不動産コンサルタントや建築コンサルタントに依頼するメリットって何?[会社選び#7]
土地オーナーが有効活用や相続対策で悩んでいるとき、建築するか売却するか迷っているときなどに、的確なアドバイスをしてくれるのが不動産コンサルタントや建築コンサルタントです。依頼するメリットや選び方を紹介します。
特定の商品サービスを売らず、第三者の立場でサポートする不動産コンサルタント
コンサルタントといっても、どんなサポートをしてくれるのか、ピンと来ない人も多いようです。具体的にはどのような業務をしているのでしょうか。不動産コンサルタントを例に説明しましょう。
業界団体と学識経験者で構成された「不動産コンサルティング制度検討委員会」が1999年に定義した内容は下記の通りです。
「依頼者との契約に基づき、不動産に関する専門的な知識・技能を活用し、公正かつ客観的な立場から、不動産の利用、取得、処分、管理、事業経営及び投資等について、不動産の物件・市場等の調査・分析等をもとに、依頼者が最善の選択や意思決定を行えるように企画、調整し、提案する業務」
ポイントは、①専門的な知識・技能、②公正かつ客観的な立場、③依頼者に最善の選択や意志決定をしてもらうためのサポート、の3点です。
特に2番目の客観的な立場という部分が重要です。具体的には、
1.宅建業法上の不動産の売買・交換や売買等の代理・媒介業務から分離・独立
2.不動産開発業務や管理業務とは業務範囲が異なり、かつ、これらの業務の受託を前提としない固有の業務
不動産会社や建築会社でも「土地活用の無料相談」などと謳ったサービスを実施している例がありますが、どうしても自社の商品サービスを売るためのアドバイスになる面は否めません。
不動産コンサルタントは、特定の商品サービスの販売ではなく、あくまでも第三者的な立場から、オーナー目線で判断材料を提供、解決策を提案してくれるのが特徴です。
現在、この分野の公的な資格としては「公認不動産コンサルティングマスター」があります。
不動産取引に加えて、経済・金融、建築、税制など幅広い知識が問われる技能試験(国土交通大臣の登録事業)に合格し、5年以上の実務経験のある人が同マスターとして登録される仕組みです。
そもそも、この技能試験を受けられるのは、宅地建物取引士、不動産鑑定士、一級建築士のうち、いずれかの国家資格登録者に限られますから、門戸の狭いハイレベルな資格と言えます。
不動産関係で誰に相談していいかわからない場合は、この資格の有無が1つの判断材料になるでしょう。不動産流通推進センターや不動産コンサルティング中央協議会のホームページで同マスター登録者を検索できます。
建築コンサルタントなど、コンサルタントの名称は様々。資格のない実力派も
もっとも、公認不動産コンサルティングマスターの資格がないからといって、実力や信頼性が低いと決めつけるのは早計です。
施工会社の選定を中心にしている場合に「建築コンサルタント」(※)、不動産と建築を含めた土地活用全般を扱う場合に「資産コンサルタント」と名乗っていることもあります。
どちらも公的資格に基づいた名称ではありません。逆に言えば、資格があっても問題解決能力が高いとは限らないと言えます。
※類似の名称に「建設コンサルタント」がある。こちらは、エンジニアとして官公庁の公共事業や民間の大型開発事業などに関する土木建築サービス、技術的アドバイスを行う専門家で、国家資格の「技術士(建設部門)」を持つ人も多い。個人オーナーの土地活用向けのコンサルタントとは異なる。
経営形態としては、独立したコンサルティング会社を運営している場合もあれば、税理士や公認会計士、ファイナンシャルプランナー、設計士の事務所などに所属しているケースも多いようです。何らかの専門分野の資格を保有しているのが一般的でしょう。
対応する業務は、単体の土地への賃貸住宅や商業・業務施設の新築、既存物件の建て替え、資産の組み替え・買い換え、借地・底地の交換、複数土地の整理・統合、相続・事業承継など、非常に範囲が広く、定型業務はありません。
名称はともかくとして、不動産や建築系のコンサルタントに依頼するメリットは次の通りです。
メリット①複数の解決策・事業手法をゼロベースで提案
建築会社なら「賃貸物件を新築する/建て替える」、リフォーム会社なら「大規模修繕・リノベーションをする」、不動産会社なら「売却する・買い換える」のように、各社の事業、扱うサービスを前提にした提案しか示しません。
コンサルタントは、あらゆる可能性を探り、それぞれのメリット・デメリットを診断。オーナーの意志決定に役立つ判断材料を提供し、複数の選択肢の中から、土地の状況とオーナーの目的に合う解決策を見出してくれます。
建築ひとつとっても、賃貸住宅だけでなく、用途も様々。図1は、コンサルタントの診断をわかりやすくまとめた例です。
場合によっては、建築も売却もせず、「何もしないのがベスト」という答えが出ることもあります。そういう意味では、建築会社や不動産会社に接触する前に、ゼロから相談するのが賢明でしょう。
