いざというときのリスクに備えて!引き渡し後の保証内容をチェックしよう[会社選び#3]

アパート・マンション建築に伴うリスクの1つが建物の品質性能です。引き渡しを受けた後に不具合が見つかったとき、施工会社はどんな対応をしてくれるのでしょうか。事前に確認しておきたい保証制度を紹介します。

基本構造部分は10年以上の長期保証が法的に義務付け

家電製品や設備機器を購入すると、1年間無償で修理してくれるメーカー保証がつくのが一般的です。住宅も保証付きという点では例外ではありません。

といっても、住宅はさまざまな部材や設備を組み合わせて建てられていますから、対象部位や保証期間がやや複雑になっています。

メーカーが保証するのは、新品で購入した際に本来備えているべき性能がなく、正常に作動しないとき。住宅にとって、本来備えているべき性能のうち一番大事なポイントは、雨風をしのぎ、安全に暮らせることでしょう。

そのため、新築住宅の基本構造部分については、10年間の無償修理を保証することが、2000年に制定された品質確保促進法(品確法)で義務付けられています。これは瑕疵担保責任(※)に基づく規定です。

※2020年4月施行の改正民法で「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に名称変更されました。品質確保促進法では、瑕疵の定義を契約不適合責任に合わせて定め、瑕疵の名称自体はそのまま使用しています。

基本構造部分というのは、以下の2つの部位です。

・構造耐力上主要な部分:基礎、土台、柱、梁、床版、壁、小屋組みなど
・雨漏り(雨水の侵入)防止に関わる部分:屋根・外壁の仕上げ・下地など

この特例は「新築住宅の10年保証制度(瑕疵担保期間の特例)」とも呼ばれ、保証期間を10年以内にするような施主や購入者に不利な特約は無効です。同法では、保証期間を延長する場合は20年以内まで可能とされています。

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ちなみに、法的に10年保証が義務付けられているのは住宅のみです。自己居住用か賃貸用かは問われませんが、店舗や事務所など住宅以外の用途には適用されません。ただし、住宅と店舗や事務所の構造が一体の併用住宅の場合は、10年保証の対象になります。

保証期間は長いほど安心?会社の倒産リスクは?

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大手のハウスメーカーなどでは、基本構造部分の保証期間を「初期保証」と位置づけ、任意で20~35年に拡大しているケースも増えてきました。

さらに、初期保証が終わった後に点検して有料メンテナンスを行うことを前提に、保証期間を60年まで延長するサービスも珍しくありません。

地場工務店などでは、品確法で定められた10年保証が一般的です。施工件数の多い有力工務店では、20年以上の長期保証を謳っているところも見られますが、ハウスメーカーに比べると期間が短い点は否めません。

そもそも経営基盤の弱い中小工務店が10年保証をするといっても、その間に経営が傾いて廃業や倒産してしまえば絵に描いた餅であるという懸念もありました。この点については、2007年に施行された「住宅瑕疵担保履行法」によって、保険金や保証金の供託などによってカバーする制度が導入されました。

少なくとも10年間については、保証が切れる心配はありません。保証機関によっては、同法に基づく保証を5~10年延長できるメニューも扱っています。

ところで、基本構造部分の保証期間は、必ずしも長ければ良いというわけではありません。ハウスメーカーが謳っている「最長60年保証」というのは、初期保証の20~30年を過ぎた後の延長保証を受けるためには、自社または系列会社による点検を受け、その診断内容に応じて指定された補修を有料で行う必要があります。賃貸住宅の場合、自社系列の管理会社とのサブリース契約が前提となっているケースも多いようです。

しかも、第三者によるインスペクション(建物検査)や複数のリフォーム会社への相見積もりができないため、言われるがままに割高な工事をしなければいけない可能性もあります。

いわば60年に及ぶハウスメーカーによる囲い込み戦略といえるでしょう。大企業といえども倒産する時代ですから、半世紀先まで確実に保証されるかどうかは“保証”されません。

内装仕上げや設備機器の保証は1~2年

基本構造部分を除く部分については、施工会社ごとにアフターサービス規準などで保証期間を定めています。

建物の内装仕上げや下地部分の施工不良については概ね2年間、住宅設備機器については、施工不良が2年、作動不良がメーカー保証と同じ1年といった例が多いようです。設備機器に関しては、一定のワランティ(保証料)を支払うことによって5~10年延長できるサービスもあります。

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※設備以外は、各部の変形、破損、亀裂、水漏れなどが対象

この他、アフターサービスの一環として、引き渡し後3カ月程度と、1~2年までは定期点検を実施しているケースが一般的です。部位ごとの保証期間、対象となる症状、点検のタイミングなどの詳細について、引き渡しの際にアフターサービス保証書を確認しておきましょう。

なお、基礎構造部分も含めて保証対象になるのは、建物を引き渡すまでの施工不良、施工ミス、欠陥などにより不具合が出た場合に限られます。

引き渡し後に起きた大地震、台風、洪水、落雷などの自然災害、火事・爆発などの事故による不具合は対象になりません。これらの事象が起きた場合は、オーナーが加入する火災保険や地震保険、入居者が加入する住宅総合保険などの損害保険で対応することになります。

文/木村 元紀

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