賃貸アパートやマンションで竣工前に満室にするプランづくりのコツ[プランニング#7]

賃貸アパート・マンション経営では、引き渡しとほぼ同時に満室スタートできるのが理想です。建築中に入居者募集を始めて、内見なしで申し込みを獲得するプランづくりのノウハウを紹介します。

正攻法か逆張りか、どんなアプローチを取るかを決める

「新築で最新設備が入っていれば満室にするのは難しくない」と思うかもしれませんが、もはや、そんな発想は利便性の高い一部の場所でしか通用しません。新築でも入居者を惹き付ける魅力的なプラン、募集活動の工夫が必要です。

募集活動の工夫については、仲介会社や管理会社の選び方に関わりますので、下記ページを参照してください。なお、サブリースの場合は、管理会社と契約した時点で実質的に満室のため、空室の心配はありません。

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ここではプランづくりに絞って考えてみましょう。まず、満室を目指すプランを考えるに当たって、徹底したマーケティングで地域特性をつかむことが前提にあることは言うまでもありません。

そして、プラン作りです。アプローチには2つあります。

正攻法アプローチ

1つは、その地域のメインとなる入居者層、つまりボリュームゾーンに合わせた間取りを選び、そこにちょっとした味付けをする方法です。正攻法のアプローチといえます。単に、周囲と同じプランに合わせただけでは、早期の集客は見込めません。

たとえば、社会人シングルが多いエリアで、20平方メートル前後のワンルームが一般的なら、20平方メートル後半から30平方メートル前後の少し広めの1K~1DKに。プラスアルファとして、高速インターネットなど人気の高い設備を採り入れることで、ある程度は競争力を発揮できるでしょう。同じ地域内からの住み替え需要も期待できるかもしれません。

逆張りアプローチ

2つ目は、競合の多いボリュームゾーンを避けて、あえて少数派をターゲットにするやり方です。逆張りアプローチとも言えます。たとえば、すでにシングル向けが飽和状態にあるなら、ファミリー層向けの大型3LDKを作るのも戦略の1つです。

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昨今、在宅勤務のための広めのタイプを志向するファミリーも増えているため、テレワークやオンライン授業に対応できる間取りプランや、共用部分にスタディルームやコワーキングスペースを設けたプランなどは、新たなニーズをつかめるでしょう。

こだわりを持つ入居者を惹き付ける魅力の追求

3番目のアプローチもあります。時代のニーズを先取りしたプランや、ニッチな需要でも根強い支持を集めるプランに挑戦するやり方です。

地域にないマーケットを作るという発想と言えるかもしれません。立地や家賃水準よりも、プランを優先して選ぶ入居者を惹き付けられる魅力が大切。広域に集客できる可能性も高まります。いくつかの例を紹介しましょう。

デザイナーズ賃貸
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※写真はイメージ

意匠設計に特徴のある建築家がプランを作った賃貸住宅は、「人と同じ部屋には住みたくない」「オリジナリティのある、ここにしかない部屋に住みたい」といったこだわりを持つ入居者に、根強い人気があります。

外観をコンクリート打ち放し風にして、内装にオシャレな素材を使っているだけで、間取りは普通と変わらない“なんちゃってデザイナーズ”は、あまり競争力が高いとは言えないかもしれません。平面レイアウトや立体空間も含めて、一貫したテーマをもって設計されているかどうかが大切。

建築家に設計を依頼するとコストが割高になると思いがちですが、オーナーの依頼次第で、予算を抑えながらプランづくりをしてくれる建築家も少なくありません。見積りチェックや、工事監理もしてくれるため、コストパフォーマンスが高くて品質の良い賃貸住宅にできることも多いでしょう。

コンセプト賃貸
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※写真はイメージ

趣味嗜好やライフスタイルの共通した人向けに特徴を前面に出した賃貸住宅です。車やバイク好きのためのガレージ付き、音楽好き向けの防音仕様やスタジオ付き、家庭菜園付き、ペット共生型、コミュニティ賃貸など、様々なバリエーションがあります。

ハウスメーカーが手掛ける女性向けや防犯強化仕様なども、コンセプト賃貸の一種と言えるかもしれません。

こうした特色を持つプランは、郊外や駅から少し遠いなど、立地に多少のハンデのあるケースでも入居者を確保できる可能性があり、また退去しにくい傾向もあります。

地域によっては、すでに競合が発生しているコンセプトもあるようですが、それぞれ深堀していくことによって、競争力を高めることもできるでしょう。

新型シェアハウス

独立した個室と、キッチン・リビング・浴室などの共用スペースを持つシェアハウスは、すでに市民権を得て、かなり普及しつつあります。これまでは交流を求める若者の単身者向けが一般的でしたが、多世代・多文化共生型、シニア向けなども多様な形態が登場してきました。

シングルマザー向け、障碍者共生、副収入付き生活困窮者向けなど、社会課題の解決に取り組むオーナーもいます。また、ペット共生型シニア向けシェアハウスなど、他のコンセプトを融合させたタイプも登場しています。アイデア次第で、まだまだ可能性は広がるでしょう。

物件のファンづくりでブランド化

竣工前に全室申し込みを獲得するということは、実際の部屋を内見しないで決めてもらう形になります。つまり、入居者募集をする時点に使えるのは、間取り図と設備概要、完成予想イメージ(パースやCGなど)くらいしかありません。

これらの素材で差別化する方法の1つは、間取り図を見ただけで広さがイメージできるように、家具を配置したレイアウト例を書き込んだ間取り図を作るのも有効でしょう。

2つ目は特徴を打ち出して、ブランド化を図ることです。これは、必ずしも大手ハウスメーカーだけの戦略ではありません。

たとえば、デザイナーズ賃貸、コンセプト賃貸、シェアハウスなどを手掛ける設計事務所や工務店などが連携して、同じカテゴリーの物件を集めたサイトを運営しているケースが増えています。

会員制にして希望条件を登録してもらい、常に住み替え意欲を高める情報発信やイベントを行い、ファン層を作るわけです。なかには、常にウェイティング(申し込みの順番待ち)の入居希望者がいるサイトもあります。

このようなネットワークを持つ設計事務所や工務店にプランニングを依頼するのも、早期満室化を達成する近道と言えるでしょう。

文/木村 元紀

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