大規模修繕のタイミングでリニューアルしたい!設備の交換周期、費用の目安を解説[基礎知識#9]

室内設備のメンテナンスは、故障時の個別対応や原状回復でリフォームするケースが一般的です。ただ、複数の部屋で一斉に設備が故障して、補修や交換が必要になると一度に負担する費用が大きくなり大変なことに。室内設備も大規模修繕と同じように、計画的に行うことが大切です。そこで、設備の定期的なメンテナンスの考え方と、交換周期、費用を紹介します。

設備の定期メンテナンスは出費を分散して抑える

賃貸マンションやアパートの設備メンテナンスは、入居者から設備故障のクレームが入った時に応急処置として修理したり、入居者が退去した時の原状回復リフォームのタイミングで旧式化した設備を交換したり、ランダムに対応しているケースがほとんどでしょう。

ちょうど良く分散して故障の修理や交換が発生してくれれば良いですが、エアコンや給湯器が同じ時期に立て続けに壊れたりすることもあります。

実は、設備にも寿命があり、一定の年数がたつと機能が衰えて故障しやすくなるのです。室内設備を日常的に使用している入居者は、設備の調子がどうもおかしい、という時点で大家や管理会社へ連絡する人は多くはありません。故障して使用できなくなってから連絡してくる入居者がほとんどでしょう。

さらに、夏場にエアコンが故障して冷房が効かなくなったり、冬場に給湯器が壊れてお湯が出なくなったりすると大変です。

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修理するまでに何日もかかり、その間に、猛暑で具合が悪くなってしまった治療費やお風呂に入れない代わりに行った銭湯代を請求されたり、あげくに設備不良の家には住みたくないと退去されたりするおそれがあります。

室内設備にも、大規模修繕の外壁塗り替えや防水と同じように一定のメンテナンスの周期があるのです。そのため国土交通省の『民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック』でも、長期修繕計画の中に設備の定期メンテナンスの項目が盛り込まれています。

定期メンテナンスには、設備の動作がおかしくないか、部品が損傷していないかなどを調べて、注油やグリースアップ、消耗品を交換する「保守点検」、機能や性能を実用上問題ないレベルまで回復する「修理」、新しい設備に入れ替える「交換(更新)」の3要素が含まれます。普段から保守点検を怠らず、完全に故障する前に症状が軽いうちに適切に修理していれば、更新時期を遅らせることが可能です。

また、設備の定期メンテナンスを行うことで出費を分散できます。予想外のタイミングで多額の費用がかかって、戸惑うこともありません。しかも「壊れたら直す」よりも、トータルの費用が少なくなります。

故障したときに慌てて修理を頼むと業者の言い値で依頼せざるをえませんが、まとめて何台分かの点検・修理を頼めば、複数の事業者から見積りをとって費用の比較検討をする余裕もできるからです。結果として、原状回復リフォームの出費も抑えられます。

15~25年目に費用が拡大!計画的な積み立てが必要

設備の種類ごとに、何年くらいの周期でどのような対応が必要になり、いくらかかるのかが気になるでしょう。部屋の広さや間取りによって設備の機能やサイズが異なるため、図1に「アパートの1Kタイプ」を例に周期と金額を示しました。

図1:主な住宅設備メンテナンスの周期と費用の目安
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出典:(公財)日本賃貸住宅管理協会『賃貸住宅版 長期修繕計画案作成マニュアル(改訂版)』(2014年)から一部抜粋(元は30年間のデータ。法定耐用年数(木造22年、軽量鉄骨27年)に合わせて25年間まで抽出)

25年間のトータルで1戸当たり90万円弱です。最初の5~10年は修理のみ、次の11~15年になると、設備によって交換が必要になります。さらに21~25年に金額が拡大するのは、交換対象の設備が増えるからです。

2LDKタイプのマンションの場合は、同様の試算をして30年トータルで約150万円になります。ここに出した金額は、いずれも10年近く前の試算のため、その後の物価上昇を織り込んだ水準を想定して捉えてください。

金額が大きくなる時期は、建物本体の大規模修繕の時期とも重なってくる可能性が高くなるため、まとまった資金の準備が必要です。そのため、定期メンテナンスを適切に実施していくためには、計画的に費用を積み立てることが望ましいでしょう。

新築してから4~5年までは、ほとんど故障も起きないため、まったく資金の準備をしない大家さんも少なくありません。しかし、初期の頃にこそ、しっかりと原資を作っておけば後になって楽になります。

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外壁修繕などの大規模修繕を含めた修繕積立金の目安は、木造アパートの1K~1DKタイプで1室1ヶ月当り5,000円くらい。床面積1平方メートル当たり200円前後が目安です。賃貸マンションの場合は共用設備が増えるため、プラスアルファの金額になります。

一棟タイプの賃貸マンションやアパートで単独オーナーが経営している場合、修繕積立金は経費にできず、税引き後利益からの貯金の扱いになります。そのため、積み立ては気が進まない大家さんもいるかもしれません。

その場合は、設備機器リースを活用して、メンテナンス込みのリース料を全額経費にする方法もあります。初期投資も必要ありません。更新時期に検討してみるといいでしょう。

入居者との対話がシグナル。満足度アップを目指す

図1で紹介した設備のメンテナンス周期は、5年単位で示してあるため、かなり幅があります。入居者の使い方、管理の仕方次第で同じ設備でも状況は変わってくるでしょう。適切なタイミングをどのようにつかめばいいのでしょうか。

建物の外回りや共用施設については、委託管理をしているなら、管理会社による目視点検の対象になるため、定期的にチェックして不具合が出ていないかを早期に発見できます。しかし、室内設備については、こうした日常的な点検はできません。不具合の状況をつかむ手段は、入居者とのコミュニケーションです。

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管理会社によっては、1年に1度、エアコンを使い始める夏場の前や、水温が下がって給湯器の故障が発覚しやすい冬場の前、あるいは契約の更新時などに入居者にアンケートを実施しています。

『設備は問題なく動作していますか。使い勝手の悪いところはありませんか』といった質問をして、状況を確認するわけです。大きめの台風や地震の後などに確認するケースもあります。

自主管理の場合は、大家さん自身がアンケートを実施してもいいですし、近くに住んでいて入居者と接点があるなら、挨拶のついでに気軽に聞いてみるのもいいでしょう。

「そういえば、エアコンの効きが悪い」「お湯の温度が上がりにくい」といった故障の兆候を引き出せるかもしれません。複数の入居者から同じ反応があったり、似たような不具合の症状が寄せられたりしたら、一斉交換のタイミングと言えます。

なかにはアンケートの回答が面倒だと感じる入居者もいるかもしれませんが、「オーナーが気遣ってくれいる」と好意的に受け止めてくれて、評価や印象を高められる可能性もあります。

入居者満足度の向上や退去防止にもつながるわけです。定期メンテナンスは出費を避けたい後ろ向きの対策ではなく、空室を防止して安定経営をもたらす積極的な戦略になると考えましょう。

文/木村 元紀
※この記事内の情報は2022年9月30日時点のものです

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