自己建築?事業受託?自分に合った土地の活用方法は?5つの選択肢[会社選び#1]
一口に土地活用といっても、事業手法は様々です。目的に合っているか、土地建物の権利関係はどうか、自己資金や借入金があるかないかなどの違いがあります。代表的な5つの方法について解説しましょう。
土地活用の目的と経営スタイルで選ぶ事業方式
土地活用を始める場合、図1のような方法があります。それぞれについて詳しく解説します。
【自己建築方式】オーナー自ら賃貸運営、各事業者へ業務を発注
土地オーナー自身が陣頭指揮を執って進める方式です。アパート経営などの企画を立て、資金調達のために金融機関と交渉し、設計事務所や工務店・建設会社に設計や施工を依頼します。
建物の引き渡しを受けてからは、入居者募集、集金、クレーム対応、清掃・メンテナンスなどの賃貸運営業務を不動産会社や管理会社へ委託するのが一般的ですが、あくまでも経営の主体、意思決定はオーナーです。なかにはオーナーが自主管理し、物件ホームページを作って自ら入居者募集をするケースもあります。
実際には、すべての工程をオーナーだけで行うケースは少ないでしょう。オーナーが主導権を持ちながら、各分野のパートナーと連携しながら進めていく次の事業受託方式との混合型が多いと思われます。
・オーナーの希望に合ったプランで活用できる。
・相続税、固定資産税、所得税、幅広い税金対策に有効。
・業務委託費などの余計な経費がかからず、収益性が高い。
・事業資金の多くを借り入れで賄う場合は返済リスクが大きい。
・経営リスクをすべて自分で負う。
⇒リスクについて詳しくは*(15にリンク)
・賃貸経営の手間と時間がかかる(自主管理の場合)
【事業受託方式】所有と経営を分離し、運営はプロに任せる
デベロッパーやハウスメーカーなどが、賃貸事業の企画、建設工事、入居者募集、管理運営などの業務を受託する方式です。
土地オーナーは、金融機関から建設資金を借りて建物の所有権を持つので、事業リスクは負いますが、管理運営上の手間は一切かかりません。オーナー側から見れば「事業“委託”方式」ですが、なぜか事業者側から見た呼び方になっています。
委託内容によって次の3パターンに分かれます。
①総合受託型
デベロッパーが建物を一借り上げして家賃保証をするサブリース(転貸)をセットにして、賃貸経営に関わるすべての業務をトータルに任せる完全パック。
もともとは不動産開発会社であるデベロッパーが、自社では用地取得のコストとリスクを負わずに、土地オーナーを事業パートナーとして共同事業を行うシステムでした。最近は減っています。
②企画型
コンサルタントが、オーナーの資産状況や家族構成、目的や希望のヒアリングを踏まえて、基本計画の立案から施工会社の選定まで行う方式。工事中の施工会社との調整、完成後のフォローまで行う場合もあります。
③建設型
ハウスメーカーや建設会社が企画から建設までを行う方式。ハウスメーカーは系列の不動産管理会社による「一括借り上げシステム(サブリース)」を提案するのが一般的です。現在は2と3の部分受託が主流になっています。
・賃貸事業の知識は不要。管理運営の手間もかからない
・サブリースの場合は、一定期間の家賃が保証され、空室リスクがない
・相続税、固定資産税対策に有効。
・総合受託の場合の事業委託費、建物完成までのコンサルティング料(ハウスメーカーが受託する場合、これらの費用は不要)、サブリースの保証料などがかかり、自己建築より収益は減る
・管理会社まかせになり、オーナーが事業をコントロールしにくい
・初期費用がかかり、返済リスクも負う
【等価交換方式】初期費用・借入金ゼロ、低リスクで土地活用
オーナーが所有している土地を提供し、そこにデベロッパーが分譲マンションなどを建て、出資した土地の価値に見合う区分所有住戸を取得する方式。
同じ価値の土地と建物を入れ替える形になるため「等価交換」と呼びます。オーナーの借り入れは不要ですが、土地の一部を手放さなければなりません。手元に残る土地は完全所有権ではなく共有持ち分になる点にも注意しましょう。
オーナーが土地を譲渡する形になるため、本来なら譲渡税が発生しますが、「立体買換えの特例」を使うことで「課税の繰り延べ」(次に売却する際に課税)が適用されます。
ただし、マンションの取得価額は、元の土地の取得費を引き継ぐため、賃貸経営にあたっては減価償却費が計上できません。借入不要な反面、ローン金利という必要経費もないため、所得税は増えるのが一般的です。
なお、マンションの取得日は、実際に区分所有建物を取得した日になりますから、5年以内に売却すると短期譲渡所得となり、税率が高くなります。
・初期費用不要、借り入れリスクもなし
・譲渡税、固定資産税、相続税の節税になる
・複数の区分所有住戸を得るため、遺産分割や売却はしやすくなる
・土地の一部を手放し、残りの土地は共有持ち分になるため、土地単独での処分はできなくなる
・立体買換えの特例を使う場合、所得税節税の効果は薄い
・取得したマンションを5年以内に売却すると譲渡税が高くなる
【リースバック方式】少ない資金で事業用の土地活用
土地オーナーがテナント(出店希望者)から提供してもらった資金で店舗などを建築し、長期契約で貸す方式です。
テナントが出した建設協力金は、賃貸借契約後に保証金に転換され、オーナーが賃料の一部と相殺する形で返済する仕組み。「建設協力金方式」ともいいます。初期投資をほとんどせず、借入金ゼロで自己所有の事業用建物を持てます。同方式に詳しいコンサルタントが介在するのが一般的です。
テナントは、コンビニや物販店などのロードサイド型店舗が多く、10~20年の長期契約になるため安定的な収益を期待できます。
ただし、テナントが契約途中で撤退してしまった場合、同じ業態以外の新規テナントを探すのが難しいため、大規模改修や再投資が必要になるかもしれません。
・自己資金ゼロ、または少額の投資で始められ、借入金も不要
・短期入れ替わりや空室リスクがなく、長期契約で収支が安定
・管理事務の負担がほとんどない
・建物プランにテナントの意向が反映されるため、契約期間満了後の新規募集が難しい。
・途中解約リスクは大きい
・賃料の一部と相殺される「建設協力金」返済分にも課税される
【定期借地権方式】初期投資・経営リスクなしで、安定した土地活用
借地契約の期間満了時に更新がなく、確実に返還される定期借地契約を利用して、安定的に地代収入を得る方式。
保証金や権利金などのまとまった資金の確保も可能です。存続期間50年以上で用途制限のない一般定期借地権、同10年以上50年未満で事業目的に限る事業用定期借地権、30年以上の建物譲渡特約付き借地権の3タイプがあります。
一般定期借地権は、デベロッパーによる分譲マンション、ハウスメーカーによる建売住宅などの“テイシャク住宅”に活用されるケースが一般的です。
事業用定期借地権は、契約期間20年以下で簡易型の建物を活用するロードサイド型店舗に利用されるケース、30~50年の長期契約で大型ショッピングモールなどの大規模な活用例などがあります。
なお、初期に設定される一時金は、将来返還する保証金と返還不要の権利金、期間に応じて収入計上できる「前受地代」の3タイプがあります
・初期費用ゼロ、事業経営リスクなしで土地活用できる
・安定収入と、まとまった一時金を得られる
・相続税評価額圧縮ができ、住宅系活用で固定資産税も軽減
・他の活用方法に比べて収益性は低い
・途中解約は原則不可、長期間に渡って土地利用が制限される
・売却、遺産分割対策は難しい
文/木村 元紀
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