完成してから後悔する前に!建築中に現場で施工精度や品質をチェックしよう[段取り#3]
アパート・マンション建築で、施工精度や品質の良い建物にすることも安定経営や入居者満足度を高めるポイントの1つです。着工から引渡しまでにオーナーができることは何かを紹介します。
着工後の変更や追加は、工期遅れや予算超過に注意
契約後、着工から引き渡しまでのプロセスは図1の通りです。役所検査というのは、所轄の役所や検査機関が建築確認の申請図面と照らし合わせてチェックする工程になります。
基礎配筋検査と中間検査は一定の規模以上の建物が対象。木造2階建てのアパートであれば完了検査のみです。いずれも法令通りに施工されているかどうかを見るのが基本で、欠陥や手抜きを調べるものではありません。
「建てられるプロセスを見ておきたい」と建築現場を訪れるオーナーもいるでしょう。その際に気を付けたいのが、設計図書ではわからなかった部分、イメージと実際の作り方にギャップがあった部分など、建築現場で職人に対してあれこれ口を出してしまうこと。わからないこと、確認したいことがある場合は、基本的には監理を担当する設計者や現場監督に聞くのが筋です。
また、その場で変更などを口頭で指示するのも禁物です。無料で対応してくれると思い込んでいたら、後で追加工事費を請求されたといった例も珍しくありません。
素人目には簡単に修正できると思ってオーナーが指示を出したら、構造にかかわる部分に影響するため建築確認の図面修正が必要になり、数週間も工事がストップしたというケースもあります。すでに部材や住設機器などを発注していた場合はキャンセル料もかかり、追加工事費が大きく膨らんでしまうこともあります。
アパート・マンション建築で工期が遅れると、入居者募集の活動に支障が出る可能性もあります。最悪の場合、住み替えシーズンの募集タイミングを逃してしまうと、なかなか満室にできないかもしれません。
追加費用の有無、工程への影響などを確認し、相手方とのやりとりを書面に残した上で、予算とタイムスケジュールの両方を意識しながら慎重に進めましょう。
オーナーも現場に足を運び、自ら工事内容をチェック
着工後に工期が遅れる原因は、オーナーからの変更依頼だけではありません。施工会社側の設計ミス、現場の職人による施工ミスも意外に多いものです。
著名なアパートビルダーが大量の施工不良問題を起こした事件も記憶に新しいでしょう。特にローコスト系のアパートの場合は施工精度に不安があると言われます。
賃貸住宅のオーナーは自分が住まないため、施工精度に関心がないオーナーも少なくありません。
しかし、オーナーが施工会社任せにして現場にまったく顔を出さないと、こうしたミスがごまかされてしまうおそれがあります。オーナー自身も建物の品質に関心を持ち、現場のチェックを怠らないことが大切です。
ハウスメーカーのプレハブ工法の場合は、詳細な情報がオープンになっていないため、専門家でも慣れていないと適切か否かを判断するのは難しいようです。
しかし、木造在来工法であれば少し勉強しただけでも、ある程度まではオーナーもチェックできます。正確なチェックはできなくても、オーナーが現場に行ってにらみを利かせているだけで、職人は緊張感をもって仕事をするものです。
最低限確認したいのは「基礎」「構造躯体(骨組み)」「断熱工事」の3点。いずれも建物が完成してから手直しするのが難しい部位です。図2に、その他の部位も含めてポイントを示しました。
基礎 | 鉄筋配置の間隔、かぶり厚。コンクリートの水セメント比 (生コンの品質管理)。 ジャンカ(豆板)、コールドジョイント、クラックの有無 |
構造躯体 (骨組み) |
柱と梁、筋交い、土台に強度に影響する掻き込みの有無。 継手(つなぎ目)部分の割れや損傷、金物の使い方や位置 |
断熱材 | 壁内の間柱の間に入れるグラスウールなどの断熱材の充填状態 (すき間の有無)。張り合わせ部分のシーリングの施工状態 |
床下通気・ 点検口 |
基礎と土台の間に入れる基礎パッキンの状態(1m以内の間隔で適切に配置)。床下点検口(シロアリ被害や配管等の状態を調べるために、床下に入って点検できる状態か) |
防腐・防蟻処理 | 地盤面から1mまでの土台や柱に木材腐朽菌や シロアリ被害防止の薬剤処理の状況 |
防水 | 屋根や外壁の雨漏りを防ぐ防水紙の状況、 サッシ・スリーブまわりの防水処理 |
小屋裏喚起 | 小屋裏換気口があるか。 外壁や軒下からの給気と排気の仕組みが取れているか |
チェックするタイミングとしては、おおむね次の段階です。
・基礎…基礎の配筋が終わり、コンクリートを打設する前
・構造躯体…上棟(式)の前後。壁や床の下地工事に入る前
・断熱工事…上棟後、外壁の下地材や防水シートを張る前
工事請負契約を結ぶときに契約関連図書と併せて工程表が提供されるはずです(添付されていない場合はリクエストしましょう)。その日程に沿って訪問するといいでしょう。
インスペクターに品質チェックを頼む方法も
プランづくりを、独立した設計事務所に依頼して、設計監理と施工会社を分離すれば、施工会社に設計施工で頼む場合よりもチェック機能が働くと一般に言われます。
ただ、現場経験の浅い建築家と施工会社が初めて組むケースでは、えてしてコミュニケーションがうまく行かず、トラブルを招いたり、職人の手抜きを誘発してしまったりすることもあるようです。必ずしも「設計施工分離」がベストとは限りません。
現場に慣れたプロにチェックしてほしいなら、インスペクター(検査員)に第三者検査を依頼する方法もあります。調査費用は数十万円単位でかかりますが、専門家の厳しい目で複数回にわたって調査してもらえる安心感はあるでしょう。
収益物件の投資家の中には、完成後の施主検査1回の立ち会いを依頼するケースもあります。その場合は、外側から目視できる範囲しかチェックできません。注文建築で建てる場合にインスペクターを依頼するタイミングとしては、着工前がベターです。
図1でも示したように、重要なのは基礎や骨組みなどの施工中の状況のため、完成後は表面から見えなくなるからです。問題が見つかっても、手直しが非常に難しくなります。
文/木村 元紀
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