「漠然と所有している不動産を何とかしたい」「相続対策を含めて、次世代に資産をうまく残したい」といった希望があるオーナーに当てはまります。
メリット②建築会社の選定をサポート
仮に建築することに決まった場合、複数の建築会社の候補を選定し、適切な会社選びを支援してくれます。建築会社の技術力、経営状態、信用度など、一般には開示されていない情報を把握した上でピックアップ。各社の優秀な営業スタッフ、現場監督とのパイプを持つコンサルタントもいます。
さらに、複数社から相見積もりを取り、素人にはわかりにくい内訳明細のチェックなどをしてもらえます。建築会社の信用度は、金融機関の融資条件にも影響するだけに重要です。
建築費以外にコンサルタント費用はかかりますが、建築会社の見積りチェックや価格交渉でそれ以上のコストダウンができるケースが少なくありません。
すでに建築会社に接触した後に、セカンドオピニオン的にコンサルタントに相談するケースもあります。その場合も建築コストの削減効果が期待できます。
メリット③企画・プランづくりにプロの知見を活用
建築会社も一定の市場調査を基にプランを提案しますが、基本的には、ハウスメーカーなら自社の企画型商品、工務店でも施工経験のある“建てやすい”プランを推奨されます。
実力のあるコンサルタントなら、市場調査を踏まえつつ、時代の流れやトレンドを読み、ターゲットを見極め、長期的に競争力のあるプランづくりをアドバイスしてくれるでしょう。ただし、コンサルタントの企画力、洞察力次第とも言えます。
メリット④建築会社・不動産会社とのトラブルを調整
建築会社や不動産会社の対応に不満が出たときなど、オーナーが直接クレームをぶつけると、険悪な雰囲気を招き対立姿勢になりがちです。第三者のコンサルタントが間に立ち、双方の主張を和らげながら伝えることで、トラブルを回避できるケースも少なくありません。
企画段階に、オーナーの希望や気持ちを上手に翻訳して各会社に伝えるなど、スムーズなコミュニケーションを促す潤滑油の役割も果たしてくれるでしょう。
過去の実績と提案力、報酬体系をチェック
では、自分の悩んでいる問題に対する見識や造詣が深く、課題解決の実力があるコンサルタントをどう選べばいいのでしょうか。資格の有無は、あくまでも判断材料の1つです。
オーナーの目的とコンサルタントの得意分野が合致しているか、業界目線ではなくオーナーに寄り添って考えてくれるが最大のポイントといえます。このあたりは、実際に面談して相談する中で見極めるしかありません。
その上で過去の実績や、コンサルティングの流れ、サービス内容などを確認します。コンサルティング業務の流れは図2を参考にしてください。
これは調査から解決策の提案まで行う企画立案型の場合ですが、施工会社選定や融資手続き代行など追加の業務内容や、パートナーとして共同事業の協定書を結ぶ場合などによってステップは変わります。
最初に相談をする際に、コンサルタントがかかわった複数の事例、具体的な解決の道筋、提案内容、依頼者が取捨選択した理由などを聞いてみましょう。
問題に取り組む姿勢、企画力、見識・造詣の深さが推し量れます。なお、初回相談は無料が普通ですが、最初から相談料を請求するケースもあるようなので、事前に確認したほうが賢明です。
コンサルタントとの間では業務委託契約を結ぶケースが一般的。契約を結ぶ前に、実施する業務の範囲、費用・報酬額や支払い時期を確認しましょう。コンサルタントの料金体系についての標準的な規定はありません。次のようなパターンがあります。
月々定額の報酬制。最近のキーワードでいえば「サブスクリプション」
複数の土地を継続的に開発する、相続対策を段階的に進めるなど、長期に渡るケースなど。
成果物の総額の〇%。アパート・マンション建築に関わるケースでは総事業費の一定割合の設定です。「最低料金+成果報酬」という二段階のケースもあります。
土地活用系では、このパターンが多いかもしれません。割合は、業務範囲によっても異なります。
例えば、「ライフプラン→資金調達→基本計画→施工会社選定→プラン・見積もりチェック→請負契約立ち会い→着工後のインスペクション→施主検査立ち合い→引き渡し」まで対応して総事業費の3%。あるいは、「ライフプランから請負工事まで」で総事業費の1%という例がありました。
一般的な相場はありません。業務範囲と中身を確認しましょう。
コスト削減額の〇%。建築会社の見積りチェック、選定のアドバイスなどで、工事費削減額の10~30%などの設定があります。
支払い方法は、契約時の着手金、企画立案書提出時、業務完了時など、何段階かに分かれるパターンが多いようです。
ただし、着手金が100万円単位になるなど、あまり過大な場合は要注意。付加価値の低い提案書を出して終わりにするコンサルタントもいるようです。調査分析に要する費用としては数十万円くらいまでが常識的な範囲かもしれません。成果に応じて支払う仕組みなら安心できるでしょう。
文/木村 元紀
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