賃貸アパート建築の検討開始から賃貸経営スタートまでのスケジュール[建築の基礎知識#5]

アパート経営を検討し始めてから実際に賃貸経営をスタートするまでに、どんな流れをたどり、どのくらいの期間がかかるのでしょうか。手持ちの土地がある場合を中心に全体スケジュールを解説します。

施工会社に接触する前の準備に3カ月

土地オーナーがアパート経営を始めようとしたとき、何から始めるでしょうか。

まとまった土地の所有者なら、一度や二度はアパート・ビルダーの営業を受けたことはあるでしょう。こうした飛び込み営業に警戒感を持っているオーナーは少なくありません。

ただ、意外に多いのは、賃貸住宅を建てるのに住宅展示場に行ってしまうケース。

昨今は賃貸併用住宅の展示も見られるようになりましたが、基本は自宅用の住宅建築を検討している人向けで、設備仕様も間取りプランも賃貸用とはまったく違います。

にもかかわらず、豪華なプランやその場の雰囲気にのまれ、賃貸事業部を紹介されると、人当たりのよい営業担当者に任せて話がどんどん進んでしまう。あるいは、取引のある銀行や税理士、不動産会社の紹介も珍しくありません。

いずれの場合も、施工会社が敷いたレースに乗って割高な建築費で進められるおそれがあります。

こうした事態を防ぐには、施工会社に接触する前段階の準備が大切です。

そもそも「何のためにアパート経営を始めるのか」という目的を明確にして希望条件を整理すること。相続対策なのか、所得税や固定資産税の節税なのか、老後を見据えた安定収入の確保なのか……。

何を重視し、いつまでに何をするか、人生設計を踏まえた目標を立てることが先決です。

賃貸アパート建築の検討開始から賃貸経営スタートまでのスケジュール[建築の基礎知識#5]2

そして、オーナー自身で、アパート建築や賃貸マーケットについて基本的な知識を得るための情報収集も欠かせません。

自分の土地に、どのくらいの規模の賃貸住宅が建てられるかを想定し、おおまかな事業収支計画を立てられる程度のノウハウを身につけましょう。

こうした準備に最低でも2~3カ月は必要です。また、ホームページ等で紹介されている建物現地見学会や資料請求、セミナーや説明会などのイベントに参加して情報を集めるのも有効な手段です。

所有地への建築ならトータル1年半が目安

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次いで、複数の施工会社から1社を選び、建築請負契約を結んで着工にこぎつけるまでに5~6カ月はかかります。施工会社と別に設計事務所に依頼する場合は、プラス1~2カ月は見ておきたいところです。

着工から竣工までの期間は、建物の規模や構造・工法によって大きく変わります。

図1の6カ月というのは、木造や鉄骨造で10戸前後の2~3階建てアパートを想定しています。着工から竣工までの建築工期は「階数+1~2箇月」くらい。竣工したからといって、すぐに賃貸経営が始められるわけではありません。

竣工後の施主検査・修正工事などがあり、建築費の残金決済と引き渡しを受け、所有権を投棄して初めて部屋を貸せる状態になります。

入居者募集や賃貸借契約を結ぶこと自体は建物完成前から始められますが、契約の効力が発生するのは、オーナーが建物の所有権を得てからです。

したがって「建築工期+1~2箇月」で賃貸契約がスタートできると考えておいたほうがいいでしょう。ちなみに、鉄筋コンクリート(RC)造のマンションの建築工期は「階数+3~5カ月」と言われています。

以上の点を総合すると、アパート建築の検討から賃貸経営開始まで、トータルで1年数カ月から1年半くらいを目安にしておくといいでしょう。

ただし、所有している土地がすぐに建築できる更地や駐車場ではなく、先代から受け継いだ古いアパートなどがある場合は、建て替えに関わるプロセスが加わります。

特に、既存入居者の立ち退き交渉が難題です。入居者の合意が取れずに、明け渡し訴訟に発展するなど、長引くおそれもあります。複数の入居者がいるため、スムーズに行って1年、難航すると2年程度かかることも珍しくありません。

不動産投資なら検討開始から賃貸経営スタートまで数カ月?!

土地を所有していない不動産投資の場合、事前の勉強や情報収集を別にすれば、目当ての物件が見つかってから引き渡しまで、スムーズに進めば2~3カ月程度しかかかりません。

入居者がいる中古アパート、いわゆる「オーナーチェンジ物件」なら、引き渡しと同時に賃貸経営スタートになります。

土地付き新築アパートを購入した場合は、新規に入居者を募集する期間がありますから、引き渡し後に最短でもプラス1~2カ月はかかるでしょう。

いわゆるサブリース(一括借り上げ)契約の場合、引渡しと同時にサブリース契約の効力は発生します。

しかし、契約当初は募集期間としてオーナーに賃料を払わなくてもいい免責期間が設定されているのが一般的。だいたい1~3カ月程度と言われます。免責期間中は、実質的に賃貸経営は始まっていないといえるかもしれません。

既存物件を購入する場合は、新築・建て替えに比べるとスピーディに賃貸経営を始められます。ただ、前述した期間は、物件がスムーズに見つかった場合が前提です。

実際には、物件検索を始めてから予算や希望条件に合う物件に出会うまでに時間がかかることは珍しくありません。あくまでも理想的なスケジュールの目安と考えてください。

文/木村 元紀

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