賃貸管理の種類と依頼する管理会社の選び方[プランニング#3]

賃貸アパート・マンション経営の実務をサポートしてくれる重要なパートナーが賃貸管理会社です。賃貸管理の業務内容、管理方式の違い、管理会社の選び方について紹介します。

管理業務は「ソフト」と「ハード」に分かれる

新築のアパート・マンション経営で、引き渡しと同時に満室経営をスタートするには、建物の着工前に賃貸管理会社を決めるほうが良いと言われます。

特に、2階建ての小規模なアパートの場合、建築期間は最短で3~4か月のため、着工後まもなく募集活動を始めないと引き渡しまでに満室に持っていくことが難しいからです。建築期間が1年以上になる規模の大きなマンションの場合は、もう少し後でもいいかもしれません。

では、賃貸管理会社はどのように選べばいいのでしょうか。そのポイントを理解するには、賃貸住宅の管理業務の内容や管理方式について知る必要があります。

⇒入居者募集について詳しくは[段取り#5]賃貸アパートやマンションの引き渡しまでに行う入居者募集のポイント

賃貸管理の種類と依頼する管理会社の選び方[プランニング#3]2


賃貸住宅の管理業務の内容は、図1のように多岐にわたりますが、大まかに分けると「入居者管理」と「建物管理」の2つになります。「ソフト面」と「ハード面」と分類してもいいでしょう。

店舗やオフィスなどのビル管理の場合は、それぞれ「プロパティマネジメント(PM)業務」と「ビルメンテナンス(BM)業務」と呼んでいます。

実は、入居者管理のうち、入居者募集から審査、最初の賃貸借契約の締結に至る業務は、現在は賃貸管理には含まれません。宅地建物取引業法の規制を受ける賃貸借代理業務に分類されます(図1の★印部分)。理由は、後述する賃貸住宅管理業法との関係です。

「自主管理」より、管理会社への「委託管理」が増えている

これらの業務をオーナー自身でこなす方式が「自主管理」、管理会社に任せる方式が「委託管理」です。委託管理は、一部に限った業務を頼む「部分委託」と、すべてを一括して頼む「全面委託」に分かれます。もともとは自主管理がほとんどでしたが、現在は委託管理が主流になりつつあります。

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2019年に国土交通省が調査した結果では、半数が一部委託、4分の1が全面委託、自主管理は2割弱です。もう少し自主管理の割合が高い調査もありますが、大きな流れとしては、自主管理が減少する傾向にあることは間違いありません。

この傾向の要因として、アパートを相続した賃貸経営の経験のない2代目や、サラリーマンが不動産投資で始めた兼業大家などが増加している面もあるでしょう。

管理会社に委託する主な理由としては、「契約更新・終了時のトラブルをなくしたいから」「自分自身の賃貸契約および管理に関する専門知識が不足していると感じるから」「建物に関するトラブル発生時に、適時適切に対応してほしいから」「入居者とのトラブル発生時に、第三者として間に入って調整してほしいから」などが挙げられます(国交省調査)。

管理方式は、自主管理、委託管理の他にサブリースもあります。

⇒サブリースについて詳しくは[プランニング#4]賃貸アパート・マンション経営におけるサブリースの仕組みと注意

管理委託費の目安

管理委託費の一般的な目安は、全面委託の場合で家賃収入の3~5%程度です。一部業務をアウトソーシングしてコストを抑えることもできます。

たとえば、「家賃徴収代行」をクレジットカード決済にして滞納保証もセットにしたサービス、入居者対応を代行してくれる24時間コールセンター・駆けつけサービス、清掃と点検をセットにしたサービスなど、様々なメニューが増えてきました。安易に全面委託せずに、検討してみることをおすすめします。

管理会社選びのポイントは、まず賃貸住宅管理業法に基づく「登録簿」を確認

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管理会社を選ぶポイントは、第1に信頼度です。従来は、任意の「賃貸住宅管理業者登録制度」(2011年創設)に登録されているかどうかが、選択の指標の1つになっていました。

実は、2021年6月に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」、いわゆる「賃貸住宅管理業法」が施行され、登録が義務化されたのです(管理戸数200戸以上の業者)。2022年6月15日までに登録しなければなりません。

そこで、まずは国土交通省がインターネットで公開している「賃貸住宅管理業者登録簿」に、検討している管理会社が掲載されているかどうかをチェックしましょう。

この法律に基づいて登録された管理会社は、業務管理者の配置(営業所・事務所に1名以上、兼任不可)、管理受託契約締結前の重要事項の説明、財産の分別管理、定期報告などが義務付けられます。

業務管理者とは、2年以上の実務経験を持ち、国が指定する一定の講習を受けた賃貸不動産経営管理士や宅地建物取引士などです。また、サブリースについても規制が強化されました。

この法律によって、「賃貸住宅管理業」の内容も法的に確立されたため、冒頭で紹介したように、従来は委託管理の項目の1つだった「入居者募集」は、賃貸住宅の管理業務から外れました。今後、入居者募集を併せて依頼する場合は、宅建業法に基づいた「賃貸借代理契約」を別途結ぶ形になるでしょう。

管理会社の「集客力」や「提案力」もチェック

その他、管理会社の良し悪しを判断するポイントは「集客力の高さ」です。集客力を測る指標には「入居率」や「平均空室期間」がありますから、確認してみましょう。

空室対策のノウハウ、提案力があるかどうかもポイントのひとつ。収益が下がる家賃の値下げ、出費がかさむリフォームばかりでなく、コストを掛けずに空室を埋めるアイデアが豊富かどうかをチェックします。

また「空室率」を下げるには、入居者満足度を高めることも大切。クレームやトラブルに対して、迅速で丁寧な対応が求められます。入居者管理の面で、どのような態勢があるかをチェックしましょう。

文/木村 元紀

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