は、次で説明する「絶対高さ制限」もある点に注意しましょう。

どんな外観の建物を建てられるか~高さ・斜線制限~

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最後に、外観の形状やデザインに影響する規制を紹介します。

比較的住宅の建て込んでいる街中で、写真のような不自然な形状の屋根を見たことはありませんか?

「凝ったデザイン」と思うかもしれませんが、実は、建物の高さを規制する「斜線制限」という法律を反映したものです。法律が、そのまま現実の形として見えているともいえます。

斜線制限とは、近隣の日照などを確保するために、建築できる高さの範囲を斜めのラインで表現したもので、次の3種類です。

①道路斜線制限

敷地が接する前面道路との関係で決まる規制です。

図3-1(左)のように、道路の反対側の境界から斜め上に向かって線が引かれ、道路から奥に入るほど高い位置まで建てられるようになっています。すべての用途地域に適用される制限です。

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②隣地斜線制限

隣地との境界線から一定の高さより上から斜線を引いた範囲に収める規定です(図3-1右側)。低層住居専用地域と田園住居地域以外の用途地域に適用されます。

③北側斜線制限

北側に接する隣地との関係で規制されるもので、住居専用地域に適用されます(図3-2右側。図2の上から5番目まで)。

④絶対高さ制限

第一種・第二種低層住居専用地域と田園居住地域に適用されるもので、斜線制限ではなく、敷地全体の上限として設定されています。

10m規制の場合、建築可能な階数は3階建てまでが限度でしょう。

以上は全国一律の法律で決まっていますが、この他に、自治体によって「日影規制」「高度地区」などの制限が設けられている場合もあります。土地を持っている所在地の役所に確認してみましょう。

文/木村 元紀

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