価格交渉のコツも紹介!施工会社とのやり取りで気を付けたいポイント[会社選び#2]

賃貸アパートやマンションの建築にあたって、施工会社選びから着工するまでのプロセスで、担当者とどのように対応すればいいのでしょうか。営業スタッフや設計者とのやり取りのヒント、価格交渉のコツなどについて紹介します。

営業担当者の人柄より会社の信用度を

施工会社との最初の接点は、営業担当者です。大手ハウスメーカーなら若手営業マン、地場工務店では社長自らの営業かもしれません。ひと昔前は、会社を選ぶ決め手として、「誠実そうで人柄がいい」「熱心に話を聞いてくれる」など、営業担当者との相性を挙げるオーナーが多かったようです。

数千万円、場合によっては億単位になる契約ですから、信頼できる営業担当者に任せたいと思うのは人情です。しかし、重要なのは、営業担当者の人当たりの良さげな印象や“信頼感”ではなく、会社の経営状態に裏付けられた“信用度”です。

いくら人柄の良い営業担当者が付いていても、オーナーの目的や希望条件に合わない建物ができてしまったり、建築途中に会社が倒産してしまったりしては元も子もありません。

知名度のある大手企業だから安心というのも幻想です。大手ほど、営業担当者は部署の異動が普通にあります。「末長いお付き合い」という営業トークはよく聞きますが、竣工後もずっと同じ営業担当がフォローしてくれる会社のほうが珍しいでしょう。

むしろ、地場工務店のほうが、地域に根差した営業をしているため、経営基盤さえしっかりしていれば、長い付き合いをしてくれる可能性があります。

イメージや印象ではなく、客観的な数字を見てシビアに判断することが大切です。なかでも会社の経営状態は重要です。外からは見えにくいものですが、金融機関に融資の相談をしてみることで推測できます。金融機関は、融資を受ける本人の返済能力をチェックするのはもちろん、施工会社の与信審査もするからです。

「〇〇会社の施工で1億円のアパート建築を検討しているが、どのくらいの融資を受けられるか」と金融機関に打診してみましょう。施工会社の経営状態によって、融資額、融資期間、金利が変わってきます。

予算は7~8割、自己資金は5割の水準を伝える

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ときには施工会社との駆け引きも必要です。たとえば「こんな建物を建ててほしい」という希望条件を伝えると、早い段階で予算を確かめるのが営業のセオリーとも言えます。

これに対して、手の内をすべて正直にさらしてしまうのは禁物。施工会社のほうでは、予算いっぱいの建築費になるプランを提案してくるからです。

借入返済や賃貸経営のリスクを考慮して、施工会社のほうから控えめなプランを出して来るケースは少ないでしょう。土地の法的制限いっぱいの規模、設備仕様も予算内で最大限のグレードを提案するものです。

その後に具体的な設計を詰める中で金額は膨らみがちなため、初めから予算いっぱいのプランにしてしまうと最終的に予算オーバーになり、無理な借り入れを強いられるなど、資金計画にしわ寄せが生じるおそれがあります。

施工会社には、少し抑えた予算を伝えましょう。あまり低すぎる予算では、真剣に対応してくれないかもしれません。

総予算は自分で想定している金額7~8割の水準、自己資金については実際に動かせる上限の5割以内の金額を提示するのが無難と言われます。最終的に契約が確定する段階で、予算内に収まる水準を目指すべきです。

プランについては、たとえ自分が住まない賃貸住宅だとしても、設計事務所や施工会社にお任せではなく、どんな賃貸経営を目指すかを想定しながら希望条件を伝えましょう。土地活用の目的を踏まえて、希望条件に優先順位をつけて整理して示すのがベターです。

値引き交渉のテクニック

施工会社選びに当たって、提案された見積りの額面通りに契約するケースはまれでしょう。仮に予算内に収まっていたとしても、少しでも総事業費を抑えて利回りを高めることが安定した賃貸経営につながりますから、値引き交渉は欠かせません。

とはいえ、あまり無理な値引きを強いると、品質の低下、手抜きや欠陥を招くおそれがあります。企業努力による根拠のある値引きをいかに引き出すかがポイントです。

根拠のある値引きにも、種類があります。代表的なのが「出精(しゅっせい)値引き」と「VE(Value Engineering)提案」です。出精値引きは、建材や設備の仕入れ金額、職人の手間賃、仮設部材のリース代など、あらゆる項目の無駄を少しずつ省いてサービスすること。

「精一杯努力する」「勉強する」といった意味合いが込められています。いずれにしても、それほど大きな額は期待できません。せいせい数十万円から100万円程度まででしょう。

VE提案は、創意工夫によって機能や品質を落とさずにコストを下げること。たとえば、建材や住宅設備機器にコストの低い代替品の使用、過剰な仕上げグレードの見直し、作業効率化による工事期間の短縮などです。

この他に、仕事をとるために自社の利益を削った値引きもあります。必ずしも根拠はありません。あまり大幅な値引きは、逆に警戒しなければならないかもしれません。

1.5~2億円の賃貸マンションの見積もり、数千万円の値引き提示もあるようです。なかには契約を取ることを優先し、大幅値引きをした後に、契約金額に含まれない別途工事の項目を増やして追加費用を請求するといった例もありますから、注意が必要です。

こうした建築費の妥当性を判断するには、建築の知識を持つ専門家のアドバイスを受けることも必要でしょう。

文/木村 元紀

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