ハウスメーカーと何が違う?建築家と建てるメリット、選び方・進め方を解説[会社選び#6]
ありきたりのアパートやマンションではなく、外観デザインや間取りに特徴のあるプランにしたいなら、建築家に設計を依頼するのがおすすめです。建築家の探し方、依頼の流れ、費用などを紹介します。
建築家に依頼する6つのメリット
「とにかく安く建てて、高く貸せればいい」ならローコストのアパート・ビルダー、「プランよりも施工会社のブランドが大事」ならハウスメーカーに依頼するのが無難かもしれません。
ただ、どちらも、外観や間取り、設備仕様の規格が決まっていて、全国どこでも同じデザインです。ありきたりのプランでは満足できない場合は、一度、建築家に相談してみてもいいでしょう。
建築家に依頼するメリットとしては、次のような点が挙げられます。
- 特定の構造工法、材料にとらわれず、完全に自由設計で建てられる
- オーナーの好みや地域性に合わせたデザインを採用できる
- デザイナーズ物件として競合物件と差別化し、競争力を高められる
- 企画型では難しい変形地、傾斜地、狭小地などでも建築できる
- 見積もりを精査して余計なコストを削り、工事費を抑えられる可能性がある
- 工事監理を併せて依頼するのが一般的なので、施工精度もチェックできる
もちろん、建築家の得意分野、設計思想、実績などによって、必ずしも当てはまらない部分もあるかもしれません。しかし、たくさんの建築家から自分の目的や好みに合う相手を見つければいいわけです。
建築家と出逢える方法も増加
「建築家」といっても明確な定義はないようです。資格を持っている一級建築士は全国で37万人以上もいますが、ゼネコンや建築会社、不動産開発会社、大手設計事務所などに所属している場合がほとんど。
こうした企業に属さず、個人住宅や小規模な賃貸住宅の設計を手掛けてくれるのは、一人または小規模な独立系の設計事務所が多いでしょう。それでも全国に6000件くらいあると言われています。
では、数ある選択肢の中から、自分に合った建築家を見つけるにはどうすればいいのでしょうか。
ひと昔前なら、建築雑誌や作品集などを読みこなし、作品や考え方に共鳴する建築家を丹念に探すしかありませんでした。「建築家に依頼するのはハードルが高い」という印象が強いのは、そのせいもあるでしょう。
しかし最近では、以前に比べて建築家と出会う方法は大幅に広がっています。
〇建築家・設計事務所のホームページを閲覧する
〇セミナー・無料相談会・作品展などのイベントに参加する
〇完成見学会・オープンハウスなど、施工事例を見学する
〇複数の建築家から希望に合った候補を紹介、コーディネートするサービスを利用する
いずれも、インターネットの各種サイト、SNS、ブログなどで告知、募集されていますので、気軽にアクセスしてチェックできます。まずは、建築家と直に会えるイベントに参加して、話をしてみるのがいいでしょう。
建築家に設計を依頼するときのステップ
建築家に依頼する場合の一般的な流れを、準備段階から説明しましょう。
やみくもに建築家を訪ねても、なかなか具体的な話に進みません。まず、前述した手段で情報収集をしながら、自分なりの希望条件を整理しましょう。
所有している土地の条件から、だいたいの建築規模や時期、予算を想定して、資金調達に当たりをつけるなど、自分なりの事業収支計画を立てておくことが大切です。
その上で、何人かの建築家と面談してみましょう。通常、初回面談は無料です。設計には何カ月もの時間がかかり、何度も打ち合わせを重ねなければなりませんから、相性を見ることも大切。予算や希望条件を伝えながら設計に関する考え方などを聞き、事業計画が実現できるかどうかを吟味します。
次のステップとして具体的なプランに進む場合、簡単なラフ案程度なら無料で作ってもらえるケースもあれば、「プレゼン料」として数十万円がかかるケースもあるようです。
最初に出されるプランも建築家によってまちまち。A3用紙数枚の簡単なスケッチだけということもあれば、数十枚の提案シートに模型までついてくることもあるようです。面談の際に費用の有無を確認してから打診するようにしましょう。
設計を依頼する建築家を決めてからのステップを、図1にまとめました。まず設計監理業務委託契約を結びます。最初に作成されるのは基本設計です。建築家と施主との間で建物のイメージを共有するためのもので、建築概要や設備仕様のグレードとともに、大まかな工事費も提示されます。
基本設計に合意できたら、施工会社を選定するために、より詳しい図面を作る実施設計に入ります。各種図面に加えて、使用する材料の品質や数量、施工方法を明示した共通仕様書、内部・外部仕上げ表なども含まれ、これを基に施工会社に見積もりを依頼するわけです。建築家は、見積もり書のチェックも行ってくれることが一般的です。
基本設計と実施設計が仕上がるまでに、それぞれ2~3カ月かかることも珍しくありません。施工会社を選定して工事請負契約を結び、建築確認申請を経て着工までに、さらに数カ月かかりますから、最初に面談してから1年近く見ておいたほうが良いでしょう。
建築家への支払いのタイミングと費用の内訳
施工会社に対する建築費の支払いは、契約時に総額の1割、着工時に2~3割、上棟時に2~3割、竣工時に残金といった具体に、数回に分けて支払うのが一般的です。
融資の実行は、本来、建物が完成して引渡しを受けた後ですが、金融機関によっては工事請負契約の前に相談して内諾を受けることによって、つなぎ融資という形で「分割実行」をしてくれるケースもあります。
建築家に対する支払いも分割して支払うのが普通です。設計監理委託契約の際に、総額の1~2割、あるいは30万円なり50万円なりを支払い、その後も3~4回に分けて支払う形になっています。
図2に、いくつかの例を示しました。設計監理料についても融資の対象に含めることはできますが、本見積もりが決定するまでは金融機関からの融資承認も出ないようですから、着手金や設計料の支払いは融資に先行します。ある程度の自己資金は用意しておく必要があるといえるでしょう。
建築家に頼むと、工事費の他に設計監理料がかかるため、費用が高くつくと思いがちですが、必ずしも総事業費が膨らむとは限りません。
ハウスメーカーでは「設計料無料」と謳っているケースもあります。しかし、実際には工事費に設計料が含まれているだけで、設計の費用がかからないわけではありません。
建築家の場合、施工会社の出した見積もりを精査して、無駄なコストを削ったり、同一グレードの低価格の材料や設備に入れ替えを指示したりしてくれます。
最終的に、設計監理料込みの総事業費を、ハウスメーカーに設計施工で依頼するより低く抑えられるケースも少なくないのです。先入観を持たずに、建築家に相談してみると良いでしょう。
取材・監修/アーキテクツ・スタジオ・ジャパン 文/木村 元紀
アーキテクツ・スタジオ・ジャパンとは
2007年創業。建築家のネットワークを組織し、全国の施主の要望に対応している。安藤忠雄氏や磯崎新氏らの応援もあり、現在では全国の建築家の約4 割に相当する2,955名の建築家が登録。世界的に権威のあるイタリアの建築専門誌「CASABELLA(カザベラ)」日本語版の発行を手掛けるなど、日本の建築文化の向上にも努める。2013年、東証マザーズ上場。
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