賃貸住宅建築の最適プランを浮き彫りに!エリアマーケティングのノウハウ[プランニング#2]

アパート・マンション建築を計画しているオーナーなら、知っておきたいのが「エリアマーケティング」のノウハウ。入居者から選ばれるプランづくりに欠かせない工程です。その内容と実施方法を紹介します。

賃貸市場の調査は、事業計画の立案時から有効

敷地調査と併せて行うのが、収益を生むプランづくりに欠かせない「エリアマーケティング」、いわゆる「市場調査」です。市場調査というと、家賃相場を調べることだというイメージもありますが、ここではもっと幅広い概念を指します。

建築パートナーを選ぶに際に複数の施工会社などにプラン提案を依頼すると、どの会社も独自に対象エリアのマーケティングは行います。その調査結果を見ればいいのではないか、と思うかもしれません。

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しかし、建築する土地は同じにもかかわらず、会社によって提案するプランは違ってきます。エリアマーケティングから得られる基礎データは変わらないはずですが、どのデータを採用するか、どう分析するかによって結果が異なるわけです。

複数の提案プランを比較し、希望や目的に合っているかを客観的に判断するためにも、オーナーも自分なりにマーケットの状況を把握しておくべきでしょう。

賃貸住宅建築における、エリアマーケティングの目的とは

実は、エリアマーケティングの最初の目的は、プランづくり以前に事業計画を立てるための判断材料を得ることでもあります。

そもそも所有している土地でアパート・マンション経営をすること自体が妥当かどうか、将来にわたって着実な賃貸ニーズが見込めるかどうかを見極める必要があります。そのために人口動態などのマクロデータも重要になります。

賃貸ニーズが衰え、空室率が悪化することが明らかな地域では、賃貸経営のリスクが高いため、事業計画自体の軌道修正が必要な場合もあります。

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賃貸住宅ではなく、トランクルームや小規模配送拠点など別の用途が有効かもしれません。建築自体を諦めて、売却した方が良いという結論になる可能性すらあるのです。

プラン提案を依頼された施工会社は、建築することを前提に調査データを活用するでしょう。しかし、いくら相続対策や節税にアパート・マンション建築が有効といっても、賃貸ニーズのないエリアに建てても、入居者は確保できないのです。そこは冷静に判断しましょう。

ターゲット選定では、具体的に属性をイメージする

エリアマーケティングの次の目的は、プランづくりの軸となるターゲットの選定です。その地域の賃貸住宅にはどんな入居者層が多いのか、その中からどの層に狙いを定めるかを検討します。必ずしも主流の入居者層がターゲットになるとは限りません。オーナー自身の経営思想や戦略次第です。

たとえば、大学が近くにありアパートの入居者のほとんどが単身学生の街だとしても、少数でもファミリー層のニーズがあるなら、あえてファミリータイプのプランにするという選択肢もあり得ます。まだファミリータイプが少なく、近くに保育所やスーパーなどがあれば、競争力は高くなるでしょう。

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また、以前は「シングルかファミリーか」という二者択一の比較が中心でしたが、シングル層以外も多様化しています。夫婦2人の小ファミリーでも、新婚カップル向けかDINKS(共働きで子供のいない夫婦)か高齢夫婦かによっても、プランニングの方向性は変わります。

そこでまずはターゲットにする入居者像を、できるだけ具体的に想定しましょう。年齢、性別、勤務先・通学先、職業、年収、家族構成に加えて、趣味嗜好やライフスタイルもイメージします。そこから自ずと差別化のためのコンセプトも浮かび上がってくるでしょう。

エリアマーケティングの調査ポイントは図2の通りです。競合物件になるのは賃貸住宅だけではありません。

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超低金利の住宅ローンが借りやすくなっている現在、家賃並みか、場合によっては家賃より軽い負担でマイホームを持てる時代になりました。脱賃貸の受け皿となる持ち家マンションの動向にも注意しましょう。

マーケット調査に役立つ!3つのアプローチ

エリアマーケティングの方法としては、図3のように3つのアプローチがあります。

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基礎データについては、ネットでもある程度までは調べられます。たとえば以下のようなサイトです。

・人口動態…統計局や各自治体のホームページ
・家賃相場…部屋探しポータルサイト
・入居者ニーズ…SUUMOやHOME’Sの大家さん向けサイト
・周辺環境…地図アプリ

この他、最近では、AIやビッグデータなどのデジタル技術を活用した「不動産テック・サービス」も登場しています。

ネット検索では得られない精密なデータ分析や将来予測の情報を、会員制で無料だったり、低価格の月額負担制だったり、手軽に得られるようになりました。たとえば、コスモスイニシアの「VALUE AI」、COMPASSの「AI SCOPE」などが挙げられます。 

仲介・管理会社へのアプローチとしては、直接訪ねてヒアリングすることもできますし、市場調査レポートを無料で作成してもらえるところもあります。

最終的には、オーナー自身が足を使って現地から最寄り駅周辺を歩き、自分の目で街の様子や人々の動きを確認しましょう。様々な情報が得られるはずです。

文/木村 元紀

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