【これから始める人は必見】賃貸アパート・マンション経営の5大リスクを解説[建築の基礎知識#6]

アパート・マンション経営には、安定収入や節税といったメリットがある一方で、空室・家賃下落・維持管理・金利上昇・災害などのリスクも存在します。それぞれについて詳しく解説しましょう。

リスク①~空室の増加と長期化~

アパート・マンション経営の理想は、すべての部屋に入居者がいる「満室」状態です。

しかし、満室経営をずっと続けるのは簡単ではありません。周辺に競合する賃貸住宅が多かったり、家賃水準が相場より高かったり、あるいは、築年数が古くなってプランがニーズから離れてしまったり、様々な理由で空室が発生します。

うまく対処できなければ空室率が高まり、長期化するおそれがあるのです。ひいては収益が悪化し、経営状態も不安定になります。

図1は、管理会社に賃貸管理を委託している賃貸住宅の空室率の推移を示したデータです。

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2015~2017年度は10%前後でしたが、その後は低下しています。

新型コロナ禍で最初の緊急事態宣言が出た2020年度の上期(4~9月)は一時上昇しましたが、同下期(2020年10月~2021年3月)は再び低下しました。

関西圏がもっとも低い3%台、首都圏が6%、その他の地方圏はやや高く8%程度となっています。

意外に低いと思ったかもしれません。ただ、このデータは日本賃貸住宅管理協会に所属している管理戸数の多い有力な管理会社数百社の実績です。

全国に1万社以上いる賃貸管理会社の管理物件や、委託管理をしていない自主管理オーナーの物件を含めると、もっと高いと推定されます。地域によっては空室率が20~30%を超えるケースもあるでしょう。アパート・マンション経営を始める地域の実状を知る必要があります。

リスク②~家賃下落と家賃滞納~

空室リスクと並んで、賃貸経営に悪影響を与える大きな要因が家賃の下落です。家賃下落には、2つの要素があります。

1つは、国や地域の経済情勢の悪化、人口減少、供給過剰などによる家賃相場全体のトレンドが下がることです。

2つ目は個々の物件ごとの問題で、建物の老朽化、プランの陳腐化などを放置することによって発生します。

図2は首都圏のアパートの家賃トレンドを地域別に示したデータです。

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新型コロナ禍で家賃は下落するという懸念もありました。

しかし、実際には大きな影響は見られず、ほぼ横ばいに近い状態で推移しています。

なお、賃貸マンションは東京23区や大阪市では上昇中です。これはあくまでも広いエリアを対象にしたトレンドです。もう少し狭い範囲や個々の物件によっては、下落しているケースもあるでしょう。

家賃下落リスクは、いわゆるサブリース契約でも変わりません。

また、滞納率については、前出の日管協の調査では、それほど多くありません。

「うっかり払い忘れ」を含めた月初は5%程度、1か月滞納が2%前後、2カ月以上滞納は1%以下です。きちんと入居者管理を行っていれば、それほど悪化する心配はありません。

また昨今は、家賃保証会社を使うケースも増えているため、以前に比べると滞納のリスクは減っています。

リスク③~メンテナンスと修繕~

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3番目はメンテナンスや修繕に関わるリスクです。

空室や家賃下落は収入減少に直結しますが、こちらは支出と手間に関係します。

入居者が快適に住み続けられるように、居住環境と建物の状態を良好に保つメンテナンス業務は、賃貸経営の本業ですから、それ自体はリスクではありません。

外壁や屋根、給排水設備やエレベーターなど、各箇所でメンテナンスがきちんと行われていないと、入居者からのクレームや設備トラブルを招き、さらには、退去、空室の悪化につながるおそれがあります。適切なメンテナンスは空室対策でもあるわけです。

また、建物は時間が経つにつれて徐々に機能が下がっていきます。目に見える亀裂や損傷は直しても、表面に現れない経年劣化は見逃しがちです。

たとえば、外壁や屋根・屋上防水は、建物の骨組みが劣化するのを防いで耐久性・耐震性を保ちます。

しかし、「多少の汚れなら、まだ大丈夫」「あまりコストを掛けたくない」と何もせずに放置していると、雨漏りや風雨の影響で急速に老朽化が進み、寿命が縮んでしまうかもしれません。

施工会社や修繕施工会社の無料診断などを活用して、修繕を行うかどうかのチェックをしましょう。

必要な修繕に備えて費用を積み立て、5年、10年単位の長期的なスパンで計画的に修繕を行えば、こうしたリスクは避けられます。

リスク④~金利上昇、返済負担アップ~

ローンを借りてアパート・マンション経営を行っている場合は、借り入れ金利の変化にも注意が必要です。金利が上昇して返済負担が増えれば、収支が圧迫されます。

図3は、ローン金利のベースとなる10年国債の利回り推移です。

10年国債利回りは「リスクフリーレート」と呼ばれ、ここに1~2%上乗せした水準が貸し出し金利となります。

この5~6年は1%以下の超低金利が続いていますが、過去には6%超になり、瞬間風速的には8%を超えた時期もありました。

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経済成長率と金利は、ある程度はリンクするため、低成長下の日本で8%になる可能性は低いと思われますが、2~3%くらいアップする可能性はあるでしょう。

この程度の金利変動に耐えられるくらいの資金計画を立てておく必要があります。

リスク⑤~災害による建物損傷・倒壊~

最後は、地震や台風、火災などによって建物が大きな損傷を受けるリスクです。

第一に、こうした災害に耐えられる建物の設計が重要でしょう。一般には、鉄筋コンクリートのマンションが堅牢で火災に強いと言われますが、木造や鉄骨造でも大地震に耐えられる工法、火災に強い仕様もありますから、一概に構造だけでは判断できません。

いくら建物を頑丈に作っても、想定外の事態が起こる可能性はあります。そんなリスクに備えて加入するのが損害保険です。

ローンを組む場合は、火災保険への加入が必須ですし、任意加入の地震保険は火災保険とセットでないと入れませんが、同時に加入するケースも徐々に増えてきました。

アパート・マンション経営を行うオーナーなら、建物や設備が原因で入居者や通行人にケガをさせた場合に補償される「施設賠償責任保険」も検討しておきたいものです。

以上、アパート・マンション経営に関連する代表的なリスクについて解説してきました。どれも一定程度は対策を立てられる要素なので、リスクマネジメントの観点から準備しておきましょう。

文/木村 元紀

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